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死地天国~神の地へ挑むワケあり少女ともっとワケありな男の物語~  作者: 御味九図男
ヘヴン・第一試練 祝福の園
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27.雷鳴



 ヘヴン第一試練 祝福の園を三人は歩いていた。全員何かしらに追われながら。



「そういえば、エルは一本線ファーストラインだったんだな」


「そうなんですよ、実は今日が二回目の巡礼でして…」



 デイルはエルのタリスマンを指さして話す。突然自分の名前を呼ばれた為ドキッとしながら肯定してタリスマンを撫でる。



「ん?二回目の巡礼でもう鈍色の地に行くってのか?」


「え、ええぇ。まぁ、そうなります…ね?」



 デイルは訝し気にエルを見る。頭の先から足の先までじっくり見ると、である。じろじろと見られたエルは何とも気恥ずかしくなるが、文句は言わずに見られ続ける。



「なぁ…エル、お前…」


『…詮索はするな』


「…そうだな。わりぃ!誰だって何かしらの問題は抱えてるわな!」



 軽快に謝罪するとエルの頭をわしゃわしゃと撫でまわすデイル。髪の毛がぐっちゃんこにされたが、不思議と嫌な気持ちにはならなかったエルであった。



「勿論俺も例に漏れず訳アリだ!曲者同士仲良くしようぜ」


「…はいっ!デイルさん」



 エルが微笑むと、それにつられてデイルも笑顔になる。そこだけを見ると何とも親子の様である。


 それから暫く、変わらない景色の中歩き続けているとデイルが何かを探し始めた。



「あっれ?ねぇな…もしかしてあの時…」


「?どうしたんですかデイルさん」


「それがな、どうにもペンダントを失くしちまったみたいなんだよ」



 デイルは元々ペンダントを首に掛けていたのか、首元を人差し指でとんとん、と指している。その後ポケットやら背嚢やらを歩きながら探しているが一向に見つかりはしなかった。



「マジかぁ…俺の宝物だったんだが…」


「何か大切な思い出があったんですか?」


「おう、その通りだ。アレはな、俺の恋人から貰ったモンなんだ」



 デイルの表情は爽やかを装いつつも落胆を隠しきれていなかった。そしてエルはそれを察して軽率に聞いてしまった事を公開する。



「あの…ごめんなさい」


「ん?ああぁ…気にすんな別に故人じゃねぇんだ」


「え?そうなんですか…はぁ…すっごい申し訳ない気持ちになりましたよ…」



 デイルは少し悩んだ挙句、結局自分の事を少し話す事にした。



「俺を襲ってた女がいたろ?あいつはミファン・レイマー、俺の大切な恋人様だよ」


「え…」



 デイルは苦笑いながらも昔話を始めた。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



 ~ヘヴン第四試練 忘れられた街~



「フゥ…大丈夫か?」


「ええ、大丈夫よ。デイル、貴方は?」


「勿論大丈夫だ、ミファン」



 俺達は酷い豪雨の中、忘れられた街の巡礼者拠点、記憶されていた協会(リメンバー・ソシエ)に向かっていた。ヘヴン内で天候が変わるのは珍しい、勿論対策していない訳では無いが予定に狂いが生じていた。



「よし、少しペースを上げよう…!」


「ええ!ここら辺は危険よ、さっさと抜けるわよ」



 強い雨風が身体から体温と体力を奪っていく。だがここで立ち止まるわけには行かない、だって俺達はここからなのだから。第四試練を踏破した後は第五試練に行って…そして五本線フィフスラインになれば、一生職には困らない。いずれ嫁になるだろう彼女と共に幸せに暮らすのだ。


 突如、視界が真っ白に染まり、その後少し遅れて爆音が鳴り響いた。



「なんだ!?」


「落雷よ!」



 落雷は止まらない、連続して発生し続けた。それどころか、段々と閃光と雷鳴の感覚が短くなっていく。



「これは…まさか…」


「ミファン!!!!」



 俺は見た。


 愛するミファンの背後に立つ5本脚の獣を、閃光と雷鳴をまき散らしながら。そいつの異様に長い避雷針のような尻尾はバチバチと恐ろしい音を発生させてこちらを威嚇している。


 俺は知っている。


 こいつの名前はカミナラシ。個体差はあるが空の雲に届くほどの長い尻尾で雷を受け止め、その電気ショックで爆発的な身体能力を発揮して獲物を狩る原生生物だ。今まで討伐された数はたったの1体で犠牲者は百人を超える、まだ生態に多くの謎を残すと言われている非常に危険な存在だ。



「うおおおおらあああああッッ!!!」


「ぐっ!?」



 俺は致命的な状態になったと判断した時だけ使用できる賜物"種本能オーバーシード"を使用してミファンを突き飛ばす。


 直後俺の意識は薄れていく。視界にはミファンの驚く表情と、走る稲妻、そして宙に舞う俺の身体だった物だけ。




……


………



 音を感じる、泥の匂いを感じる。


 俺の身体は冷たい泥の感触と身体に落ちる雨粒達の感覚を正常に感じ取っていた。そして…俺は重い瞼を開いた。



「…助かったのか…?」


「う、嘘…」



 最愛の声がする。声の方を見るとそこには、何か恐ろしい物でも見たかのような顔をしているミファンが居た。



「貴方は…デイル…いや…でも」


「ミ…ファン?」



 空から雨雲が去っていき辺りに光が満ちていく。そしてまるで天使のようなミファンは雨か涙かわからない物を滴らせながら言った。



「貴方は…"何"?」


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