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死地天国~神の地へ挑むワケあり少女ともっとワケありな男の物語~  作者: 御味九図男
ヘヴン・第一試練 祝福の園
28/33

28.恋人


パチ…パチ…



 テルノキで作った焚火は微妙に甘い香りを放つ、それはどことなく人を落ち着かせる香りであり、不眠症に悩まされる者に医者がお勧めする事も有る。



「あんたは寝ないのか?」


『…ああ』



 エルはデイルの思い出話を聞いた後、眠くなってしまったのかウトウトし始めた為、一行は一旦焚火を焚いて休憩していた。



「なぁ」


『…』



 デイルは焚火に薪を追加しながら話す。



「魂は…精神と身体…どっちに宿ると思う」



 デイルはパチパチとはじける薪を眺めながら話す。



『…精神』


「……!そうか、アンタもそう思うか。実は、俺もそうだと思ってる…思いたい」



 かしゃっと小さな音を立てて炭となった薪が崩れる。そしてまた新しい薪が追加される。



「さっきの話…なんだけどさ、あの後からミファンの様子がおかしくなっちまったんだ」


『…』



 火は静かに薪を燃やしている。



「俺はまだミファンを愛してる…だから忘れられた街にもう一度行って…何があったのかを調べようと思う」


『…そうか』



 デイルはグウィンドを見る。グウィンドは決して口に出さないがじっくりと観察すれば実力者だと分かる。何代も昔に製造されたであろう古い巡礼道具に擦り傷の多い方位磁石…何年も巡礼を続けている証だ。



「…あんた、相当の手練れだろ?」


『…』


「頼みがある、何でもいい…第四試練について情報を教えてくれないか」



 デイルには分からない事が多い。分からない事が多いと言っても第四試練までの試練の情報はそこらの信者より詳しい。だが、彼が聞きたいのはそんな一般的な情報では無かった。自分と最愛の者を二つに裂いた原因になったかもしれない事、それなりに勉強している筈の自分ですら知らなかった事。



「……」


『……』



 沈黙が訪れる。


 そして…またしても灰になった薪がかしゃりと崩れた時、グウィンドは…いつも通りヘルメット越しの聞き取りにくい声で口を開いた。



『…"生命複製機インクリースライフ"』



〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●〇●



パチ…パチ…


「んぅ…ふぁおぅ…」



 エルは浅い眠りから目を覚ます。木々から零れる光の角度で大体の時間を探ろうとするが、ここが祝福の園であることを思い出して諦めた。



「おはよぅ…ございますぅ…」


『…起きたか』


「おう!おはよう!」



 エルはぐぐぐっと伸びをする。その後背嚢から歯ブラシを取って小川へ向かう途中で立ち止まる。



「ここの川の水って口に入れても大丈夫でしたっけ…?」


『…問題無い』


「さっき俺達も歯ァ磨いたけど問題無かったぞ!」



 キラッとデイルの白い歯が輝く。何とも爽やかな表情である。ついでに親指をぐっと突き出してサムズアップしている。



「あぁ…はい」


「なんかテンション低いな…?」



 朝は弱いエルであった。



////////////////////////



「よしっ!エルいけます!」


「では出発だな!」


『…』



 一行は歩き出す。三人が今同様に目指しているのは第二試練 鈍色の地へ繋がる"空間の亀裂()"だ。ここからもうそう遠くは無い、だが鈍色の地は祝福の園とは違って危険度が高くなっているのでエルの為に一度休憩したのだった。



「?なんだかデイルさんご機嫌ですね!何かあったんですか?」


「おうよ!元カノとよりを戻せるかもしれないんだからな!」


「もとかの?よりもど?…??」

 


 間抜けな顔して考えるエルだが、頭の中にある辞書に類語は見つからない。



『…一度別れた男女がもう一度付き合い始める事だ』


「あぁっ!なるほどそういう事だったんですね!」


「お、おう。なんかすまんな…」



 子供に伝わらなくてジェネレーションギャップを感じかけるが、まだ幼いエルならば知らなくても当然だよな…と自分を納得させたデイルだった。


 そこから鼻歌を歌うエルと二人は歩き続けた、暫く歩いていると少し遠目に鈍色の地に繋がる扉が見える。



「おおっ!あれがっ!あの先が鈍色の地ですね!?」


『…ああ』


「……待ってたか」



 三人の内一人、デイルだけが違う方向を見ていた。


 そしてデイルの視線の先には一人の女性が立っていた。



「…待っていたわ」


「全く、愛おしいったらありゃしないぜ…俺の恋人様はよ」


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