俺と名前
〜次の日〜
冬休み。それは最悪な冬の季節の救いとも言える連休だ。
朝目が覚めて時計を見ると10時だった。しかしまだ少し眠い。今日は一日中何もないし親も仕事でいない。
「って事で、こたつに入ってお休みーー」
ゴンゴン
「・・・」
ゴンゴンッ
窓を叩くような音がする。風か?いや、風にしては音が大きい気がする。
「うるさいなぁ」
窓をみると見覚えのある黒い瞳がこちらを覗く。
「きたのか」
窓を開けてみると、ビューっと強い風が吹いた。
「来ちゃった」
冬の印象に似つかわしく無い笑顔は寒さを紛らわせるほど温かい。
まさかくるとは想像も付かない春樹は疑問を投げかけた。
「なんで俺の家知ってるの?」
「だって春樹が約束破りそうだったらから」
俺ってこんなに信用無いのか。
「春樹の家までつけてたの」
「そ、そうか」
ストーカーって奴か。
「で、早く外に出てきて」
こんな寒い日に朝から外に出るなんて自殺行為だ。しかし、せっかく来たんだから逃げたら可哀想だろう。
本当は嫌だが、しぶしぶ付いて行くことにした。
昨日に負けず劣らずの寒さは、まだ慣れなくて常に俺は身を震わせる。
「で、名前考えて来た?」
にこやかに聞いてくる。
「も、もちろん」
もちろん考えてない。
どうすっかな?ーーと考えていると、たまたまそこに花が咲いているのが目に付いた。
これだーー。
「冬花・・・ってどうかな?」
まぁ適当だ。
「いい名前だね」
「え、本当?」
「なら、私の事は今度から冬花ってよんでね」
「え、あ・・・うん」
自分で付けた名前とはいえ、女の子の名前を呼ぶなんて。嬉しいけど恥ずかしい。
「なら、ふゆ・・か」
「なぁに?」
笑顔が可愛過ぎて辛い。俺死ぬのかーー?寒さを忘れて顔に火がつくほど恥ずかしい。それに耳まで真っ赤だ。
そういえば冬花に気を取られて本題を聞くの忘れてた。
「何で今日呼んだの?」
冬花は堂々と話した。
「雪遊びってのをしてみたい!」
「雪遊びか・・・」
イメージと違って結構わんぱくだな。もっと大人しい子だと思ってた。
「雪合戦ってのをしてみたいの」
「雪合戦かぁ。ルールわかってる?」
「もちろん。雪が降る中でやる軍隊同士の大規模な戦闘のことでしょ?」
「ごめん。俺の知ってる雪合戦と違う」
自分が知って知識と違ってすこし混乱してるようだ。
「雪合戦は雪の玉を相手に投げつけて遊ぶ遊びだよ」
「なんだ迫力ないね」
冬花は白けた感じで話を聞く。
「第一、銃なんか使ったら俺の体、蜂の巣だよ」
春樹は思い出したように聞く。
「あ、でも、やるなら夕方か夜にしない?」
「なんで?」
「冬花って人には見えないんだよね?」
「そうだけど」
「・・・下手すれば俺、不審者として警察に逮捕されるかもしれないから」
冬花は他人事と思っているのか『だねぇ』って言って笑った。俺としては笑い事では無いが・・・。
「なら、また夜に来るよ」
「・・・うん」
ドアを開けると天国だ。こたつはあるし、ミカンもあるもう動けないや。いつもならここで寝るんだが、今日は何故かそんな気分じゃ無い。冬花と遊ぶのを楽しみにしている自分がいる。眠くないしテレビでも見ながらゴロゴロするか。
あれ?いつの間に寝てたんだ。気がつくとこたつのテーブルの上に伏せて寝ていた。慌てて時計をみるともう夜の9時だ。
「やべっ」
慌てて起きて、急いで玄関に向かった。もう親がカレーを作り終えてて、その匂いの誘惑に負けそうになったが構わず駆けた。
「ハル、ご飯は?」
「ごめん今急いでるから」
親を尻目に春樹は一目散に駆けていった。