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巻き込まれて異世界召喚、その果てに  作者: ねむねむ
五章 勇ある者
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エピローグ

これにて第五章終了です。

 エルミナ王国西域南部ゲトライト平原。

 総司令官であるアレクシア第一王女を討ち取られ、直後に本陣を飛び出したジル副官を捕らえられた西方軍は、中央、南方連合軍へと降伏した。

 勝利に沸き立つ連合軍の陣地――その中心にある大天幕では、立役者である勇者二人とモーリス将軍、他にも幕僚たちが今後について話し合っていた。


「ひとまず西方軍がこれ以上仕掛けてくることはないとみて良いでしょうな」

「そうですね。新たちの方も戦いに勝ったようですから」


 モーリス将軍の言葉に勇が頷く。

 先ほどアンネ将軍がよこした伝令が訪れ、エレノア大将軍率いる西方軍に勝利したと伝えてきた。これによって此度の西方征伐は完了したと言っていい状態になっていた。


「後は戦後処理だが……進行状況はどうか」

『それについては私からご報告させていただきます。……まず、ここゲトライト平原ですが、昨日周辺の貴族に要請していた私兵が到着し、本日から死体処理などに当たってもらっています。また陣地撤収にもご協力いただいていますので、この調子で進めば当初の予定通り五日後には完了する見通しです』


 と、幕僚の一人が報告書を片手に説明すれば、満足げな雰囲気が広がる。

 モーリス将軍もそれは同様のようで、頷きを示している。

 そこで今度は勇が質問を発した。


「北方の戦況はどうなっているのでしょうか?」

『そちらについては以前として膠着状態が続いているとのことです。しかしルイ第二王子が本隊から離れて行動を始めたことなどから近いうちに何かしら動きがあるものと思われます』

「そうですか……なら問題はなさそうですね」

『はい、アンネ将軍率いる中央軍もつつがなく戦後処理が進んでいるようで、近日中には王都へ向けて出立できそうだと伺っております』

 

 懸念事項であった北方の戦況であるが、どうやらそちらに決着がつく前に王都へたどり着けそうだ。

 これならば問題はない。後はアンネ将軍率いる軍勢と合流し、王都防衛に当たれば良いだけだ。今回の戦争で兵力は確かに減少したものの、大打撃を受けているわけではない。戦後処理や治安維持のために西方に兵を残したとしても七万は動かせる。さらにこれまで日和見に徹していた貴族らも今回の勝利を受けてオーギュスト第一王子陣営への参加を表明することも期待できるため、現段階で十万にまで膨れ上がることが予想されていた。


「北方と東方……どちらが勝っても消耗は免れない。ならば我々はゆっくりと行軍し英気を養いつつ王都へ向かい、勝利した方を叩けばよいわけだな」

『そうなるかと。それにこちらには勇者さまが四人もおられますから」


 此度の戦いで勇者たちは鮮烈な初陣を飾った。彼らの圧倒的な武威があればこその大勝であったことは誰の眼にも疑いようのない事実である。

 故に誰もが期待の眼差しを向ける。それを受けた勇は誇らしげに頷いた。

 もう一人の勇者である明日香は静かに彼らの眼差しを受け止めるだけに留まる。

 いつもなら何かしら言動があるはずだが……と勇が訝しむも、明日香はただ一言呟くだけ。


「大丈夫、戦って勝つ。いつも通りの……ただそれだけなんだ」


 戦争において敵を殺して勝利するということは、その敵の夢を打ち砕くということでもある。

 分かってはいた。けれど理解はしていなかった。

 故に明日香は己が確かに砕いた第一王女(アレクシア)西方の四大貴族(ジル)の夢の残響を受けて、わずかながら動揺していた。

 だが、しかし――それでも。


「それでも、私は――〝勝つ〟んだ」


 誰かの夢を殺してでも、己が夢を叶えたい。燃え上がる闘争心が次なる戦いを欲してやまないのだ。

 多くの願いを摘み取ってきた手――誰かの血で染まった掌に視線を落とした明日香は。


「いつか〝天〟を墜とすその日まで、私が止まることはない」


――微かに口角を上げた。

 その変化に、狂気に気付く者はいない。今は――まだ。

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