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問題編


 今日も祈祷探偵事務所は閑古鳥が鳴いている……。と思ったらお客さんがいた。可愛い女子大生くらいの人だ。所長とソファで対面していて、なんと、殺人事件の依頼らしい。

「――はい、現場の写真はこれだけです。うつ伏せでダイイング・メッセージを。九頭竜さんの利き手ですか? 確か、右手で箸を持っていたので右利きかなと」

その可愛らしい声に僕はフードを目深に被り、そそくさと奥の事務室(と言っても狭いので間仕切りがあるだけだ)に行く。

「ほう。では被害者やオフ会について他に情報はあるかね」と所長。

「私達、みんなネットで知り合ったんですけど、主催者の九頭竜さんはイラストクイズの製作がとても得意で、毎朝一問をツイッターに投稿していたんです」

 学校の制服から着替えながら、僕は応接間に声をかけた。

「クイズですか? 僕も好きですよ。あれは中学生最後の夏、地区予選に出場し――」

「君の趣味はどうでもいい。ここに座って共に考えたまえ」

 所長は推理に行き詰まると、バイトの僕までこき使う。この探偵事務所は僕の父親が興したというのに、他に適材がいないからという理由で、まんまと所長の後釜に納まってしまった。いいさ、僕が成人したら代替わりしてやろうと計画中だ。

 着替え終わると、コンタクトが不調のようなので眼鏡に変える。インテリっぽくてこの場には合うはず。コロナ禍だからマスクも忘れずに。ついでに温かいコーヒーを三人分、カップに注いで持っていく。

「これがオフ会に集まった人達です」

 応接間に向かうと、女子大生は鞄に収めたファイルから一枚の集合写真を取り出していた。すでに置かれている現場写真の隣に並べる。

「左から鬼頭さんに、木頭さん、亀頭さんと、こちらが江頭さんで、右端の私が喜藤です。そして真ん中で微笑んでるのが、殺されてしまった九頭竜さん」

 オフ会の写真だろう。老若男女集まった人達を指さしては名前を告げていった。

「欠席者は……一人いたかなって思います」

「おいおい、過半数以上が「キトウ」さんではないか!」

「でも漢字はみんな違うんですよ?」

「そういう問題ではない。これでは先ほどの推理が前提から崩れてしまうではないか。容疑者を一人に絞れないではないか!」

「犯人はキトウさんっていうあれですか? その程度なら私も考えましたけど……」

「うぐぐ……」

 所長は口をへの字にして黙り込む。

「九頭竜さんはオフ会の朝も問題をツイートしていました。私達はFF外の人にも認知してもらえるように、ハッシュタグを付けて回答を返信するんです。でも今日は正解が二通りある問題で、木頭さんだけ違う答えで不安そうでした。九頭竜さんはオフ会の会場で出会うと、早々に謝ってましたね」

「その問題ってどんなですか?」

 まるで役に立たない所長を横目に僕は尋ねた。女子大生はスマホを確認しながら、

「えーっと、今日の問題はイラストではなくて、『鉢巻きを数えるときの単位は何?』でした」

「もう一つ質問を。ダイイング・メッセージが偽装の可能性はありませんか?」

「それは状況的に有り得ないです。私が保証します」

 随分と自信のある物言いだ。

 手掛かりは揃っている、ような気がする。思い切って言ってしまおうか。

「……だったら僕は、犯人はこの人だと思いますよ」

 と、僕は彼女と視線を合わせないまま、写真の人物の一人を指さした。



Question, 九頭竜を殺した犯人は誰でしょう?


犯行現場図

挿絵(By みてみん)

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