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黄金の国・ジパング     作/かんがく

(朗読/なる)


 ゴールデンウィークを構成する祝日――昭和の日、憲法記念日、みどりの日、こどもの日、以上である。しかし、我が国の国民たちは総体としてのゴールデンウィークしか眼中になく、海外旅行やらキャンプやら山登りやらと大忙しで、一つ一つの祝日を祝わないどころか認識さえしていない体たらくである。国民としてあるべき姿ではない。


 そこで2025年9月、来年度より「ゴールデンウィーク」「大型連休」という呼称を禁止し、各祝日を真摯に祝うことを義務づける法律が与党の賛成多数により成立した。「大型連休の呼称禁止、並びに国民の祝日の尊重に関する法律」である。野党やメディアからは国民の自由を不当に制限するものであるという批判が上がったが、人気ジパニポリストによるPR、祝日記念金の給付決定、3年前のパンデミックによるメディア統制の強化などが功を奏して国民の支持も得られた。


 さて、2026年度の「昭和の日」がやってきた。この日は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」ことが趣旨である。新法においては、昭和時代の生活を行なうように定められている。そのため、日が変わるとすべてのスマートフォンが投げ捨てられ、日本のインターネットは動きを止めた。ビジネスや外交を求める外国からは批判を通り越して理解不能なものに対する恐怖の声が上がったが、国民たちは現代社会の様々な悩みから解放されて晴れやかな顔をしている。


 続いて、数日あけて「憲法記念日」がやってきた。この日は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」ことが趣旨である。新法においては、憲法について国民が真剣に議論するように定められている。そのため、日が変わると憲法改正に向けた議論が国会で始まり、世論やメディアも憲法一色になった。それぞれの考える憲法改正案は全く違うが、国民たちは自分の国の在り方について考えることにやりがいを感じている。


 翌日は「みどりの日」がやってきた。「自然にしたしむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」ことが趣旨である。新法においては、自然を尊重するように定められている。そのため、日が変わると自然を破壊する行為であるとして自動車の使用、発電所や工場の稼働が止められた。産業の発展で得られてきた様々な恩恵は無くなり、生活は昭和どころか江戸時代以前に戻ったが、国民たちは自然の中で暮らすことで穏やかな気持ちになっている。


 そして、かつて「ゴールデンウィーク」と呼ばれていた一週間の最後には「こどもの日」がやってきた。「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことが趣旨である。新法においては、こどもの頃の心を取り戻すように定められている。そのため、日が変わると大人たちは結婚生活や仕事をやめて、自由に遊び始めた。もはやそこには社会と呼べるものはなくなり、そこら中で喧嘩をしたり大泣きしたりする様子が見られるが、こどもたちはとっても楽しそうである。憲法は難しいので話し合うのはやめて、祝日も楽しいのに一日でやめるのはもったいないので、明日も続けることにした。ずっと続くから、もう誰も「ゴールデンウィーク」とは呼ばない。



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