表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/31

第16話 その事象は収束《させる》【ジャンル:アニメ】

 楓が夕食後リビングのテレビでアニメを見ていた。それは未来から来た主人公の孫の孫が自分の現状を変えるために、主人公のいる時代までやって来て主人公とヒロインの中を何とかくっつけようとするドタバタもので、なかなかの長寿番組だった。

「これはどういう設定なんですか?」横で見ていた姫が楓に聞いてきた。

「主人公はダメ女とくっついて未来まで返済のかかる膨大な借金をこしらえてるんだって。そのせいでその子孫は苦しい生活を強いられてるんだとか。それを無くしてもっと幸せに生きたい、だから主人公にそんな女よりヒロインと結ばれるのを勧めてるんだって。」

「へえ、大変なんですね。」

「らしいのよ。それで、主人公とヒロインは月とスッポンの差があるから、何か別次元の介入がないと無理とか。それでタイムスリップして子孫がやって来たって設定らしいよ。」

「そうなんですか。(どの世界も大変ですね。)」姫は素直に聞いていた。

 その会話を耳にして、シンはふと疑問が生まれた。待てよ?主人公の結婚相手が変わるのなら、その子供の遺伝子配列の1/2が変わることになる。孫は1/4、ひ孫は1/8、玄孫である子孫は1/16。それってかなり大きな差じゃないのか?外見はもちろん、人間性まで変わるんじゃ・・・。疑問が大きく膨らんでいった。

 これは確かめる価値がある。他にも気になることがあるし。そう考えて、放送途中なのに録画ボタンを押すシン。途中からの録画なんて変なの、楓はそれくらいにしか思わなかったが、姫にはシンの考えが伝わっていた。



 録画しておいたアニメを再生・一時停止し、その世界に入ったシンと姫。そこには、主人公の部屋で座って待っている主人公とその子孫の姿があった。驚いたのは、初めからシン達が来るのを分かっていたらしかったことだった。

『本当に来たな。』主人公が言った。

『僕が相手するので、君はここで待ってて。すぐ戻るから。』子孫が主人公に言った。

『分かった。気を付けて。』主人公は立ち上がって見送ろうとする。

 二人が呆気にとられていると、子孫が傍に来てこう言った。『ここで話すのはなんですので、未来の僕の部屋に行きませんか?その方がお互い都合がいいでしょうし。』

「いいですけど、何でまた・・・。」シンはまだ困惑していた。

『さあさあ行きましょう。』そう言って主人公は腕時計みたいなものを操作した。すると空間に丸く虹色に輝く円盤が浮かび上がった。

『ここがタイムマシンの入り口です。遠慮せずに乗って下さい。』言われるままに入り込む二人だった。



 そこは四次元空間だった。その中にカプセル状の乗り物が一台浮いていた。そこに子孫とシン、姫が乗り込んだ。

『それでは行きますよ。』子孫が言うと、外の空間に浮かび上がっているオーロラのようなものが後ろに流れていった。どうやら移動しているらしい。

『四次元空間は、三次元空間が時間軸を介して連続しているものなので、あのようなオーロラのような虹色になってるんです。』人が過ごしている三次元は、時が経つと微妙に変化する。その過程を重ねて映し出した結果がオーロラなんだそうだ。

「それにしても、なぜ私たちが来るのが分かったんですか?」姫が子孫に尋ねた。

『それは彼のタイムレコードに記録されていたからです。超重要事項として。』

「タイムレコード?」シンがおうむ返しをした。

『彼の人生の履歴のようなものです。細かく書かれているのですが、僕の時代になっても大まかなことまでしか読み取れないのです。』

「アカシックレコードの個人版ですね?」

「ん?」シンが首をかしげた。

「過去現在未来に起こるありとあらゆる出来事を記録したものです。予言者たちはそれにアクセスして未来を読み取っていると言われています。」姫が説明した。

「なるほど。」分かったような分からないような。

 暫くして、光る丸いものが目の前に現れた。『さあ着きましたよ。ここが出口です。足元に気を付けて。』シンと姫は未来世界に降り立った。



 なかなかオートマチックになった子孫の部屋。空調から光の加減、壁に映し出される風景まで、なかなか近未来的だった。しかし窓もちゃんとあり、外を見ると緑で覆われた大きな公園がいくつもあった。子孫が暮らす部屋はその中に立つ高層マンションの一室だった。

「未来でも緑はなくならないんだな。」シンが呟いた。

『やはり自然は人間生活から切り離せませんから。植物を育てる手間も、未来では趣味の一環なんですよ。』

「へえ。」シンは素直に感心した。

『それで、聞きたいことがあるのでしょう?』子孫は本題を切り出した。『恐らくご先祖様が知ってはまずいことが。』

「はい、」シンが話し出した。「俺達はこことは別の世界から来ました。この世界は、俺達の世界ではアニメとして放送されています。」子孫は別段驚かなかった。未来ではそういう事も想定内なのだ。シンは続けた。

