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第1話 茶番劇な婚約破棄

「僕はフィアナ・オルベール公爵令嬢との婚約を破棄し、新たに聖女となったレオノーラ・クライフェルト殿と婚約させていただく!」


これまで民のことなど一瞬でも考えたことがあるのですか、と疑問しか感じないヴィクトール王子が聖女様の就任式の最中にこんなことを言いだしました。


神殿長に名を呼ばれ、神殿の中央で優雅な礼をした聖女レオノーラ様の見た目の美しさにやられたのでしょうか?


この突然の王子の宣言に、参列していた国王陛下や、私のお父様であるオルベール公爵などは完全に虚を突かれて放心状態のようです。

 

しかし、婚約破棄された当人である私……フィアナ・オルベールは来るべき時が来たかとこの茶番劇を見守っておりました。

 


なぜ茶番かというと、これは作られたシナリオに沿った世界……そう、私が日本という国に生きていた時代に存在した人気ゲーム『聖女の祝福』において、どうあがいても避けられない事件だからです。


まぁ、私がこれがゲームの世界だと気付いたのは10日ほど前……異母姉であるらしい聖女レオノーラ様と出会ったときで、その時既に彼女は聖女認定を受けていましたので、抗いようがなかったのですが……。

 


「はじめまして、妹様。この度、聖女に定められましたあなたの異母姉であるレオノーラ・クライフェルトですわ」

とても美しい聖女様は礼もせずに……言っては悪いのですがとてもその、偉そうにご挨拶いただきました。

 

「異母姉?そのような話は聞いたことがありませんが……」

「そうでしょうとも。あなたは何も知らず、苦労も知らず、ぬくぬくと公爵邸で育ったんですものね。でも、そんな幸せ……私が破り捨てて差し上げますわ」

「えっ……」

そんな異母姉のレオノーラ様との初体面はこのように散々なものでした。


一方的に恨まれていれば会話は成立しませんね。

なにが楽しいのか終始ニヤニヤしながら恨みがましい言葉を叩きつけてくる聖女レオノーラ様……まばゆい金髪にエメラルドグリーンの瞳、整ったお顔立ちに女性らしい肢体……姿かたちだけは美しいのですが、なかなか衝撃的な人物でした。


「幸せ……ですか?」

「そう、幸せよ!恨まないでね、妹様。私はようやく手に入れたこの称号と美貌で、あなたの王子様を奪ってあげるわ」

いやらしい笑みを浮かべてこのようなことを宣言するような人が本当に聖女なのだろうかと疑問に思ったその瞬間に、これがゲームのシナリオ、ここがゲームの世界であることを思いだしたのです。


 

そして私は考えました……


王子様とは特に仲が良いわけではないし……というか王子様は自由奔放で先のことが考えられない人なので、もし政略結婚をしてもこの先大変になる一方です。


それに、厳しい王妃教育を励まされたこともないし、王宮で夜会があってもドレスや宝石を貰ったこともないのです。


きっと私の誕生日も知りません。


それなのに、浮気もし放題だし、浪費癖もあるし、なにより仕事ができません。


これは聖女様に奪って頂けた方が私は幸せなのではないでしょうか?……


と。


私だって夢があったのです。

生まれて今まで磨き続けてきた魔法の力を活かして民のために動きたいという夢が。

しかし婚約し、学院に入学してからほどなくして厳しい王妃教育が課せられ、さらに既に亡くなられた王妃様の代わりに実務も担いました。さらに仕事ができない王子様の分まで……。

なぜ婚約者の立場で王族のまねごとをしなければならないのでしょうか。ずっと疑問に思っていました。

 

でも、レオノーラが頑張ってくれれば、私はこの牢獄のような王宮から解放されるのです。

 

そしてゲームのシナリオでは私は婚約破棄された後、私に興味を失った国王夫妻のお花畑な世界からは退場しますが、決して処刑されたり、国外追放になったりはしません。

魔王に対抗するために新たに発見されたダンジョンで戦う姿がエンディングロールにちょこっと登場するだけだったはずです。

私は学院史上最大級の魔力保有者であり、学院では魔法学を専攻していて既に高位魔法なども扱えるのですから、ダンジョン攻略にはむしろ憧れています。

 


つまり、私はレオノーラを自由に泳がせて王子様を抱きこんでもらえば、あとは自由でハッピーな生活を送れるということです。

ワクワクしてきました。

そのためにはまずは今日この日に"王子様が私に婚約破棄を言い渡して聖女レオノーラに求婚する"というこの茶番劇を完成させなければなりませんでした。

 


私は気合十分で様々な準備をして……なんてことは全くなく、私が積極的に何かしなくてもレオノーラ自身がスーパーアクティブですし、その容姿に惚れ込んだ王子様には周囲の顰蹙は見えていないようですので勝手に進んで行きました。


そして、王子様を国王にして傀儡政権に仕立て上げたいらしい王子の伯父のラザゼル侯爵がこの2人を積極的に支援していたので、なんと国王陛下にはあまり報告が行かないまま、若くて見目の良い王子様と聖女様が勢いに任せて盛り上がって完成させたのがこの茶番劇で、冒頭の私との婚約破棄と、聖女への求婚だったのです。


この10日間、情報収集に努めてきて実現を確信していましたが、無事にこの茶番劇が見られてホッとしました。

読んでいただいてありがとうございます!

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