俺とお披露目会
見せられたのは大きさだけが取り柄の雪だるまだった。
「わぁ、へたー」
「笑うな!」
「だって面白いもん」
恥ずかしくなったのか春樹は雪だるまを体全体を使って隠した。
「てか、冬花のを早く見せてよ」
すると冬花は森の方を向いた。
「私の作品はここから少し距離があってね」
冬花の言っている事がよく理解できない。
「どういうこと?雪だるまだよね?」
「まぁ来て」
冬花は春樹の手を握り森に向かって走った。
「お、おい」
冬花に身を任せて森に入る。
懐かしいな。昔よくここら辺で遊んだな。この森の先は何があったっけな。
過去の記憶が走馬灯のように流れる。
森といっても緑は無いので木が無数に立っているだけだ。しかし、木と雪に囲まれるだけでも幻想的な世界に思える。
土を覆う白い雪には靴のスタンプが二つずつ押され、それもまたアートのようだ。
「あとどのくらい歩くんだ?」
冬花は目的地を向いて「んっ」と一言。先を知ろうにも雪が降っているのと木が邪魔で遠くまで確認できない。
すると目的地に近づいたのだろう、冬花は優しい声でいった。
「目を閉じて」
その言葉に春樹は意味も分からずドキドキした。冬花言う通りに目を閉じ冬花の誘導に従う。
もうしばらく歩いた後ーー。
「もう開けていいよ」
目を開けようとすると「ビュー」と強い風が吹いた。
視界には思いがけないものが飛び込んだ。
光の粒達と夜の暗闇がコントラストを生み出し、背景には星と月が輝いていた。
「っす……げぇ」
静かな地面に座って、景色を眺めた。
「綺麗だね」
「だな」
「ねぇ、この景色覚えてない?」
「え? いや、なんかあったっけ?」
「いや、覚えてないならいい」
何か有り気な顔は何処か悲しげで春樹の顔を曇らせた。
「・・・・・・あ、そういえばーー」
「ーーごめん。私帰るね」
「え? 何言ってんだ。お前家なんか無いだろ」
冬花様子がおかしい事に気づく。
冬花は「バカっ」その言葉を残し走り去る。瞬間的に冬花の手を握り、振り切ろうとする力に反発した。
冬花の肩を握りこちらを向かせる。
「どうしたんだ」
その声に刃向かうようにして春樹の顔をキッと見る。
冬花の目からは雫が少し垂れた。するとまた冬花はそっぽを向く。
それに驚いた春樹の手の力は失われ、その間に冬花は雪景色に消えていった。