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騙してキスして蕩かして  作者: 真杉圭
二章-剣術大会
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五十九話-賭博場  

 トオルはパルレとのデートの最後に賭博場に足を運んだ。

 賭博場は文字通り、賭け事をする場所である。

 剣術大会だけでなく、様々なことが賭けの対象になっている。スポーツから、天候までほぼ何でも賭けの対象だ。

 例外があるとすれば、神様に関することである。

 神聖な対象を賭けの材料に使わないのは何ともネメスの人らしい。

 そんなことを思いつつ、トオルは店内を歩く。

 店内と言ってもそれほど大きくはない。販売する窓口が三つに、払い戻しの窓口が一つ、あとは賭け事の倍率や結果が記されてある掲示板が並んでいるだけだ。長居できるようには設計されていない。

 しかし、綺麗にはできている。ずっと客の出入りが途切れず、客には男性もいた。ネメスでは珍しい光景と言える。賭博場というのはそれほど人気のある施設なのだろう。


「あったあった」


 トオルが探していたのは剣術大会の倍率だった。既に勝負が始まっているので、優勝はどこかというのは投票が締め切られている。

 ダントツで一番人気がネメス、二番のイリツタと三番のネメスはほぼ同率、リーリエたちが戦ったキンギは四番だった。


「すごい人気だね」

「出場選手がリーリエさんだけしか決まっていない段階で一番人気でしたからね」

「シャリオ・イグニスって知ってる?」

「もちろん。ネメス学園の選手ですよね。イグニス家は首都でもそれなりの名家ですから」


 トオルには名家の基準などわからない。大神官の家系ぐらいしか知らなかった。


「リーリエと知り合いみたいだったから聞いてみたんだ」

「首都に住んでいて交流があったらしいですよ。昔、リーリエさんと剣の打ち合いに勝ったとか」

「よく知ってるな」

「今回の賭けについての記事に書いてありました」

「過去の情報みたいなのがあるわけだ」

「お金が絡むことですからね。結構詳細ですけど、真偽は不明です。あくまで噂話ってことになってます。何か買っていきます?」

「いや、話に聞いてどんな場所かなと思っただけなんだ。バイルにあるのも知っていたけれど、立ち寄る機会がなかったからさ」

「私もですよ。場所は知っていましたけど。今日、行ったクレープ屋以外はほとんど初めてです。そろそろ出ましょうか」


 客の邪魔になるので、トオルとパルレは外に出た。

 時間も近づいているので、リーリエたちとの待ち合わせ場所である闘技場をトオルたちは目指す。


「そういえば初めてって、どういうこと?」

「子供の頃、私は軟禁に近い状態でした。だから、街を散策し始めたのはホント最近なんです」


 軟禁という言葉を聞いて、踏み込んでいいのかトオルが迷っているとパルレが訂正した。


「軟禁といっても悪いことじゃないんですよ。珍しくもありません。姉たちが全員戦場に行ってしまっていたので、跡取りとして大事に育てられていたんです。この世代ではよくあることです」

「そっか」

「はい。書物が友達だと母は本をたくさん与えてくれました。だから、本当に他者との接点がなくて、物語にのめり込みました。外の恋愛事情だとかも本から知りましたからね。シュッフは他国との取引権があるので、他の国の書物を読んだりもしました。そうしているうちに、人並み以上に恋に興味を持ったんだと思います。だから、自分が恋人ができたらと思って、街の人気な場所だとかを特集した本とかも読んだりしてて。そのおかげで無事に案内できたというわけです。常に最新情報を取り入れていてよかったです」


 パルレは屈託なく笑った。

 自分とデートするために調べていたと知らされると、トオルはにやつきが止まらないのだった。

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