ボス
大変遅れまして申し訳ございません。
次話はなるべく早く更新したいと思います。
(木っ端な拙者ら一族に新たな力を与えて下さった主より新たな命を承った。
拙者らの前に立ち塞がる彼奴を討ち亡ぼすこと。
彼奴の身からは力が漲っているように見えるが、以前の拙者とは比べ物にならないほどの力がこの身には宿っている。
更に、拙者より前から主に付き添ってきた頼もしい2体の仲間もいる。
力を合わせれば彼奴の様な者など簡単に打ち滅ぼせるであろうと思うが、主の期待を裏切らぬ様、油断せず、慢心せず挑む!)
ボス、ポチ、ゾンちゃんの3体は、陣形を組み禿大猩々と相対する。
先頭に耐久の高いボスが立ち、後方に俊敏の高いポチ、2体に挟まれる様に筋力高いゾンちゃんが立つといった陣形である。
禿大猩々は、殺意の篭った眼差しを送ってくる3体を一瞥し、不敵に微笑んだ後、開戦の合図の如く咆哮を上げた。
禿大猩々が3体に突貫し拳打を放つが、ボスが禿大猩々の前に立ち塞がり腕を十字に組み防御する。
拳打の衝撃により数ミリ足を地面に引きずりながら後ろに下がらせられたが、大したダメージは入っていない様だ。
(ふむ。
彼奴の攻撃では、今の拙者には大した傷を付けられぬようだな。
拙者が彼奴の攻撃を受け止め隙を作り、2体が攻撃というのが良いであろう。
主が与えてくださった耐久を生かす戦をするのだ)
ボスは拳打を受け止めた直後、合図を送るように短く吠え、禿大猩々の腕を掴み体制を崩そうと試みた。
だが、筋力の差により逆に引き込まれてしまい、逆の手から拳打を顔面に叩き込まれる。
防御をしていない状態で綺麗に拳を叩き込まれた後、腕を掴まれ吹き飛ぶことも受け流すこともできずに拳打を叩き込まれ続けた。
数発の拳打を叩き込まれていると不意に攻撃が止み拘束が解かれた。
前を向くとポチの牙により左肩を抉られ怯む禿大猩々の姿が映り、その隙に即座に肉薄した赤黒いオーラを拳に纏ったゾンちゃんの拳打が禿大猩々の顔面に叩き込まれ、禿大猩々は錐揉み回転をしながら吹き飛ばされていった。
(拙者の不甲斐なさにより予定とは異なってしまったが、2体が補ってくれた様だな。
やはり、拙者らの敵ではない…むぅ?)
おそらく、ゾンちゃんの“剛砕拳打”による攻撃で吹き飛ばされた禿大猩々は、鼻息荒く飛び起きると咆哮を上げながら胸を叩き轟音を轟かせ始めた。
轟音が鳴り止むと同時に禿大猩々が纏う空気が変わる。
狂気と怒りが篭った眼差しを宿し、少ない毛を逆立てる。
そして、ポチには及ばないまでも先程とは比べ物にならない速度で動き始め、1番近くで様子を見ていたゾンちゃんに突貫した。
ゾンちゃんは禿大猩々の急な変化に対応しきれず肉薄を許してしまい防御が遅れ、腹部に拳打をまともに受けたことにより吹き飛ばされてしまった。
その光景に唖然としていたボスとポチは、吹き飛んだゾンちゃんと禿大猩々の射線を塞ぐ様に陣形を整え、空気が変わった禿大猩々を睨み据える。
(不甲斐ない。
誠に不甲斐ない!
慢心せずに挑む?
どの口がその様なことをほざいていたのか…
拙者の慢心により仲間に痛打を浴びさせるのを許してしまった!
この様な事では主に合わせる顔がござらん!)
ボスは自らに課した仲間を守るという役割を果たせなかった己を嘆き、憤慨し、挽回せんと突貫する。
禿大猩々は突貫してくるボスに両拳による拳打の嵐を浴びせかけるが、その連打を受け流し、時には両腕で防御し、何とか耐えるボス。
どうにか時間を稼ぎ隙を作ろうと応戦していった。
(彼奴の一撃一撃が先程とは比べものにならぬほど重い。
どうにか対応できているがこのままでは危うい戦になるであろう)
その時、背後からポチの鳴き声が聞こえた。
何かの合図だと悟ったボスは禿大猩々の連打の合間に横に飛び距離を取ると、ポチが居る方向から黒い斬撃波の様なものが飛来し、禿大猩々の身体を切り刻んだ。
(ポチ殿のスキルか。
なるほど。
遠距離からの斬撃波とは良いスキルでござる。
拙者の”鬼乱打“は接近と溜めが必要であり、燃費も悪い。
ポチ殿のスキルの燃費がどれほどのものかは分からぬが、拙者は使えて2回…
ゾンちゃん殿に復帰していただければ別だが、決定打には欠けるであろう。
時間を稼ぐ他に道はないか)
身体中が切り刻まれ、それを為したポチを憤怒の形相で睨み据える禿大猩々。
ボスからポチへ標的を変え突貫し始める。
だが、“狂気化”を使用し俊敏が高くなっている禿大猩々だがポチには及ばず、あらゆる攻撃を躱し続けるポチ。
2体の攻防が続いている間にゾンちゃんの方に目を向けると、腹部が爆ぜ大穴が空き、立ち上がることすらままならない状態で悔しげに地面を叩きつけていた。
(あの状態ではゾンちゃん殿は戦への復帰は困難であろう。
拙者とポチ殿で彼奴を打ち滅ぼすしか手は無いでござるか…)
ボスは気を引き締め直し、再び禿大猩々へ突貫した。
ボスが攻撃を受け、躱し、ポチが攻撃を加えダメージを蓄積させていき、隙があればボスによる攻撃でもダメージを与える。
しかし、筋力のあまり高くない2体の攻撃ではやはり決定打にはなり得ない様だ。
徐々にボスの防御が崩され始め、2体の連携に綻びが生まれてきていた。
それもそのはず、禿大猩々の高い筋力が“狂気化”により更に倍になっており、その攻撃を受け続けていたボスの身体は既に満身創痍になっていた。
(このままでは拙者の身体が保たない…!
