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目覚め、再生、再会と再開

「どうなってる?」

 最初の声はそれだった。

 肉体再生のための再生槽。

 それが開いてようやく意識が戻っての。

 起き抜けの台詞がそんなものである事に顔がゆがむ。

 本来なら、もっと気持ちの良い目覚めであったはずなのだから。

 だが、嘆いている暇も無い。

 今は緊急事態なのだから。



 とりあえず服を着る。

 何せ体が再生された直後だ。

 当然ながら素っ裸である。

 この状態で歩き回るような趣味はない。

 それに、この場所では相応の格好をしておかないと命に関わる。

 服は再生槽のすぐ隣に用意してある。

 収納棚の戸を開いてそれを取り出す。

 薄手の宇宙服。

 ヘルメットと生命時装置をつければ、そのまま船外の宇宙にも出られる。

 それに袖を通していく。



 それが終わってから外に出て、すぐ近くの広間に向かう。

 船員が顔を合わすための集会場。

 そこに再生されてる者が集まってるはずだった。

 問題は、そこに誰がどれだけ集まってるからだ。

(必要な人員はいるはずだが……)

 それとて、状況次第ではままならない。

 再生が間に合ってなければ、最悪一人でどうにかせねばならなくなる。



 そういった最低限必要な知識は頭に直接書き込まれている。

 細胞から再生され、本来なら知識や経験など持ち合わせてなくてもだ。

 その為、生後数時間でも喋ったり機器を使ったりという事は出来る。

 ここが宇宙船で、自分たちが地球から遠く離れた星へ向かってる最中であるという事も含めて。

 そして、緊急事態による肉体再生は、宇宙船に何らかの問題が起こった事を示しているということも。



 ただ、緊急で再生されたので、ある程度以上の情報はない。

 それらについては、補助機能である人工知能からの助言に頼ることになる。

 そこに一抹の不安がある。

 手助けがあるとはいえ、自分の血肉としての経験や技術が無い。

 それは、いざというときに自分一人では何も出来ない事を意味する。

 緊急事態の中で、それでやっていけるのかどうか。

(まあ、悩んでもしょうがない)

 不安はあるが、それについて考えてる場合ではない。

 問題は既に発生していて、それに対処せねば先はないのだから。



 そんな事を考えながら広間に入る。

 自動販売機や給水器、星が見える大きな窓と、その向こうの宇宙。

 簡素であるが、清潔感と人に優しい色彩の内装。

 余計な装飾を排除した、それでいて人体工学を考えて作られた机や椅子。

 そういったものが置かれた室内には、既に再生されていた者達がいた。



(数十人くらいか?)

 ざっと見たところ、それくらいの人数のようだった。

 おそらく必要な知識や技術を持ってる者達を優先して再生したのだろう。

 数は少ないが、ここにいる者達でも最低限の事は出来る。

 そして彼らは、既に必要な情報は集めているはずである。

 緊急再生において、そうするように取り決められている。



(早くまとめないと)

 皆が集めた情報をまとめ、指示を出す。

 それが、少し遅れて再生された彼の仕事である。

 そんな彼に、再生された者達の中から駆け寄ってくる者がいる。

 最初の報告をするべき者…………ではない。



 長い髪を無造作にまとめた女。

 彼女は特殊技能を持ってる人材というわけではない。

 だが、男にとって大事な存在だ。

 だから、何かあった場合に共に再生されるように設定していた。

 その女が駆け寄りながら声をあげる。

「シュウ!」

 呼ばれて責任者である男は抱きついてくる彼女を受け止めた。

 再生前の、そう言って良ければ前世で共にいた女を。

「久しぶりだな、ヒロミ」

 川妻シュウはそう言って飛び込んできた女を抱きしめた。


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