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萩の夢  作者: kei
11/21

二章 夢現

第一章は祐輔視点で書きましたが、第二章は妙子視点です。

婚約して、二人の愛はどうなっていくのか・・・

ご期待ください。

二章




 目を覚ますと、隣にいるはずの裕輔を必ず確かめる。普段の日はなるべく泊まらないようにしているのだが、どうしても会いたくなってしまうと押しとどめられない。二時になって速水のマンションのドアをそっと開けて、シャワーを使い、裕輔の隣にもぐりこむ。少し寝ぼけながら、裕輔は私を抱きしめそのまま眠りにつく。

ふざけあって、盛り上がる時もあるが、大抵は今夜のように、抱きしめられて眠りにつく。幾分もの足りない……。

『裕輔のバカ、抱いてほしいのに……』

 と思いつつも、肌のぬくもりを感じ、いつのまにか眠りについてしまう。しかし婚約してからは、以前悩まされていた不眠症から開放された。

 朝はすでに裕輔は仕事に出かけている。起きて食事の用意をと思うのだが、朝に弱いのでなかなか起きられない。普段の裕輔は朝食をコヒーだけで済ませるので、それほど苦にはならないのだが、それでもなにかしてあげたい。

 今日も目覚めた時には裕輔はすでに出かけていた。右側に残された枕と祐介の匂い。煙草の香りと、ほのかな体臭。少しへこんだ枕を抱きしめる。

「おはよう、裕輔」

 声に出してみる。ベッドサイドの写真立てに二人の写真がある。そばに置いた携帯電話にメール着信のシグナルが点滅している。いつものモーニングメール。

『おはよう、今日は早く終わるから食事しよう。六時にいつものところで』

 そのまま母に電話をいれる。

「あ、お母さん、おはよう。うん、遅くなったから裕輔さんの部屋に泊まったの」

『だめよ、裕輔さん仕事なのよ』

「分ってます。お洗濯して買い物して、まっすぐお店にいくから……」


 婚約して速水の部屋に妙子の荷物は増えていった。

『早く一緒に住めば? そのほうが楽でしょう』

 母にいつも言われるが、すれ違いになってしまうことと、病気へのこだわりがつかえになっていた。

 振り払うように起き、シャワーを浴びる。部屋着を身につけ、自分と裕輔の洗濯を始める。

『シーツも洗おう、それとワイシャツにアイロンをかけてと……』

 買物は、食料と花か、玄関の花がしおれていたっけ。裕輔のいない部屋で、なんだかんだと用事がある。

 ビスケットとサワーチーズを皿にのせ、マグカップにカフェオレを作ってダイニングに座る。

開け放ったベランダから爽やかな風が入ってくる。


『専業主婦ってこんな感じかな? これじゃ持て余すョ』

 洗濯を終わらせ、軽く化粧して買い物に出かける。マンションから歩いて十分くらいの商店街に食料と化粧品、いつもの花やさんで好きなカサブランカを買う。

 店のアルバイトの若い女性とも顔なじみになってしまった。この子は私が何をしているのか興味があるらしく必ず話し掛けてくる。

 帰り道を遠回りなブティックのある通りにして、ウインドを覗き歩いていると、ウエディングドレスがディスプレイされている店があった。白く輝くドレスに見とれていると、後ろに立った人影が「ウホッ」と咳払いをした。驚いて振り向くと裕輔が立っている。

