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死地天国~神の地へ挑むワケあり少女ともっとワケありな男の物語~  作者: 御味九図男
ヘヴン・第二試練 鈍色の地
32/33

32.絡鎖


 二人は灰が降り注ぐ鈍色の地を歩き続ける。会話も無く本当に静かである。エルは先ほどグウィンドが言葉にした人物について聞けないでいた。特に気まずい感じでも無ければ悲しんでいる様子も無く何とも聞きにくいのだ。



「…」


『…』



 静かな灰の道を行く。足跡もすぐに無くなるような灰の中で沈黙に耐えかねたエルは渋々グウィンドに話しかけた。



「あの…」


『…なんだ』



 エルは小走りでグウィンドの横に移動する。こうしないと声が聞き取りにくいのだ。



「私が見た金髪の女性って…あの、しゃみい?さんっていうんですか?」


『…その可能性がある…だけだ』



 グウィンドはそう答える。自分は見ていないから確実では無いのだと、まだ死んでいると決まったわけでは無いのだと…そう自分に言い聞かせている様だった。



「そう…ですよね…!私の見間違えかもしれないですし!」


『…ああ』



 二人はまた沈黙に逆戻りしてしまった。何か話のタネは無いかと必死に考えるエル。



「えと…あの…」


『…』



 ふと周りを見渡すと、鈍色の木の裏から顔を出してこちらを見ている動物がいることに気が付く。



「あ…あれ!あの動物は何ですか?」


『…"ハイグイ"…灰になった巡礼者を食う原生生物だ…生きている信者を襲う事は無い』


「へぇ~…なんか強かですね」



 会話の途中でエルは何かの音に気が付く。金属製の何かが細かくこすれ合う様な音だ、それは上から聞こえる。上には空しかないというのに。



「…なんか変な音しないですか?」


じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら


『…』



 エルは音のする方を見上げる。


 それは宙に居た。背が高いわけでは無い。吊り上げられている訳でもない。



「鎖…?」


じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら



 巨大な鎖の塊が宙に浮いている。何百十重にも絡まり合った鎖の内側からは赤い血のような液体が滴っており見る者に本能的な危険を感じさせる。そして直径15mはあるだろう塊はじゃらじゃらと音を立てながらゆっくり降りてくる。場所は真上、着陸地点は…ここしかないだろう。



『…第二試練のパラサイト…"絡み合う鎖"だ』


「あれが…ぱらさいと…!」



 ーパラサイト。それは巡礼中の信者を殺すだけの為に存在すると言われている存在だ。より多くを殺す為に形成された形状、明らかに生物とはかけ離れた異様な形状…ヘヴンで死亡する信者の死因は半分以上がこれらのパラサイトによるものである。



「どうやって浮いてるんだろう…」



 エルが純粋な疑問をぼやいた瞬間絡み合う鎖から一本の鎖が鞭のようにしなり飛来する。その速度は余りに速く、飛来する鎖がただの線にしか見えないほどだ。



「ひっ!!」


『…』


ッパァン!!


 高速でしなる鎖の鞭で打たれれば人体など容易く砕ける筈…だったが。グウィンドはいまだ無傷で棒立ちしていた。グウィンドにぶつかった鎖は砕け散り辺りに散弾の如くばらまかれ、近くに合った岩や木々に当たる。幸いエルは鎖で打たれた箇所の反対に居た為無事であった。



『…入れ』


「はい!」



 エルはグウィンドの外套…"不屈の外套(インペネトラブル)"の内側に入る。この賜物は物理的な衝撃を完全にシャットアウトするという効果を持つ。狭いと思うかもしれないが、この賜物は非常にサイズが大きい。まさにグウィンドに丁度良いサイズである…つまりはエルの一人や二人、入ったところで何ら問題は無い。



『…来い』



 絡み合う鎖とグウィンドの戦闘が…今、始まった。


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