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第3話 もう喧嘩ですか?ちゃんと結婚までは行ってもらわないと困るのですが?

「お父様、ありがとうございます。私は王子との婚約も破棄され、将来王妃になることもなくなったので、夢だった冒険者になってダンジョン攻略に励みますわ!」

「なっ、なにを言うのだ」

「そうですよ。冒険者になるのはダメです!」

私は夢いっぱいで答えたのですが、さすがに認めてもらえませんでした。

しれっと言えば勢いで認めてもらえると思ったのですが。


 

「婚約を破棄されたお前に今こんなことを言うのはすまないが、ルーデガルド辺境伯からの誘いなのだ。お前の学院での成績や評価は知っていて声をかけてきている。もしお前に異論がなければまずはルーデガルドに来てもらって、お互い納得できれば結婚したいという腹積もりだろう。辺境伯は独身だ」

「わかりました。ルーデガルド辺境伯はライメルトのダンジョンで名をはせた強力な戦士と伺っておりますので、見合うように頑張りますわ」

ゲームのエンディングで映し出された姿を見る限り、なかなか凛々しい方です。少し年上だと思います。


もちろん性格はわかりませんが、この状況で実利を確保しに来られているので貴族としてしっかりされた方だとは思います。少なくとも王子よりは。


なので、申し訳なさそうに話しているお父様や、私を不憫に思ってくれているお母様には申し訳ありませんが、私はルンルン気分で行ってまいりますわ。




一方、ヴィクトール王子様の執務室にて……

 

「ヴィクトール様、次の夜会に着るドレスですが……どちらがお好みでしょうか♡」

夜中に今までサボりまくってきた役務に追われる王子様に対して、そんなことは全く考慮しない美しい聖女レオノーラ様が話しかけています。


「レオノーラ、少し後にしてくれ。僕は今忙しい」

今まで使ってこなかった頭を酷使している王子様にはそんな聖女様に応対する余裕がありません。


「まぁ、ヴィクトール様。夜会はもう明日ですのよ。今日のうちに選んでいただかなくては……」

しかし自分勝手な聖女様は諦めません。


「そんなもの、その白い方でいいだろう。キミは聖女なのだからな。うっすらと青も入っていて美しいではないか」

面倒だという表情を崩さずに王子様は答えますが、

「ヴィクトール様。私に愛を誓って下さったのではないのですか?手に入れればそれで用済みなのですか?」

当然、聖女様は気に入りません。不満顔で言い募ります。


「そういうことではない。見てわかるだろう。私は今日中にこの書類仕事を終わらせなければならないんだ!」

でも、生まれて初めて仕事に追われている王子様も引きません。彼だって負けず劣らず自分勝手なのですから。

 

「そんなもの、誰かに命令してやらせればいいではありませんか。今までそんなことは一切されていなかったのに、なぜ急に?私のことを遠ざけるためですか?」

もう完全にただの口論です。相当に程度の低いお話ですが……。


ちなみに、聖女様には王子様がこんなに仕事に追われている理由が全く思い当らないようです。可愛らしい頬を膨らませて、目にうっすらと涙を浮かべて怒っています……彼女には本気で理解できないようなのです。


「なぜかだって?それは僕たちがフィアナを追い出したからじゃないか。今までは彼女が代わりにやってくれていたが、婚約破棄したのだから当然お前がやるべきだと父上から詰められているんだぞ?」

聖女様の様子に王子様も苛立ちを隠さず強い口調です。


「まぁ、ヴィクトール様。それならレオノーラを呼びつけてやらせればいいじゃありませんか。なぜご自身でされる必要があるのですか?国王陛下に誰がやったかなんて言う必要はないでしょうに?」

「なんだと?」

王族としてどころか、貴族としての教育を受けていない聖女様には不思議でしょうがないようです。


なぜ国の中でも国王を除いて一番偉い王子様が自分で仕事をするのかが。そして、婚約破棄なんか気にせずあのぬくぬくと育った異母妹に命じてやらせればいいではないかという自分勝手な意見を隠しません。


「レオノーラ。さすがにそれはできない。王族が処理すべきものは王族がやらなければならないんだ」

けれども、いかに傲慢で自由奔放な王子様でもさすがにそんなことはできないようです。


「そんなことを言って、私を遠ざけたいのですね?もう知りませんわ!」

「いたっ……おい、レオノーラ!」

なんと、怒れる聖女様は王子様の頬に張り手をお見舞いして去って行きました。


まさかの事態に警備兵たちは固まっています。

当然ですね。

守るべき王子様が守るべき聖女様に攻撃されたのですから。


そして、彼らはこう感じたのだと思われます。

この女性は本当に貴族の血を引く娘なのか?"聖女"というのは神殿に選ばれるため身分は関係ないから仕方がないのかもしれないが、ここまで教養も理解もない自分勝手な女が王妃になってしまうのか、と……。

聖女さまの父親とされているお父様に、彼らは一部始終を報告くださったので、私も様子を伺うことができました。


お父様は遠い目をされていましたが、私もおそらく違う理由で遠い目をしていました。 

この2人にはもう少し頑張って、ちゃんと結婚までは行ってもらわないと困るのですが?

読んでいただいてありがとうございます!

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