完全に主従が逆転している
本日2話目です。
ご注意ください。
(さっきのやつで“傲慢”の対象には入っただろうし一体一体は弱いかもしれないけど、こうも数が多いとなー
どうしたもんか…
それに、よくみると何体かスラっとして大きいやつもいるな。ホブゴブリンってやつか?)
そこには、ゴブリンの群れに混じり、人間から奪ったのか、レザーアーマーにロングソードなど、冒険者風の装備をしたモンスターの姿もあった。
どうやら、それらのホブゴブリンがゴブリンの隊を組み指揮しているようだ。
ゴブリンの装備は様々で、刀身の短いナイフのようなものや粗末な槍、棍棒のような物を持っている。
(ポチ! 作戦はこうだ!
まずはMPが続く限り“同種化”でゾンビを作る!
そこから鼠算式に増えていくゾンビに紛れてホブゴブリンを倒していく! できるか?)
もちろん!という風にウォン!と返事をし、素早く群れに突貫していくポチ。
(いやだからポチ先生! 行動が早過ぎるんだってーーー!!!)
と言いつつ覚悟を決め、自らも突貫する。
そして、相手方はそれぞれのホブゴブリンが手にしたロングソードを天に掲げ、グギャーという声を出しながらロングソードを振り下ろす。
それを合図に、ゴブリン達が今までの隊列など関係無しに突貫してきた。
いち早く群れの一体に肉薄したポチは、先頭を走っていたゴブリンの棍棒を難無く躱し、噛み付き“同種化”を使う。
ポチに一歩遅れて到着し、ポチに槍を突こうとしていた一体を袈裟斬りにし、それに怯んだ周囲のゴブリンの一体に噛み付き“同種化”を発動。
続けざまに二本のロングソードを振り回して二体を葬る。
その間にポチは更に一体を“同種化”する事に成功していた。
ポチのMPは“同種化”二回分しか無いのか、そのまま牙と爪を使い次々とゴブリンを葬っていく。
そうしてポチと合わせて十体ほどを葬った時、“同種化”に成功した三体のゴブリンが起き上がった。
その三体に向け
(MPの続く限り“同種化”を使え。MPが無くなったら死骸を喰らいMPを回復させて“同種化”を使え)
と命令し、それに応じたゾンビゴブリン達は群れに襲いかかっていった。
(良し。 これでパンデミックの足掛かりはできたな。
ポチ!ゴブリン達が混乱しているうちに倒した奴らを喰って“食再生”するぞ!
それで回復したMPを使って更にゾンビを増やしていこう!)
ポチはウォン!と返事を返し、言うが早いか近くのゴブリンの死骸を喰らい始める。
ポチに続き死骸を喰らい、“物質吸収”のために脳をも喰らい、身体が淡く発光するのを感じた。
(よし! 新しいスキルを手に入れられたみたいだな。
流石に今は確認してる余裕はないし、さっさとゴブリン達を片付けるか)
ポチも“食再生”が終わったのか、次の指示を今か今かと待っている様子であった。
ゴブリン達の方を見ると、先程のゾンビゴブリンに噛まれビクビクと痙攣しているゴブリンが三体転がっている。
仲間だったものに襲われ更に混乱し、最早恐慌状態に陥っているゴブリン達を必死にまとめようとしているホブゴブリンが目に入った。
(ポチ。 一番近くにいるホブゴブリンを襲って動きを止めてくれ。
その隙に俺が葬って“傲慢”の特攻対象を増やせばこの後の戦いは貰ったようなもんだ。
できるか?)
ポチは自信満々でウォンと返事をし駆けていく。
それに続き駆け始め、恐慌状態のゴブリン達の間を抜け、進行に邪魔なゴブリンは斬り伏せていく。
ホブゴブリンの近くに到着すると、既にポチが交戦を始めていた。
ホブゴブリンは右肩が噛み千切られ、左胸から右わき腹に掛けて裂傷している。
ホブゴブリンを助けようとポチの妨害に入ろうとしていた周囲のゴブリンに肉薄し、二本のロングソードを左右に広げて回転斬りをして数体まとめて葬る。
ホブゴブリンを見ると右膝から先が無くなり、地に倒れ伏し、虫の息だ。
ポチはホブゴブリンの胸に両前脚を乗せて凛と立ち、ドヤ顔でこちらを見つめ、ワフッと鳴いた。
どうやら組み伏せているホブゴブリンに早くトドメを刺せと言っているようだ。
完全に主従が逆転しているように思えるダメ主人だ。
(ポチ先生… 動きを止めてって言ったけども…
まぁ、良いか。 ありがたく獲物を貰おう!)
と開き直り、ホブゴブリンにロングソードを刺し絶命させた。