「あれ、どうしたの!?」

「ちょっと営業の帰り。妙子こそ……これにする?」

「いえ、そうじゃなくって、これを着る日がくると思うとなんだか目が離せなくって」

「そうか、いろいろ決めなくちゃいけないね、お茶でも飲もうか」

「時間、いいの?」

「ああ、三十分くらいなら大丈夫」


 近くのカフェテラスに入った。ここはハーブティがおいてあるのでよく立ち寄る店だった。カモミイルティとパウンドケーキを注文し裕輔はコロンビアストレートを頼んだ。

そういえば、コーヒーが切れかかっていたのを思い出し、帰りにここから買っていこうと、それも御願いした。

 裕輔は先ほどのことが気になるらしく、

「やはりウエディングドレスだよね……」と切り出した。

「いいのよ、裕輔さんが好きなので、私は」

「それは違うでしょ、妙子が着るんだよ」

「裕輔さんはどちらがいいの?」

「両方、っていうか白無垢も見たいしな~」

「じゃ両方にする」

「式はどうするの……」

「ライスシャワーもいいし、式場しだいかな~」

「はいはい」

 裕輔はだんだん面倒くさいといった雰囲気になってきた。こうなると、この人どんどん気持ちが離れていくのよね~。女の気持ち、わかっているくせに。

 本当は白無垢がいい。お茶の会の友人も呼びたいし、いっそ茶席にしようかな、大変かな……。

「お~ィ、妙子さ~ん、戻っておいで~」

あ、いけない。私もはなれちゃった。

 店を出て大通りに向かう道で裕輔を見送った。小さく手を振る裕輔に、思いっきり手を振ってあげた。

『ほんとに面倒くさがり。あれで良く結婚してたよネ。不思議……』


 部屋に戻り花を取り替えた。白いカサブランカとかすみ草はお気に入り。気持ちが晴れやかになる。

 今日の服装を考えながら髪のセットにとりかかる。和服の時以外は大体自分で準備してしまうので一通り二時間くらいはかかってしまう。アクセサリーを選んで鏡から離れると五時を回っている。約束のカフェまで十五分くらいだから、そろそろ行かなくてはならない。

 待たせると機嫌悪くなるのよね、裕輔は。


 JAZZの流れるカフェ、いつも待ち合わせに使っている店。すっかりおなじみになってしまった。

「おはようございます。」と黒のサロンを巻いたアルバイトさんまで業界挨拶。裕輔が来るまでに、さおりに開店の御願いの電話をしておく。

『はあ~い。ごゆっくり!』さおり、少し嫌味はいってない?

 裕輔が入ってきた。少し疲れてる?

「お疲れさま~」 「そうでもないよ」

「何、食べようか?」 「そろそろ鍋かな」

「文也の店?」 「いいよ」

 弟の文也も裕輔のこと、気に入ってるみたい。兄貴みたいに思っているようだ。そうよね、姉が二人じゃ兄貴も欲しくなるよね。一応、電話しておいたので考えてくれてると思う。


「いらっしゃいませ!」

 暖簾をくぐり引き戸を開けると威勢の良い声がかかる。板長も顔を出して「いらっしゃい、速水さん」と挨拶してくれる。裕輔もすっかりなじみになって、仕事でも使ってくれているので大きな顔ができる……。


 文也に鍋を頼み、ビールをもらう。

「お疲れさま」

「妙子はこれから頑張って」 

と乾杯。

 金目鯛の鍋を取り分け、二人で箸をつける。食べ物の好みが同じなのは本当に良かった。

「二月に北海道に出張がありそうだけど、妙子一緒に行くかい?」

「うわー、行きたい! 蟹シャブ食べたい」

「仕事は金曜だから、一緒に行くなら金・土休みだよ。帰りは日曜の午後になるけど」

「大丈夫よ、二月は暇だから」

「僕の故郷に足を延ばしてもいいかな」

「裕輔さんの故郷って網走の近くよね、寒そうね」

「流氷が来てなければそうでもない」

 裕輔の生まれ故郷の町はオホーツク海に面した小さな町だった。両親はすでに他界したと聞いている。身寄りもいない町に、しかも真冬に行って見たいなんて、何考えてるんだろう。

「うん、しばらく冬に帰ってないので良い機会だから……」

私の顔色を察して言い訳するし、何かあるのかしら。

感想、ご意見、いいね、お待ちします。

R18はムーンライトノベルにイイトコロをたま~に。

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