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屍の王〜腐人から始まる転生譚〜(仮)  作者: エイム
第1迷宮
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禍々しい気配

冒険者『天馬の羽』視点です

「みんな、俺達も『紅蓮』に遅れないようにそろそろ進もうか」


『天馬の羽』のリーダー、キールが他のメンバーに声をかけた。


「んなこと言っても我らが『紅蓮』様は逸材なんだろ

? もうとっくにゾンビ大量発生の原因を突き止めて討伐してくれてるだろうよ」


「ジンさん。大人気ないですよ?

相手は私達よりも十個近く年下なんですから、生意気な所くらい大目に見てあげましょうよ!」


ジンの発言に反論した女性ジェシカの隣で、筋骨隆々の男ガープが頷いている。


「ちくしょ! どうせ俺には味方なんていませんよ」


「そう拗ねるなジン。

お前のシーフとしての腕を信用しているぞ。

今回もみんな無事に帰還しよう!」


キールはいつも言うことが少しズレてるんだよなぁ、と呟き頭を掻くが、気を取り直したように


「よし! じゃあ行くか!

あの小僧が入ってから少し時間が過ぎちまったしな!

先輩の偉大さを見せつけてやるとするか!

街に帰ったら酒でも奢らせてやるぜ!」


気合い十分で迷宮内に足を進める『天馬の羽』のメンバー達であった。



――――――――――――――――――――――――




「そこら中にゾンビの死体が転がってるな。

ゴブリンにラット、バットにウルフまで居る…

いくらゾンビ化した所で俺達には驚異でも何でもないが、これは異常だ」


『紅蓮』が薙ぎ倒してきた死体を目の当たりにして、異常事態をしっかり認識した『天馬の羽』のメンバー達は、油断なく慎重に足を進めていく。

その道中、キールが口を開く。


「ジェシカ。回復魔法は温存しておいてくれ。

異常事態の原因に遭遇した時はジェシカの魔法が戦闘の要になるはずだ」


「はい! 分かりました! MPは温存しておきますね!」


その様な会話をしると、広大な広間に出た。


「俺らも新人の頃はこの広間で訓練したもんだなー。懐かしいぜ」


「そうだな。あの時はゴブリンの群れに襲われて死ぬかと思ったな」


その発言に頷き返すガープ。 ジェシカはその時の事を思い出したのか涙目になっている。


「あの時はジェシカだけは逃がそうと必死にな…」


会話の途中で先頭を歩くジンが右手を挙げた。

止まれの合図だ。

キールが横に並び立ち問い掛ける。


「どうした。 原因が向こうから来たのか?」


「いや、脅威は感じないが群れがいるな。しかも、かなり大規模な群れだ。

俺はちょっくら偵察してくる」


「了解だ。 くれぐれも無理をするんじゃないぞ」


背中越しに手をヒラヒラと振って走り去っていくジン。

トラウマを思い浮かべた様に泣き出しそうなジェシカ。


「ジェシカ、大丈夫だ。

今の俺たちはあの時の数十倍も強くなってるんだ。

それに、お前の事はガープが何が何でも守ってくれるさ」


頷くガープを見て、頬を染めるジェシカであった。



そんなやりとりをしながら数分が経過したところで、ジンが戻ってきた。


「向こうはヤバイ。 ゴブリンの群れが200から300は居やがる。その中にホブゴブリンは30ほど。

しかもだ、何故かウルフも50は群れに加わっている。

その全部が、ゾンビだ」


その報告に驚愕する3人。


「本来ウルフはプライドが高くてリーダーが誕生するまでは群れないはずだろ?

それがゴブリンなんかと群れてるんだ。

それに、ウルフをゾンビ化できるゾンビなんてごく稀に進化するっていう上位種しか聞いたことがない。

突然変異って報告のゾンビは、もしかしたら進化したゾンビかもしれないぞ」


「待て、ジン。 最下級の迷宮で進化に至るゾンビが存在するものなのか?」


「んなこた分かんねーよ!

とりあえず、この広間の向こうはヤバイ。

幸い、かなり離れた所に陣取ってる。 その手前の通路を進むぞ」


今後の方針を決め、動き出す『天馬の羽』のメンバー達。

通路を進みながら先程の会話の続きをする。


「ゾンビの上位種はほとんど確認されたことがないんですよね?」


「あぁ。 そもそもゾンビの大元の腐人っていう種族が弱いからな。 この迷宮でも最弱だ。

その腐人が進化に至るまでの道程はほぼゼロだ」


「そのほぼゼロな事態が今この迷宮で起こってるかもしれないのか。 俺たち人間のランクが上がると急激に力が増すのと一緒で、モンスターも進化すると急激に力を増すと聞いている。

『紅蓮』が心配だ。 みんな、先を急ごう」


あんな生意気な小僧なんかほっとけば良いもんを、と呟いたジンは、その言葉とは裏腹に速度を急激に上げて進む。

そして、禍々しい気配を感じた。


即座に手を挙げ、停止を促す。

その挙げた手は、震えていた。


そこから通路を恐る恐る進み、50メートル程先の通路を目指すジン。

一歩進むごとに重圧が増えていき、残り5メートル程になると凄まじい吐き気を催していた。

それでも歩みは止めず通路を覗く。


そこには、護衛の様にゾンビウルフとゾンビを背後に従わせ、『紅蓮』だったであろう物の脳を喰らうゾンビが居た。

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