俺… 死んでる?
事案に惚ける事数秒、我に帰った。
(魔法に、ステータスとか言ってたな… まるでゲームみたいだ。)
と、まだ生温い腕を齧りながら考える。
まだ十全には思い出せないが、俺はゲームが好きだった。その中でもRPGというジャンルのものだ。
そのジャンルには、ステータスがあり、レベルがあり、魔法やスキルなんてものもあった。
敵を倒してレベルアップを重ね、ラスボスの魔王を倒すという王道ファンタジーである。
(ってことは、俺はトラックに轢かれて死んだ? そして、この世界に転生した… 記憶が曖昧な間に成長して今に至り、記憶を少し取り戻した… 的な?)
本当に転生なんて物が起こり得るんだなーと呑気に考えながら腕を齧っていると、思い至ることがあった。
(ってことは、転生特典とかチートとかあるんじゃね!? 最強の魔法使えるとか! )
前方に片腕を向け、ゲームで使われていた魔法を唱えてみる。
(ファイヤーボーーーーール!)
だが、何も出ない。声すら出ない。
(くそ! 魔法はロマンなのに! じゃあ、最強の肉体か!?)
と、身体を見回した。左肩は爛れおり、右脇腹は抉れ、身体の所々が腐り落ちている。
右手で首やら顔を触ってみると、グチャ、とした感覚があり、首から上も腐っていることが分かった。
そして、左手でおっさんの腕を持ち、未だに齧っていた。
(あれ? 俺… 死んでる?)