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21.判明

近々賜物集みたいな話を出そうと思っております。

今後ともよろしくお願いいたします。



「ふんふんふ~ん♪ふんふふ~ん♪」


『…』


「…」



 夕暮れ時のクリアストリを歩く三人の内一人、エルは妙に上機嫌で歩いていた。理由は勿論グウィンドのやさしさに触れたからだ。単純に思えるかもしれないが、案外歳相応だ。



『…少し寄り道をする』


「グウィンド、ウェイルの所か?」


「うぇいる…?お知り合いですか?」


『…ああ』



 エルはどんな人なんだろうとわくわくしながらグウィンドについて行く。グウィンドの意外な人脈の広さにエルは若干期待していた。



『…ここだ』



 グウィンドは屋根の黒い一軒家の前で立ち止まるとドアをノックする。すこしするとドアからかちゃりと鍵の開く音が聞こえて、扉が開く。



「ひ、久しぶり…グウィンド!」


『…昨日も会っただろう』



 出てきたのは何だか緩そうな女性だった。黒くぼさぼさの長髪にすこしクマが出来ているグレーのたれ目、あと何だかふにゃふにゃした口元。何となく幸薄そうである。



「ウェイル!」


「あ、ロンドル…ぐえっ」



 巨大なグウィンドと玄関のすき間を通ってロンドルオンがウェイルと呼ばれている緩そうな女性に勢いよく抱き着いた。



「ウェイル、元気にしていたか。病気はしていないか」


「ちょ、ちょっと…服の中に入ろうとしない…ひぃうっ…こ、こら…!」


「凄い…ロンドルオンさんとコミュニケーションが取れる方なんですね」



 女同士もみくちゃになっているのを二人とも抱き上げて家の奥へ行くグウィンド。そしてグウィンドはエルに話しかける。



『…寒いだろう、入れ』


「あ、はい。そういう感じなんですね…お邪魔しま~す」



 エルは三人の関係を何となく察して家の中に入った。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


 部屋の中はある程度片付いているものの、それなりに残る生活感がある。要は人の家って感じがするのである、そして妙に落ち着く。壁に掛けられている観葉植物や家具の雰囲気が統一されており良い部屋である。…ちなみにロンドルオンはグウィンドとウェイル両名に絡みついている。



『…変わりないか』


「う、うん…所で…そ、その子は…?」


「わたしエルです!えと…」



 エルは自己紹介と何故グウィンドと一緒に居るのかを伝える。しかしぶっちゃけ途中からグウィンドでも座れる…いやグウィンド専用としか思えない椅子が常備されている事が気になって仕方がなかった。



「な、なるほどね。そんな事が…え、えとね…私は…」



 エルの自己紹介が終わった後、お返しという感じでウェイルも自己紹介を始めた。



「ウェイル・フェイシイン…です、あとは…グウィンドのおさ、幼馴染で。数年前まではアサイア巡礼隊の一人…でした」


「今日はやけにその…アサイア巡礼隊って言葉聞くなぁ…ってグウィンドさんの幼馴染なんですか!?」



 こくこくと頷くウェイル。



「あ、あと…ロンドルも幼馴染、昔は、もっと人間味があ、あったんだけど…ね」


「え…ロンドルオンさんにも人間だった頃が…!?」


『…今も人間だ』



 ロンドルオンはその言葉に全く気にする様子も無く無表情なのに幸せそうに二人に巻き付いている。エルは一瞬幼いロンドルオンを妄想するが、小さな女の子が無表情で手足をにょろにょろ伸ばしている姿が出てきて駄目だった。



「へひ…エルちゃんは、ノリがい、いいね…」


「なんだかウェイルさんとは仲良くできそうです…!」


『…』



 エルはエルレン以来のまともな人との会話を素直に喜んだ。ウェイルは基本的に臆病であるが気の優しい人物だ、だからこそまだ幼いエルはそれを何となく感じ取り、あまり緊張せずに話せているのかもしれない。



『…ウェイル、頼みがある』


「ひへ…とつ、突然だね…。なに、かな?」


『…今日一日こいつの面倒を見て欲しい』


「え?」



 エルは驚く、確かに今日泊まる所は無いが、まさか泊まる場所を探してくれていたとは知らなかったからだ。



「わかった、私もエルちゃんと、おは、お話したかった…から」


「ウェイルさん…!」


「ほひっ…!?子供を、助けるのは…あ、当たりまえ…だよ」



 感動のあまりエルはウェイルに抱き着く、その行為に驚くウェイルだったが、すぐにエルの背中に手をまわして抱きしめる。エルは何だか嬉しくなり少し泣きそうになるが我慢した。



