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屍の王〜腐人から始まる転生譚〜(仮)  作者: エイム
第1迷宮
19/54

絶望的な戦い

冒険者『天馬の羽』視点です


4/25 主人公のステータスに冒険者『紅蓮』のスキルを追加しました。

キールは、硬直しているジンの側に息を殺しつつ近付く。それに気付いたジンは、場所を譲るように入れ替わり、キールが通路の奥を覗く。


(『紅蓮』がやられたのか!?

二体は俺たちで倒せるだろうが、『紅蓮』を喰ってるゾンビの気配は異常過ぎる!

ギルドマスターから借り受けた鑑定石でステータスを確認し、撤退してギルドに報告だな…

俺たちの手には負えない…

懸念は、鑑定を受けたモンスターは壮絶な嫌悪感に襲われて凶暴化する場合がある事だが…)


キールは恐る恐る鑑定石を取り出し、ゾンビに向ける。そして、石の効果を発揮させ、ステータスが表示される。






種族:腐人(ゾンビ)


HP:148/148

MP:129/129

筋力:E(95)

耐久:D(152

俊敏:D(126)

魔力:D(122)

幸運:S(500)


装備:ロングソード ロングソード


スキル:忍び足 仲間を呼ぶ 統率 強奪 指導 火魔法 回復魔法 偵察 気配感知 観察眼 危機感知 気配遮断 隠密 剣術


エクストラスキル:無し


種族スキル:食再生 同種化


固有スキル:傲慢 物質吸収


特攻:人間(ヒューマン) (ウルフ) 狼統率者(ウルフリーダー) 緑小鬼(ゴブリン) 緑鬼(ホブゴブリン)




(なんだ? 種族は腐人(ゾンビ)? 進化種ではないのか?

ゾンビにしては異常な程多種なスキルがあるが、俺たちが倒してきたモンスターよりも圧倒的に弱い、はずなのにも関わらずこの気配…『紅蓮』がやられた事実… 謎が多過ぎる…

見慣れない“特攻”の項目と、ごく一部にしか発現しない固有スキルが関係しているのか?)


そう思い、続けて固有スキルを鑑定するキール。




《傲慢 ステータス成長促進 進化先増加 一度勝利した種への特攻》


《物質吸収 物質を食す、またはスキルにより吸収した際、物質の持つ能力を手に入れる》




(これは…!? 異常過ぎるスキルだ!特攻とやらにどこまでの力があるか分からないが、本能が危険だと訴えかけるような禍々しい気配にも説明が付く!

早々に帰還し、ギルドに報告しなければ!)


キールが思考している間に、ゾンビは鑑定の嫌悪感に辺りを見回しているようだが、『天馬の羽』の存在には気付いていない。 ジンのスキル”集団気配消失“が上手く作用しているようだ。


その時、ジェシカとガープが様子を見に来た。

音を立てないように通路の奥を覗き、余りにも禍々しい気配をしたゾンビを目にしたジェシカは思わず


「ヒッ」


と声を出してしまったのだ。

ゾンビはその声に瞬時に反応して火球を放った。


(あれはまずい!

被弾したら命を落とす!!!)


キールがそう判断したと同時にガープも危機を感じたのか、瞬時にジェシカを左脇に抱え後方に飛んだ。

それを見ていたジンも危険を察知し地面すれすれまでしゃがみこみ、後頭部を腕で守りながら身体を捻る。

キールはパーティメンバーを守るようにタワーシールドを構え、スキル“鉄壁の守護盾”を使用した。


ゾンビが放った火球は、タワーシールドを構えたキールの僅か先の地面に着弾し、爆ぜた。

爆風が『天馬の羽』を襲うが


(何故だ? 火球自体は途轍もない破壊力を持っている様に感じたが、余波は大した事…ない?)


爆風を凌いだキールは、あべこべな状況に戸惑っていた。

そこに、ゾンビの傍にいたゾンビウルフがいつの間にか目の前に迫り、飛びかかりながら爪を振りかぶっている所であった。


(なっ!? いつの間に!? 通常のウルフの速度の比じゃないぞ!?)


思考し油断していたキールは対処が間に合わなかったが、ジンが即座に反応し、ゾンビウルフの爪を短剣で防ぎ、右脚で胴体に蹴りを入れる。

ゾンビウルフは壁に激突し、地に倒れ伏した。


「すまないジン! 助かった!」


「おうよ! あんまボケっとしてるなよリーダー!」


キールがジンに向け感謝を述べている間に、ガープとジェシカも起き上がっていた。


「皆さんすいません! 未熟な私のせいで存在がバレてしまいました!」


「気にするな。 とにかく今は撤退してギルドにゾンビの存在と、『紅蓮』の死亡報告を済ますぞ!

みんな! 生きて帰るんだ!」


おう(はい)!と気合を入れて返事をするパーティメンバー。

撤退戦が始まった。


「ジン! 先導を頼む! 殿(しんがり)は俺が務める!

ガープはジェシカを守りながらジンに追走してくれ!」


キールの指示に即座に応じ、撤退を始める『天馬の羽』。

キールは走りながら後ろを伺うと、よろよろと立ち上がり始めるゾンビウルフと、その側に立つゾンビ二体が見えた。


(仲間意識があるのか?

こちらには目も向けずゾンビウルフを心配…している?)


様子を伺っていた時、禍々しい気配を放つゾンビが天を向いた。そして


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


と、悍ましい叫び声を上げたのだ。


(なんだ!? この悍ましい叫びは!? ゾンビが仲間を傷付けられて怒り狂ったとでも言うのか!?)


