朝霧
高原の朝は冷え込んだ。もう冬の装いを始めた木立の中は落ち葉で満たされ、薄く霧が立ちこめている。
速水が目を覚ます時間はたいてい六時くらいで、軽くジョギングをするのが日課だった。
横で小さな寝息を立てている妙子を起こさないよう静かにベッドを抜け出し、トレーニングウエアに着替えジョギングシューズを履いて外に出た。吐く息が白くなる。ここはもうすぐ冬なのだ。
軽くあたりを一周しコテージに戻ると、ベッドに妙子の姿はなかった。お風呂だろうと思い、ドアごしに声をかけると、
「いいお湯よ、裕輔も入ったら」
と返事があった。天然温泉が各棟に引かれているので風呂もゆったりと作られている。
妙子は髪を巻きタオルで縛り上げて、手足を伸ばし、まったりとしている。
「すご~くいいお湯。もー溶けちゃいそう」
「朝から温泉とは、贅沢だよね、イギリスには無いよ」
「そーよね、やっぱ日本人はこれよね~」
二人で向かい合ってもあと二人は入れそうな湯舟につかり、思わずにこにこしてしまうが、速水は妙子に近づいて、「おはよう」と軽くキスをした。
「うーん、おはよう。裕輔、おひげ痛ぁい」
「あ、ごめん、ごめん」
ひげはまだ剃っていないので、妙子の肌に当たると痛がる。軽く胸にタッチすると、「ふふ、お元気なんだ。」と速水を握り返してきた。
「良く眠れたみたいだね」
「えー、おかげさまでぐっすりよ」
「それは良かった。お腹は空かない?」
「すごーくペコペコ」
「じゃ、二人で作ろうか」
「気分的には、裕輔の作った朝食をベッドの中で食べたいなー」
「おやおや、お姫様ごっこですか?」
「今朝は身体がだるくて、甘えたいの……」
「はいはい。じゃ先にあがるよ」
「うれしい」 Chu!
妙子には腰のあたりに昨夜の余韻がけだるく残っていた。それにいつもはまだ寝ている時間でもあり、身体が反応しないこともあった。
ベッドに戻りブランケットにもぐり込むと、コーヒーの香りがただよってきた。そのうちベーコンを炒める音や、卵を溶く音が聞こえてくる。いつもは妙子が速水に準備するのだが、まどろみながらその気配を感じることは心地良かった。
「妙子、準備が出来たよ」
速水がベッドサイドへプレートに乗せた朝食を持って来てくれた。ベーコン入りのオムレツにレタスのサラダ。こんがり焼けたトーストに高原牛乳のカフェオレ。
「うわー幸せ」
速水のパジャマの上だけを着た妙子は単純に喜び、マグカップを手に取った。カフェオレを一口飲んで、速水の目を見つめた。
「裕輔、ね、すごく幸せよ、夢を見ているような気持ちなの」
「ね。……裕輔……さん。今日から裕輔さんて呼ぶわ。ネ、裕輔さん」
「どちらでも良いけど、僕は」
「裕輔さん、一緒に食べましょ」
ベッドに腰をかけ、速水は妙子の口にサラダをつまみ、運んだ。
少し短めでスミマセン。次の次くらいから、第二章。
あいかわらずエロは抜き。(R18に載せるかも)




