第4話 夢だったダンジョン攻略
◇
「よく来てくれた。歓迎するよ、フィアナ・オルベール公爵令嬢」
そう言いながら、馬車から降りる私の手を取ってくださったのはルーデガルド辺境伯です。
肩にかかる輝かしい銀髪がとてもよくお似合いの、背の高い方です。服の上からでも引き締まった体をされているのがわかります。
その手がとても暖かかったのが印象的でしたわ。
「ありがとうございます、ルーデガルド辺境伯閣下」
私は出迎えのお礼を伝えながら辺境伯の紫の澄んだ瞳から目が離せなくなりました。
なんて美しいのでしょうか……。
私はこう見えて……どう見えていますでしょうか?お人形のような公爵令嬢でしょうか?
王宮ではゆるやかに波打つブロンドの長髪を褒められることがありましたし、肌にも髪にも気を使ってきましたので、そこそこ美人な方だとは思います。決して絶世の美人というわけではないですが。
ただ、この目の前の凛々しい方に気に入っていただけたらいいのですが、と考えていた自分を殴り倒してきたいですわ。
「早速だが、ダンジョンに行ってみないか?」
「なっ……!?辺境伯!まだ到着されたばかりですぞ???」
本人の言う通り早速のお誘いに私の心は興味で満たされました。
「ありがとうございます。ぜひ行ってみたいですわ」
心配してくださった方……侍従の方でしょうか?……にお礼を言いつつ、辺境伯には迷うことなく答えました。
「いいな。見込んだだけのことはある」
「よろしくお願いしますわ」
私たち2人はダンジョンに潜りました……このあと2日間ぶっ通しです。
「さすがだな、素晴らしい流れるような魔法行使だ」
辺境伯が褒めてくれます。そう言えば王宮で王妃教育を受けているときは誰からも褒めてもらうようなことはありませんでしたね。
私は攻撃魔法も回復魔法も支援魔法も使える、学院最強の魔法使いですから。
「辺境伯も、相当お強いですね。頼もしいです」
「ありがとう。これでも戦い慣れているつもりだからな。ここが見つかってから毎日入っているし」
辺境伯はまるで子供の様に笑いながらとんでもないことを仰います。あのう……政務はどなたがされているのでしょうか?
「あぁ、家のことは心配ないぞ?もともと辺境伯領は他国や魔族の多い森と接しているから、戦いと政務を分けているんだ。辺境伯という地位自体は戦いを担うものが継ぐことも家の決まりだ」
私の懸念にすぐ答えてくれました。きっと頭が良い方なのでしょうね。それに昔からそうなのであれば、ポッと出の私などから言うことはありません。
「そうなのですね。では、安心ですね」
「あぁ。辺境伯と政務担当とは魔法契約を結ぶから裏切りもないしな」
「そこまでとは……すみません、甘く見ていたようです」
魔法契約はその名の通りお互いの魔力を交わして結ばれる契約であり、裏切ったものは死ぬ。よっぽどのことがない限り結んだ話は聞いたことがなかったが、それがここでは普通に使われているらしい。しかし、それならば安全ですね。
私たちはそれからあと2日に渡ってダンジョンの攻略を続け、帰還ポイントを見つけてようやく戻りました。
そして当然侍従の方に怒られました。主に辺境伯が。
ダンジョンはたいてい階層型になっていて、下へ下へ潜っていくのですが、その途中に帰還ポイントが設置されています。これにより、日を分けて攻略していくことができるのです。便利な仕組みですね。
この世界に出現するダンジョンを誰が作っているのかはわかりません。神様だと言われていますが……。
私とルーデガルド辺境伯は最初から連携して攻撃や防御ができました。とても相性の良い戦い方だったのです。
辺境伯には学院の武闘会を見ていたから当然戦い方は知っているし、だから呼んだのだって言われました。
学院でもっと魔法を極めたかったのに政略結婚のせいで王妃教育に時間を採られてしまい悔しい思いを全てぶつけた武闘会でしたが、見て頂いて、さらに評価も貰えていたと聞いて嬉しくなります。
私たちはその後もほぼ毎日攻略をし続けました。
ルーデガルド辺境伯領のダンジョンの敵はとても多彩かつ強く、階層も深かったため、私たちはどんどんレベルアップしていきました。
あぁ、なんて気持ちいい日々♪
素敵な気の合う方と心行くまで夢だったダンジョン攻略ができるなんて。
「あっさりと馴染んでいるな、フィアナ」
そんな日々の中で、ふと辺境伯が呟きました。
「ありがとうございます、クラウス様。お陰様で王宮のことなど忘れて日々楽しく過ごしておりますわ」
繰り返すダンジョン攻略の日々の中で私たちはお互いの名前を呼ぶ仲になっております。
私たちは連携も深め、どんどん奥深くへと潜っています。
レベルも上がっています。
もともと私は古代魔法を研究しておりまして、あと少しレベルが上がればなんと魔法の反射が実現できそうです。
大抵の魔物は自分の得意属性の魔法を使いますが、その反対属性は弱点なのです。
完成すれば魔物相手に無双する私をご覧に入れましょう。
その時が今から楽しみですわ♪
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