「そこでは、あなたは自分の現状を変えるために先祖の結婚相手を変えるよう動いている、ということになっています。」

『なるほど。』

「しかし、それではあなたの遺伝子配列が書き換わってしまいますよね?場合によっては別人になってしまう。なのにそのようなことが起こる素振りもない。何故ですか?」

『これは確かにご先祖様の前では出来ない話ですね。いいですよ、お話ししましょう。この世界の住人でないのなら影響も出ないでしょうし。何よりも【許可】が出ていますから。』

「【許可】・・・ですか?」姫が聞いた。

『はい、歴史に関わる事項に関しては、時間管理局の許可が必要なのです。話すのも、タイムスリップするのも。』子孫は続けた。

『例えば、その時代に生存していない動植物を持ち込んだり、逆にその時代には生存している種を絶滅させたりすると、歴史が変わってしまいます。歴史の重要人物に干渉するのも御法度です。ですので、タイムスリップしたりタイムスリップ先で何が起きたかを第三者に話したりするのには、時間管理局の許可が必要なのです。』

「では、あなたは許可を得て過去に跳んでいると?」シンが尋ねた。

『そうです。それはご先祖様にとっても、僕たち未来に暮らすものにも重要かつ必然だからです。』そして、次の子孫の発言に二人は驚いた。

『実は僕の暮らしを良くしたいとか言うのは嘘です。本当はご先祖様とあの娘が結ばれるのは【既定事項】であり、絶対になくてはならないことなのです。そのために僕が派遣されたのです。』



 子孫の話によると、こうである。

 主人公とヒロインの子供は、将来画期的な発明をする。それは未来である現在においても根幹をなす重要なことである。しかし、出会った当時の二人は能力的に差があり、到底結ばれない状況であった。そこで誰かが関与して、二人の仲を取り持った、そのような形跡が見つかった。となれば、未来から来た誰かだろう。時間管理局はそう結論付けた。

『時間管理局が発足したのはつい最近のことです。タイムマシンの実用化に完全に成功したのがその頃なので、同時に設立されました。そして、ご先祖様の件に関して一番適任だろうと考えられたのが、子孫である僕なのです。』

「そうかなるほど、じゃあ歴史を変えようとしてるのに誰も止める人がいないのも・・・。」

『そうです。それが既定事項だからです。』

 未来から来て一人の人間の人生を根本から変えるような過去改変など普通は許されるわけがない。バタフライ効果を御存じだろうか。蝶の一羽ばたきで地球の裏側で嵐が起こるというあれである。ほんの些細な改変でとんでもなく歴史がずれてしまう可能性があるのだ。そんなことを防ぐために恐らくタイムパトロール隊のような警備システムも存在するだろう。それらが止めに入る場面なんて一度もない。そこから考えられる結論は一つ。それが歴史上起きるべき事象だということだ。

「それなら子孫であるあなたの遺伝子配列も変わることがなく、あなたという存在が消滅する心配もないという事ですね。」姫も納得したようだ。

『寧ろ僕という存在を生み出すために動いているんですがね。』

「ちなみに、その発明はどのようなものなんですか?教えて頂く訳には参りませんか?」姫が懇願した。

『これはご先祖様はおろか、この世界の誰にも言わないで下さいね。それは・・・。』二人は聞いて言葉を失った。

『超小型、ハンディタイプの【核融合炉】です。』それは携帯型の太陽を作ったのと同義だった。そんなものが実現したら、色々なものが変わってしまう。エネルギー問題が一気に解決し、エンジンなどの動力部もそれに置き換われば、マッハで走る自転車も可能になってしまう。大気汚染などの問題もクリアできる。それは逆にそれらに関係する産業の消滅も意味する。未来まで影響するどころではない。まさに歴史そのものである。躍起になって主人公とヒロインをくっつけようとするはずだ。

『ちなみに、乗ってきたタイムマシンやこの腕時計型端末にも使われています。僕たち子孫はその恩恵を受けて、不可侵の存在になっています。このことはごく一部の人にしか知らされていないので、気を付けて下さいね。』

「分かりました。自分の世界に戻った後も、自分の心の中だけに留めておきます。でないとこれを見てくれている子供たちが大変なことになりそうですから。」シンは言った。

『どうやら、あなた方にこの話をする許可が下りたのは必然だったようですね。僕も、周りの人に話したくても話せないのでむずがゆかったんです。秘密を共有できる人がいてよかった・・・。』子孫は感謝の意を述べた。シンと姫は少し恥ずかしいとともにうれしかった。二人だけが特別なのだから。

『さあ、そろそろご先祖様のところに戻りましょう。あの時代の食事の方があなた方には合うでしょうから。』そう言って子孫はタイムマシンの入り口を開いた。



「あんな裏設定があるなんてな。子供向けと侮っていたよ。」主人公と少しおやつを食べながら談笑して、二人は戻ってきた。特に姫は、仮想ヒロインとしてヒロインに対する接し方のアドバイスをした。勿論主人公は喜んだ。それらの出来事はアニメでは一切放送されないが。

「全く、人間はどこまで技術を発展させる気なんでしょう。」【有りし者】としては気になる姫だった。

「いずれ、この世界もそうなるかもな。」その時お前たちはどう出る?神に等しい力を持とうとする人間たちを前に。姫に聞きたかったが、言葉を無理やり飲み込んで、シンはそのことを考えないことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