25.目撃
バリバリバリ
「ええぇ…」
グウィンドはある程度テルノキの幹をむしり取ると、大きな背嚢の中から調理器具を取り出していく。ちなみにエルはテルノキを毟るグウィンドを真似てテルノキを毟ろうとするが案の定無理であった。
『…』
ばちっ ばちっ
「火を起こすんですね!」
火打石を打つグウィンドをキラキラとした目で見つめるエル。何度か火花を散らした後、毟ったテルノキを更にグウィンドがぐしゃぐしゃにした物に火が付く。その後次々と生木を足していきあっという間に火は大きく育った。
『…』
「…それテルノキですよね?何に使うんですか?」
燃やしていないテルノキを不思議な模様の布っぽい物に包んで焼いている。不思議な事にその布は火に当てられても燃え無かった。
「へぇ…これも賜物なんですか?」
『…ああ…"不燃布"…という下位の賜物だ』
「へぇ…地味に便利な感じですね」
グウィンドが何をしているのかもわからぬままお腹を鳴らしてエルはぼーっと火を見つめる。暫くすると何やら香ばしい香りが漂って来た。
「ん!いい匂いします…!」
『…頃合か』
火の中から不燃布に巻かれたテルノキを回収するグウィンド。それを見ていたエルは熱く無いのだろうかと心配になったが、グウィンドは平気そうだったので杞憂だったと察した。
『…喰え』
「わぁ…っ!すごいテルノキって焼くとこんな風になるんですね…!」
エルはグウィンドから焼いたテルノキを剥いた物を渡される。黄金色のテルノキ焼きはさっきまでの木っぽい感じは全く無く、ほくほくでねっとりしている。少し力を入れてテルノキ焼きを握るとじゅわっと蜜の様な物が滲み出てくる。
「い、頂きます……まぐ…もぐ…」
『…』
「……っ!!」
口に入れた瞬間一気に押し寄せるねっとりとした甘み、鼻を通り抜ける甘く香ばしい香り…これは…何とも…。
「おいしい!!!」
『…』
まさかテルノキを焼いただけのものがここまで美味しいなんて思って居なかったエルは大感動していた。やはり子供は甘いものが大好きなのであった。エルは頭の中でこのテルノキ焼きに四つ星を与えた。
「ふわぁ…っ!美味しすぎる…」
『…ゆっくり喰え』
エルはお腹いっぱいになるまでテルノキ焼きを堪能した。
////////////////////////////
『…そろそろ出発するぞ』
「え?もうですか!?グウィンドさんずっとテルノキ焼いてて全然休憩してないじゃないですか…」
グウィンドは調理器具を大きな背嚢に仕舞い終えるとすぐに立ち上がった。
『…問題無い』
「そ…そうですか…すごいなぁ…」
エルも立ち上がって歩き始めたグウィンドの後ろに追従する。一瞬グウィンドが毟りまくっていたあの大きなテルノキが倒木しないか心配になったが、まぁいいやと関心を無くしてまた別の事を考え始めた。
「ふんふんふ~ん♪」
『…』
二人はテルノキが群生している地を抜けて少し開けた平原を歩く。ここには大きな川もあり、水の流れる音が心地良い。
「ふんふふ~♪…ん?」
そんな美しい景色に、あまり似つかわしくない音が聞こえた気がしてエルは鼻歌を止め、耳をすます。…穏やかな風が通り抜ける音、風に揺れる木々の音、流れる水の音。
《ーーーーー!!》
「…!グウィンドさんっ!今の聞こえましたか!?」
『…ああ』
進めば進むほど声はだんだんと近づいている。暫く辺りを警戒しながら進んでいると、ついに声の位置を特定した。
「あの岩のうしろ…ですかね…?一人…?」
『…二人だ』
亀裂のすき間から光を放っている大岩の後ろに誰かが居る、さっき声が聞こえてから暫く聞こえていない、もしかすると残光巡礼隊の信者かもしれないので慎重に近づく。そして人の気配がしたのでエルは、こっそりと岩の向こう側を覗き見る。
「…(グウィンドさんの言った通り二人組だ…でも何してるんだろう…?)」
岩の裏に居たのは一般的な巡礼服を来た二人組だった。そして…片方は刃物を持っている様に見える。
「いい加減にしろッ!!」
「待ってくれ!?何の事だ!!?」
刃物らしき物を持った方が丸腰の男性に襲い掛かる。胴体に刃物が突き刺さる瞬間、エルは反射的に叫んだ。
「駄目ええええええ!!!!」
「なっ!?部外者が…!私達の問題に首を突っ込むな!!」
刃物を持っていた女性(声的に女性と判断)は懐に手を入れて何かを取り出す。
「ええっ!?」
「邪魔をするなら殺すッ!!」
それは…拳銃だった。