「止まるな!行け!」


自分を含め、叫び声に体が竦み立ち止まりかけたパーティメンバーに向けキールが叫ぶ。

その声に我を取り戻した『天馬の羽』の面々はひたすら走る。

あまり長くないはずの大広間に続く通路を無限にも感じられる時間を走り続ける。

後ろを振り向くが、まだ追ってきてはいないようだ。

そうして、ようやく先頭のジンが大広間に抜け、急に立ち止まる。


「ジン!どうした!?」


と、キールが問うが返事が来ない。

怪訝に思いながらも走り続け、残りの三人も大広間に到着し、目を疑った。

そこには、大量のゴブリンやホブゴブリン、ウルフのゾンビが待ち構えていたのだ。


(何故こいつらがここに!? さっきのゾンビの叫びはアイツが持っていたスキル“仲間を呼ぶ”だったのか!?)


「どうするよ?リーダー」


脂汗を垂らしながら、問いかけてくるジン。


「仕方がない。ジェシカ、回復範囲魔法を頼む!」


「はい!

聖なる力よ、我々の傷を癒したまえ!キュアサークル!」


ジェシカの“回復魔法”が発動した。対象はゾンビ達だ。

ゾンビ達の足元にサークルが出現し、サークルから光が天に向けて広がり柱状になる。20体ほどのゾンビが柱の中に入り、呻き声を上げながら爛れていき、消滅した。


「よし!良いぞジェシカ!その調子で殲滅を頼む!

ゾンビ達が流れていかないように俺とジンで足止めをする!

ガープはあのゾンビが来ないか警戒しつつジェシカを守ってくれ!」


おう(はい)!と返事が返ってくるのを確認し、ジンと共にゾンビの殲滅を始める。

ジンは持ち前の俊敏でゾンビウルフを殲滅しつつ、周囲のゾンビゴブリンを葬る。

キールはタワーシールドを用いてゾンビホブゴブリンの攻撃を凌ぎつつ、ロングソードで着実にゾンビの数を減らしていった。

それでも抜けてくるゾンビはガープが大斧を振りかぶり脳天から真っ二つにしていく。


その中、“回復魔法”を連発していたジェシカが声を上げた。


「キールさん!私の魔力でも一回で消滅しない個体が複数居ます!

それに、範囲魔法はMP消費が激しくて後四回が限界です! すいません!」


「キール!こっちにも異様に早い個体が何体か居る!

何とか対応できてるが、数が多過ぎて仕留め損なっちまう!」


ジェシカに続きジンまでも苦言を呈する。

そして、ガープまでも


「こっちにも一撃で葬れないやつが突破してくる事がある」


と発言をした。


(俺の所にも、タワーシールドが弾かれる程の攻撃を仕掛けてくるゾンビが居る。

俺たちのステータスで多少でも梃子摺るゾンビが居る…!?

どうなってるんだ!?)


仲間達の報告に戸惑いながらも指示を出すキール。


「ジェシカは出口がある方向のゾンビに向かって“回復魔法”を放ってくれ!

ガープは空いた穴に突貫し道を切り開いてくれ!

ジンは俊敏の高い個体に警戒しつつ殲滅!

俺はジェシカを守りつつガープを追走する!

あのゾンビが来る前に突破するぞ!」


指示に従いジェシカが“回復魔法”を放つ。

そして、ガープがその穴を狙い突貫し、ジェシカの周りに守りが居なくなった。

『天馬の羽』の意識が通路から離れたその一瞬の時を待ち構えていたように、通路から、つまり禍々しい気配を放つゾンビが居た方から、ゾンビウルフが瞬時に突貫してジェシカの後ろから首元に噛み付いた。


がふっ と血を吐き出すジェシカ。

それに気付き、ジンがゾンビウルフに突貫し短剣を繰り出すが、ジェシカの背を蹴り後ろに飛ばれて躱された。

ゾンビウルフがバク転で一回転しながら着地した側には、あのゾンビと女型のゾンビが立ちはだかっていた。


血を吐きながら地面に倒れて行くジェシカを見たガープは雄叫びを上げた。


「!? ガープ! 止めろ! 行くな!」


キールが即座に指示を送るが、キールの言葉が届かない程に怒り狂ったガープは、雄叫びを上げながらゾンビウルフに突貫し大斧を振りかぶる。


だが、振りかぶり隙だらけとなった胴体に女型のゾンビからの強烈な正拳突きを放たれ、大斧を手放しながら真っ直ぐに吹き飛ぶ。


吹き飛んで来たガープを、キールが衝撃を受け流しつつ受け止め、ゾンビを睨み据える。


(クソっ! 逃げ切れなかったか!

ゾンビに挟み撃ちにあい絶望的な状況だが、やるしかない…)


「ガープ。まだ立てるか?」


無言でよろよろと立ち上がるガープ。その口からは血が滴り落ち、大斧はなく素手だ。

先程の女型のゾンビの一撃で内臓を傷付けられたようだ。


「ジン! まだ諦めてないか?」


「当たり前だ! こいつらみんなぶっ殺してジェシカを連れて帰還するんだよ!」


自らを奮い立たせるように返事をするジン。


「よし! 俺が何とかあのゾンビを足止めする!

ジンは異様に早いゾンビウルフを! ガープは怪力女型ゾンビを! 行くぞ!」


おう!!!と返事をする二人。

絶望的な戦いが幕を開けた。

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