///////////////////////////



『…俺は帰る』


「ウェイル、病気には気をつけてくれ。あと怪我にも、あと…」


「ばぃ」


「グウィンドさん、ロンドルオンさん、また明日~っ!」



 ロンドルオンを片手で抱きかかえたグウィンドは狭い玄関を潜るようにして帰ってしまった。ドアのカギを閉めたウェイルはしゃがんでエルの視線に合わせて話す。



「エルちゃん。おな、お腹すいてない?」


「…空いてます…」



 ウェイルはにへら…とほほ笑んでエルの頭を撫でた。



「じゃ、じゃあご飯に、しよっか」


「…!はいっ!わたしもてつだいます!」



 二人はキッチンへ向かう。その姿は年の離れた姉を手伝う妹のようであった。



/////////////////////////////


トントントントン


 野菜を切る音が静かなキッチンに優しく響く。ぐつぐつ煮える鍋からはとてもお腹のすく香りがする。


「そういえばウェイルさん、ちょっと気になったことがあるんです」


「どう、どうしたの?」



 料理をするウェイルは先ほどまでとは違い、意外と手際が良い、エルが話かけている間もどんどんと料理の工程を進めている。



「…アサイア巡礼隊って、何なんですか…?」


「うん…や、やっぱり…気になるよね。…えっとね」



---------------------


 アサイア巡礼隊…それはかつてクリアストリ中に名をはせた凄腕巡礼隊だった…数年前に壊滅するまでは。


 アサイア・レイクウィンス…それがアサイア巡礼隊のリーダーだ、アサイア・レイクウィンスには圧倒的な才能があった。最高の仲間を作る才能、賜物を探し当てる才能、人知を超えた化け物を殺す才能、致命的な状況を容易く覆す才能、未来を創る才能…これらは"天性"では無い、これはアサイア・レイクウィンス自身の才能だった。


 そんな彼の最初の仲間こそグウィンド・ヴァンヒートとクライラ・ライラだった。初めはたった三人で始めた巡礼は一人、また一人と最高の仲間を増やしていった。仲間が増えるにつれアサイア巡礼隊の名は広まった。どんな化け物にも負けない最強の巡礼隊、どんな試練も乗り越える無敵の巡礼隊…人々はアサイア巡礼隊の輝かしい活躍に惹かれ、崇めた。


 勿論仲間を失う事もあった、だがアサイア・レイクウィンスは折れなかった。たとえ突然の崩落により退路を失っても、天の果てで食料が底をついても、謎の感染症により仲間の半数が倒れても…彼は決して折れなかった。アサイア巡礼隊の巡礼に失敗の二文字は存在しなかったのだ。


 アサイア巡礼隊と二番手の巡礼隊の間には天と地ほどの差がある…それ程にアサイア巡礼隊は突出して伝説的な活躍をしてきた。


 だが栄光は永遠には続かなかった。ヘヴン第七試練への巡礼、それがアサイア巡礼隊の最後の巡礼となった。第六試練 理想郷から届いた最終連絡の1ヶ月後、クリアストリには一人の男が帰ってきた、その男は巨大な柱を抱えていた。柱はところどころヒビが入っており、その隙間から赤い液体が溢れるように零れだしていた。そして男は言った。



【これはクライラ・ライラだ。まだ生きている、リライラ・ライラを呼んでくれ】



 それを聞いた者は理解した。アサイア巡礼隊は壊滅したのだと。


 そして畏怖と敬意を込めてヘヴン第七試練は死地デッドランドと呼ばれるようになった。



ー以下アサイア巡礼隊実績


・第三試練 後悔の海にて比較的安全なルートを開拓


・第二試練 鈍色の地にて大量発生したワタヌキを根絶


・背信者組織 地を這う者達 を壊滅


・第四試練 忘れられた街に確認された原生生物のプラントを破壊


・第四試練 忘れられた街にて比較的安全なルートを開拓


・第三試練 後悔の海にてエルドラ国の国賓を救出


・特色級賜物"生命複製機インクリースライフ"を回収


・各試練におけるパラサイトの情報開示により協会から隊員に勲章を授与


・人類初、第五試練 失楽園を踏破


・特色級賜物"久遠の錨(エバーグリーン)"を回収


・第五試練 失楽園にて黄金山岳の破壊により短縮ルートを開拓


・人類初、第六試練 理想郷を踏破


・第二試練 鈍色の地にて第12ヘヴン調査大隊の救助


・特色級賜物"未来観測機シンギュラリティ"を回収


・第六試練 理想郷の代償の情報開示により協会から隊員に勲章を授与


・人類初、第七試練 死地への挑戦により壊滅



---------------------------



 とっくに料理を終わらせたウェイルはエルにアサイア巡礼隊の知っている事をところどころ分かりやすくして伝える。今は夕食を食べながらお話をしている。所々どもっていたりしたが、エルは全く気にしていない。



「すっごい…ウェイルさんも凄い方だったんですね…!」


「ま、まぁねぇ…でも第七試練に挑む前にい、引退しちゃったんだけどね」


「それでも十分凄いですよ!!??」



 そう、この緩そうな女性ことウェイルはこれでも元六本線シクスラインだったのだ。今は引退してのんびりと暮らしている。…隠居にしては若すぎるが、それでも巡礼で大量に稼いだので問題ない。



「ふへへ…そ、そうかなぁ…なんだか昔もそうだったけど、ほめ、褒められるとむずむずする…」


「だからグウィンドさんもあんなに強かったんですね…引退したとはいえ流石です!」



 エルがそう言うとウェイルはきょとんとした顔をする。まさに ん? と言った感じだ。



「えっと…え、エルちゃんグウィンドはまだ引退してないよ…?」


「えええええ!?現役なんですか!?六本線シクスラインのリストに載って無かったから…」



 エルはエルレンからもらった六本線シクスラインのリストを再度確認するがやはりグウィンドの名は載っていない。そこから導き出される答えは…第六試練に挑む前にアサイア巡礼隊を抜けた。



「そ、そりゃ載って無いと思うよ…」


「あ!五本線フィフスラインなんですか?」


「いや…」



 ウェイルは言いにくそうな顔をして少し声のトーンを落として答えた。



「ぐ、グウィンドは七本線セブンスラインなんだよ」


「…え?」

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