一筋の光明ってやつ…かな?
(くそ! 完全に油断してた! ボス狼の右に7体、左に6体か。 かなり部が悪い。 一体を早々に倒せたのは良いけど、このままじゃやられちまっっっ!?)
作戦を立てようと思考しているところに二体が突貫してくる。
残りは逃げ場を無くすように移動し、周囲を囲み始めた。
突貫してきた内の一体へ向け、剣を横薙ぎに振るが簡単に躱された。
その隙に片方が左腕に噛み付いてきたが、特攻の効果によるものなのか噛みちぎられはしない。
噛み付いて動きが止まった所に剣を一閃する。すると、何の抵抗感もなく狼は真っ二つになった。
(俊敏が低過ぎて攻撃は当たらなそうだな。その代わり特攻のおかげで攻撃が当たったら一撃で倒せる!
今みたいに動きが止まった所を狙うしかない!)
仲間が倒されたことで激昂したのか、囲みから二体と最初の一体の計3体が突貫してくる。
俊敏の差もあり躱せる筈もなく、左腕、左脚、右首筋に噛み付かれてしまった。
三体からの攻撃を何とか耐え、右首筋の一体は脳天を嚙み千切り、左腕の一体は剣で一閃し真っ二つにし、最後の左脚の一体は右脚で胴体を踏み抜き絶命させた。
周囲を囲んでいる狼達は、立て続けに仲間をやられた事に動揺したのか、未だに動こうとしないリーダーらしき狼の方に顔を向けていた。
(よし! この感じなら何とか乗り切れるかもしれない! …飽くまで、高みの見物をしているボス狼が動かなかったら、だけどな)
周囲の狼達が動揺して動けなくなっているうちに、“ステータス観覧”で残HPを確認してみる。
種族:腐人
HP:5/8
MP:6/6
筋力:F (20)
耐久:F (18)
俊敏:F (11)
魔力:G (1)
幸運:S (500)
装備:ロングソード
スキル:忍び足 仲間を呼ぶ
エクストラスキル:無し
種族スキル:食再生 同種化
固有スキル:傲慢 物質吸収
特攻:人間 狼
(HPは3しか減っていないのか。一回の攻撃で1しか減らない計算か? 今の戦闘で筋力、耐久、俊敏も上がってる。 “傲慢”様様ってやつだな!
倒した狼を食べて回復しながら戦闘すれば何とか勝てるか?)
胴体を踏み抜いた狼に顔を向け、既に露出している臓物を手に取り喰らう。喰らう。喰らう。
その様子を見ていた狼達には更に動揺が広がっていた。
それを見兼ねたのか、ボス狼が大きく吠えた。
また“仲間を呼ぶ”を使われたかと警戒したが、周囲の狼達が一斉に動き始めた。
部下に指示を出していたようだ。
右側から時間差で三体が飛びかかってくる。1番最初の一体に狙いを絞り、大きく開けた口の中にロングソードを突き入れ絶命させる。
そして、ロングソードに突き刺さったままの狼を二体目に投擲し、吹き飛ばした。
三体目の対応は間に合わず、右手首に噛み付かれてしまったが、地面に叩きつけ頭を潰した。
そのまま脳を喰らいHPを回復させる。
二体目は倒しきれずよろよろと起き上がり周囲と合流している。
(残りは七体とボスだけだ。何とか対応できるようになってきたな。 残HPは12/12か。 HPも減ってから回復させると成長する仕組みか?
仕組みは分からないけど余裕ができたのはありがたい)
今は、ボス狼が指示を出しているのかワフッワフッと言い、最後に大きく吠えた後、周囲の狼とボス狼自身が動きだした。
(遂にボスまで動き出したか。 これはかなりマズイ状況なんじゃないか…? 周りの死骸を喰らい回復しながら、確実に一体ずつ倒していくしかないか)
七匹は周囲を円を描くように旋回している。ボス狼はその円の周囲をゆっくりと旋回して隙を伺っているようだ。
数秒後、左右から一体ずつが突貫してきた。
飛び掛かりにより空中で身動きを取れない瞬間と、噛み付きで身動きが取れなくなった瞬間のどちらかに狙い澄ましていると、先程までとは違う動きを繰り広げてきた。
二体ともすれ違い様に爪による攻撃をしてきたのだ。
二体が円に合流する直前には前後から二体が突貫してくる。そして、二体が攻撃をする頃には間髪入れずに左右からもう二体が突貫してくる。
このフォーメーションを繰り返される事になった。
徐々にHPが削られていく。削られた分は攻撃を耐え凌ぎながら死骸を喰らい回復する。
(ヤバイヤバイヤバイ! 完全に対策を練られてる! このままじゃジリ貧だ… どうにかして突破しないと!
ここは一か八かで!)
右側から突貫してきた狼の爪を振り下ろす動作に狙い澄まし、どうにか摑みかかる事ができた。そして、胴体に噛み付き攻撃を放つ。
そうすると、狼が凄い力で前後に暴れ出し、痙攣した後、動作を停止させた。
周囲の狼は一瞬だけ動きを乱したがすぐに統率を取り戻し、今度は前後左右から一体ずつが突貫してきた。
爪による攻撃に備えていると、今度は一体ずつが両手両足に噛み付き動作を阻害させてきた。
攻撃モーションの違いに戸惑ってしまう。その隙にボス狼が急旋回し、10メートルはあっただろう距離を一瞬で詰め、真正面から顔目掛けて噛み付きを放ってきた。
本能的に顔を逸らし軌道から外れることはできたが、左肩を噛みちぎられてしまった。
ボス狼による攻撃でたたらを踏んでいる隙に噛み付いていた狼達が離れ、再び周囲から二体が突貫してくる。
(これは… 万事休す…か? ボス狼の筋力が高過ぎるのか、俺の耐久が低過ぎるのか分からんが“傲慢”が仕事してくれていない)
突貫してきた二体の爪による攻撃を耐え、再び“食再生”によるHPの回復を試みようとした時、周囲の狼達に動揺が走った。
先ほど、噛み付きにより倒れた狼が起き上がったのだ。それも、仲間であるはずの自分たちに威嚇の声を上げながら。
(成功…してたか。 一筋の光明ってやつ…かな?)