どうにか起死回生の手を打たなければ…!)
ボスに焦りが生まれ、溜めの必要な“鬼乱打”の構えに入ってしまう。
ボスの様子を見たポチが瞬時に禿大猩々の気を引こうと動くが、時既に遅く、スキルを使用する溜めの構えに入ったボスに禿大猩々の強烈な拳打が炸裂し、ボスは成すすべなく吹き飛ばされた。
そして、気を引くために禿大猩々の目の前へ無防備に立ったポチは、禿大猩々に蹴りを入れられ、未だに倒れ伏していたゾンちゃんの方向に吹き飛ばされた。
ゾンちゃんは自らの方向に吹き飛ばされてくるポチを何とか上半身だけを起き上がらせ受け止めるが、耐久の低いポチは下半身が千切れ飛び、戦線に復帰できないであろう状態になってしまっていた。
(なんてことだ!
またも拙者の不甲斐なさにより仲間が窮地に陥ってしまった…!)
起き上がりポチが吹き飛んでいく姿を成すすべなく眺めていたボスは、自らの不甲斐なさに絶望していた。
その中、未だに“狂気化”が発動している禿大猩々は、動きを止めずポチとゾンちゃんの下へ突貫しながら両拳を振り上げ天高く飛び上がった。
(このままでは2体が消滅させられてしまう!
せめて、せめて2体の命だけは拙者が守りきらねば主に合わせる顔がない!)
ボスは満足に動かせない四肢に鞭打ちゾンちゃんとポチの下に走り出す。
そして、天高く飛び上がった禿大猩々よりも先に辿り着き、2体に覆い被さった。
そんなボスの背に、勢いのついた禿大猩々の両拳が振り下ろされ、大規模なクレーターが生じるが、そのままボスの背に連打を繰り返し続ける禿大猩々。
それでもボスは連打を受けたまま覆い被さり2体を守り続ける。
(必ず、必ずや拙者が2体を守りきる…!
この身朽ち果てようとも、2体だけは!)
それから十数の連打を浴び続け、もはや限界かと思われた時、禿大猩々の動きが鈍り始めていた。
逆立っていた毛が通常の状態に戻り始め、正気を失っていた眼差しに理性の光が宿る。
どうやら、“狂気化”の限界が訪れたようだ。
意識が朦朧とし始めていたボスの下で、両拳に赤黒いオーラを纏わせるゾンちゃんがそこをどけと言わんばかりに顎をしゃくるのが視界に入る。
(ゾンちゃん殿…。
後は任せたでござる!)
限界を超えていたボスは素直に応じ、横に倒れ込むように位置をズラしながら残った力でゾンちゃんを起き上がらせた。
ちょうど振り下ろそうとしていた禿大猩々の右拳に向け、ゾンちゃんの右拳による“剛砕拳打”が炸裂し、禿大猩々の右拳はひしゃげ、粉砕される。
その勢いのまま左拳による“剛砕拳打”をがら空きの顔面に放ち、禿大猩々は吹き飛ばされ落下した。
(この戦、どうにか勝てたでござるか…。
辛勝と言ったところ…!?)
ボスが勝利を確信しながら禿大猩々に目を向けていると、禿大猩々が起き上がった。
右腕は捻じ曲がり、顔面は陥没しているが、それでもよろよろと立ち上がり、鈍重に歩みを進める。
(まだ、まだ立ち上がると言うのか…!
こちらは既に満身創痍…。
これ以上の戦は…!?!?!?!?)
ボスが絶望し始めたその時、歩み寄る禿大猩々の側面から、雄叫びを上げ、身体中を火に包まれながら剣を真っ直ぐに掲げ飛来してくる物体があり、そのまま禿大猩々の脇腹を貫通し地に突き刺さった。
貫通された禿大猩々は、ゆっくりと前のめりに倒れ、そのまま動かなくなる。
(あ、主!?
何上このような事に!?)
そう。
全身火達磨になりながら飛来してきた物体は、三体の主であるゾンビであった。
完全に良いところ取りである。




