表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
屍の王〜腐人から始まる転生譚〜(仮)  作者: エイム
第1迷宮
16/54

失禁した

視点の切り替わりが複数あります

(冷静に考えたらそりゃそうだよな… 俺の魔力1だもんな…

これから育てれば良いんだよな! こうなったら特訓だ!

ポチ! ゾンちゃん! 実戦形式で特訓するぞ!

食料は腐るほどあるし“食再生”の準備も万端!

みんなで強くなるぞ!)


昂ぶる主人に呼応して昂ぶったポチはワオーーーンと高々と吠え、ゾンちゃんはゆらゆらと揺れ動く。


これから数日間に渡って特訓を始めるのだった。





――――――――――――――――――――――――






ある部屋の扉がノックされた。

その部屋は執務室らしく、部屋の半分はあろうかという大きな机があり、机には大量の資料が乱雑に置かれていた。

椅子に座りその資料に向かっていた、スキンヘッドで筋骨隆々、そして何故か上半身裸の男が返事をする。


「入れ」


扉が開かれ、タキシードを着用した黒髪で長身の男が入室した。


「ギルドマスター。報告がございます。こちらの資料をご覧ください」


ギルドマスターと呼ばれた男は資料を受け取り読み始める。

読み進めるに連れ表情が険しくなっていき、椅子の背にもたれかかり天を仰ぎながら大きく溜息をした。


「副ギルドマスター。何故、これほどの大ごとになるまで発覚しなかった?」


「申し訳ございません、ギルドマスター。

2日前に突然変異のゾンビを発見したというDランクの冒険者が居りました。


その冒険者はFランク冒険者パーティーの三名の指導役として『リキウス迷宮』に赴いた際に、第一階層徘徊階層主(ワンダリングボス)のウルフリーダーに遭遇。

一名を犠牲にし、逃げる際に一名と逸れ、捜索している際にそのゾンビに遭遇したと報告がありました。


突然変異のゾンビとの遭遇で重傷を負い、四日掛けて帰還後に報告を受け、翌日に調査依頼受諾パーティーを派遣、そのパーティーが先程帰還し報告を受けました。『リキウス迷宮』への到着は二日であったそうです。


即ち、僅か六日の間にこの様な事態に発展してしまいました」


そに報告に対しギルドマスターは再び重く長い溜息をした。


「調査パーティーが帰還に二日掛かっているとすると、更に異常が大きくなっている計算か。

ゾンビは最弱のゴブリンに並ぶほどの弱小モンスター。そのゾンビがDランクのステータスを破るか。確かに突然変異だな。


自然発生のゾンビは知能がほぼ無いが、“同種化”を使用されて生み出されたゾンビは生前と同じ程度の知識とステータスを持ち、痛みも疲れも感じない。

それらによって最低のランクFの、しかも第一階層に溢れかえっている…だと?」


「ギルドマスター。食事による再生能力を忘れております」


「やかましい!!! 現実逃避してたんだよ!!!

今動かせる最高ランクの冒険者パーティーはなんだ?」


「はい。Cランクパーティー『天馬の羽』と、同じくCランクのソロ冒険者『紅蓮』がおります」


「両方とも調査に向かわせろ。ギルドマスターからの依頼だ。断れば追放処分だと良い含んでおけ」


「畏まりました。そのように」


そう言ったあと、深々と礼をしたタキシードの男は退出した。




――――――――――――――――――――――――




最下級の迷宮『リキウス迷宮』の入り口に集った面々、『天馬の羽』と『紅蓮』がいた。

四人と一人が向かい合い、一人が口を開く。


「今回の調査依頼は合同って話だが、悪いが俺は一人で行動させてもらうぜ」


青年は赤髪に赤眼、赤のマントをし、赤の鞘に刺したグレートソードを背負っていた。


「おいおい、紅蓮さんよぉ。今回のはギルドマスター直々の指名依頼だぜ? そんな勝手な行動が許されると思ってんのか?」


四人の内の一人が言う。

男は坊主で無精髭を生やし、レザーアーマーを着用していた。腰には短刀らしき物を差している


「やめろ、ジン。

紅蓮には紅蓮のやり方があるんだ。 こっちはこっちで四人の連携を極めてきた。 それを崩せばお互いに命が危ないだろ」


四人の内のリーダーらしき一人が言う。

リーダーは金髪碧眼のフルプレートを着用し、左手にタワーシールドを持ち、腰にはロングロードを差している。


その発言に同意するように頷く二人の人物。


片方は四人よりも頭二つ分長身であり、ギルドマスター程ではないにせよ筋骨隆々。防御など考えていないかのような布製の服とズボンを着用し、大斧を背負っている。


もう片方は如何にも聖職者といった服装に身を包み、首には十字のネックレスをしていた。


「んだよ。キールはこのガキを買ってるみたいだが、先輩への礼がなってねーから教育しようとしただけだろ?」


「同じCランクだ。先輩も後輩も上も下もないだろ」


それに頷き同意する二人。


「くそっ! ガープもジェシカもキールの味方かよ!

はいはい。分かりましたよー。リーダーの意見に賛成しますよー」


「話はまとまったか?

だったら俺は先に行くぜ。 せいぜい最下級迷宮でくたばらないようにするんだな。先輩」


そう言い捨て、さっさと迷宮の入り口に足を踏み入れる青年。


「おい、キール。 やっぱりぶん殴ってきて良いか?」


「やめとけ! 若気の至りだ。

それに、俺達が十年かかったCランクに三年で、しかもソロでなった逸材だ。

そのためには苦難を乗り越えて来ただろうし、ソロの方が身動きも取りやすいだろうしな」


俺が言いたいのはそう言うことじゃないんだよな、と呟きながら頭をボリボリと掻くジンであった。




――――――――――――――――――――――――




一人で迷宮入りをした青年は、しばらく通路を進み驚愕していた。


「さっきから遭遇するモンスターがゾンビしかいない。

ゴブリンなんかはまだ分かるが、この迷宮の第一層で最上位のウルフもゾンビ化してる。

俺の敵じゃないが駆け出しの奴らには地獄だな」


それでもモンスターを斬り伏せ、奥に奥にと進んで行く青年。

そして、青年がソロでも生き残れた理由のスキル“危機感知“により、頭の中に警報が鳴る。


「なんだ? こんな最下級迷宮で俺の”危機感知“が反応するモンスターが居るのか…?

この通路の中央にある入り口の中。 あの中に強敵がいる」


青年は”気配遮断“を使い、通路を進む。

そして、入り口を恐る恐る覗く。

そこには、二体のゾンビと一体のゾンビウルフが居た。

その中のゾンビの内の一体の周囲上空に、無数の火の玉が浮かんでいる。

青年は、その一つ一つが自分を抹消し得る力を持っている事を感じ、即座にその場を走り去る。


「あれはヤバイ! 異様なまでの禍々しい気配!

残りの二体は何とかなるかもしれないが、あれは論外だ!

早くこの場から離れなきゃ…死ぬ…!」


しかし、時すでに遅し。

一瞬の動揺から漏れ出た気配を感知し、瞬時に追走して来たゾンビウルフに右脚を噛まれ転倒。

ゾンビウルフを左脚で蹴り離し、即座に立ち上がった目の前に、あのゾンビが居た。


これまで勇猛果敢に、時には命からがら逃げ、ソロでCランク冒険者まで成り上がった青年は、初めて恐怖により失禁をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