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巻き込まれて異世界召喚、その果てに  作者: ねむねむ
九章 明けぬ夜
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プロローグ

長らくお待たせ致しました。

第九章〝明けぬ夜〟始まります。

 光とは素晴らしいものだ。

 万民を照らし導く輝き、暖かに包み込む慈愛の煌めき、希望を抱かせる太陽だ。

 

「――だが、その光が強ければ強いほどに生み出す影もまた深く、濃くなっていくものだ」


 世界に名を馳せる偉大なる国家――千二百年もの永い年月、繁栄を謳歌してきた。

 輝かしい功績、胸を打つ美談、称賛される戦果を挙げている。

 だが、その一方で国家を繁栄させる為に裏で行われてきた行為というのは表には出せないようなものばかりだ。


「密告、処刑、暗殺、裏切り、拷問、虐殺、迫害……歴史が永ければ永いほどに闇も深くなる」


 声の主――仮面の男は僅かな照明器具に照らされた廊下を歩いていた。黒衣に身を包み、腰には黒刀を吊り下げており、眼を離したら最後、周辺の闇に同化されて消えてしまいそうな儚さを感じさせる。

 けれどもその身から発せられる覇気は隠しようもないほどに強大であり眼を離せない。

 儚さと力強さ、相反する性質を持つ男は闇を畏れることなく真っ直ぐに歩を進め目的の場所で立ち止まった。

 眼前には武骨な扉――隙間から苦痛に満ちたうめき声が漏れ聞こえてくる。

 男はその声に嘆息すると躊躇いなく扉を開け放った。


「……やりすぎないようにと言ったはずだが?」


 扉を開けた瞬間感じたのは鼻を突きさす鉄の匂い――血臭だ。

 彼は思わず仮面の下で顔を顰めた。次いで視覚で捉えるのは部屋の最奥に居る二人の人物の姿である。

 片方は白衣を身に纏った白髪翠眼の男だ。細身の体躯は着衣と合わさって何処か病的に感じるものがある。

 その男は部屋に入ってきた仮面の男の言葉に反応を示さなかったが、彼が殺気を向けてきたことで我に返って振り向いた。


「……おや、これはシュバルツ殿下ではありませんか。何故ここに?本日大帝都を発たれると伺っておりましたが?」

「その前に()の様子を見ておきたくてね。それにキミが僕の言葉をちゃんと守っているか確認したかったというのもあるけれど……その様子だと守れていないみたいだね」


 仮面の男――シュバルツがそう指摘すれば、白衣の男は大げさに肩をすくめて見せた。


「これは誤解ですよ、殿下。ワタクシは殿下のお言葉を守っていましたとも!ですが、コレ(、、)が中々に非協力的でしてね。つい、ワタクシもムキになってしまったというわけで――」

「〝博士〟」


 たった一言、シュバルツが白衣の男の二つ名を呼べば彼は黙り込んだ。その声音に宿った苛立ちと殺気に気づいた為である。


「次はない。……分かったのなら出て行ってくれ。さっきも言ったけれど僕は彼に用があるんだ」

「…………承知致しました、殿下」


 明らかに承諾しかねるといった色合いが声音から漏れていたがそれを指摘することなくシュバルツは〝博士〟が立ち去るのを待った。

 それから彼が実験していた相手に近づく。身に纏う貫頭衣は度重なる拷問じみた人体実験の所為で破れており至る所から血が滲んでいる。

 両足の爪は全て剥がされており、右手もまた同様だ。左手はそもそも肩から先がないため存在していない。

 その白髪の少年の顔は下向いている。想像を絶する苦痛に精神が破壊されてしまったのだろうかと一瞬不安になったシュバルツだったが、直後少年がうめき声と共に顔を上げたことで杞憂であったと悟った。



――黒と青紫の虹彩異色の双眸には意思の光が宿っている。反骨心と殺意に満ちた荒々しい光が。



 その瞳を見たシュバルツは仮面の下で安堵の息を零すと敵に向けるにし(、、、、、、、)てはおかしなほど(、、、、、、、、)優しい声を発した。


「ノンネからキミの素性を聞いて思い出したことがあるんだ、二代目〝白夜王〟……いや」


 そこで言葉を切ったシュバルツは古き友の名を告げた。


「僕の親友――間宮夜光」

更新停止が長らく続いた理由等につきましては活動報告の方に記載させて頂きましたので、宜しければご一読下さい。

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