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萩の夢  作者: kei
16/21

契り

少し短めですが・・・

結婚式の前に私は祐輔さんの友人の勤めている総合病院に入院し再検査を受けた。そして、やはり結果はクロであったが、二人の要望で、ある処置をしていただいた。祐輔さんの友人の口添えもあって、スムーズに運び式の前には退院できた。


 式は浜田夫妻、由佳さん、母、妹、弟、東京の叔母、お茶の先生とさおり、祐輔さんの友人が二人、部下の村上さんの十二人が見守る中で静かに行われた。

 旅館の手配で離れに神棚が作られ、二人で書き上げた誓詞を奉じた。そのあと、振袖姿の由佳さんと沙織が三三九度の杯を私達に渡しお神酒を注いでくれた。

 式次第は旅館側で準備してくれて列席者の前にそれぞれ置かれていたため、本当に静かに進められた。


 浜田部長の高砂が始まるころ、庭に面する障子が開けられ、薪が焚かれた。部長の謡いは涼しげに庭に朗々と響きわたり、奥様が仕舞を舞われた。いつもの砕けた会話をなさる方とは思えないほどに見事なものだった。

 謡いが終わると、懐石の膳が出され、お酒も振舞われたため、座が和んできた。母が浜田部長や祐輔さんにお酒を注いでお礼を述べている。

 少しして、旅館のおかみが芸子さんを連れて屏風を背にし、舞いを舞ってくれた。お三味線と鼓は芸子さん、おかみは日本舞踊も名取なので、凛とした美しい舞だった。

 その後、由佳さんが恥ずかしいのですがと前置きし、琴を奏でてくれた。まだまだです、と奥様がフォローを入れてくれたけど、とても初々しく感激した。

 懐石もそろそろ終わりに近づき、お茶の先生がお薄を立ててくれた。庭園に焚かれた薪に照らされ、式の様子は旅館のロビーからも見えたため、お客さまたちも遠くから見ることが出来た。多分何かの撮影と思われたに違いない。

 私はお色直しをせず奥様の介添えで祐輔と一緒に皆様に固めの杯を差し上げた。式は本当に静かにお開きとなった。

 私と裕輔さんが仲人の介添えで退席し、玄関で皆さんにお礼を申し上げお見送りした。

 障子が閉められ、最後に仲人ご夫妻に二人で丁寧なお礼を述べた。そして改めて裕輔さんに向かい、三指をつき、

「ふつつかですが、末永くかわいがってくださいませ」

と口上すると、

「僕の方こそよろしくお願いします」

と答えてくれた。

 奥様はまるで自分のことのように感激され涙ぐんでいた。

 本当に静かだけれど心のこもったお式だった。


 その夜は、旅館に泊めていただくことにしていた。皆が帰り、ゆっくりとお風呂に入った。部屋付きの露天風呂のため、裕輔さんと一緒に入った。

「静かで、いい式だったね」

「そうね、みんな浜田さんのおかげね」

「旅行から帰ったらご挨拶にいかなくては」

 入院や式の準備でしばらく裕輔さんとは離ればなれになっていた。やさしく静かに抱かれ、私は裕輔さんのお嫁さんになったことを実感した。

 いつまでもこの時間が終わらなければと願った。




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