表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

第13話 神は見守るだけ、悪魔は微笑むだけ【ジャンル:ボードゲーム】

「あー楽しかった。」楓は背伸びしながら言った。

 今日はシンの家にリョウと智花が遊びに来たのだ。たまたま家にいた楓が「たまにはこんなものもいいでしょ。」と父親の書斎から少し古いボードゲームを持ってきたので、五人で遊んだのだ。リョウは何回か遊びに来ていて、楓と自然と仲良くなっていたので、ゲームは楽しくプレイできた。どうも楓がリョウを気に入っている節があった。それでこんなことを言い出したのかもしれない。

「それにしてもお前の父親、何でも持ってるな。」リョウが感心した。

「リョウの上位互換みたいなもんだからな。」

「おお、同志か!是非お会いしたいもんだな。」

「休日に呼び出されることもあるし、なかなか捕まらないだろうがな。伝えとくよ。」

「恩に着るぜ。」リョウは見知らぬ同志に思いをはせていた。

「今日はこのぐらいにしましょ。解散解散。」智花の締めの言葉ゲームはここで終わった。



「やってみて思ったんですけど、」姫がシンに言ってきた。「先のマス目に起こることがあらかじめ書いてあって、出来事が分かってるのになぜ面白いのでしょう?」

 プレイしていたのは、よくある人の人生をなぞるゲーム。生まれ、成長し、結婚し、子供ができる、といった類のものだ。姫が天界から人間の生活を見ているのに状況が似ていたのだが、それはちっとも楽しくない。しかしこのゲームは結構面白かった。それで疑問に思ったのだ。

「多分【何が起こるか分からない】じゃなくて【どのマスに止まるか分からない】からじゃないかな。」

「何か抽象的で分かり辛いですー。」

「じゃあ実際に入ってプレイしてみるか?」

「ええ。そうしましょう。」

 楓に、俺が返しておくよとボードゲームを預かり、それを持ってシンの部屋に移動するシンと姫。例の如く誰も入ってこないようドアに鍵をかけ、ゲームをテーブル上に広げた。そして静かにゲームの世界に入っていった。



 入ると、自分の姿がピン状になっていた。そして車のような形のものに刺さっていた。プレーヤーが動かすコマの再現である。そして空中にはルーレットが浮かんでいた。

「さあ始めましょうか。」姫の声が頭の中に響いてきた。ピンには口も手もないので、どういうプレイスタイルになるか見当もつかなかった。



 各自頭の中で念じてルーレットを回す。指した数字の分だけマス目を進んでいく。そこに書かれた内容が実行される。いたって単純だった。頭で考えれば、盤上を上から俯瞰した図が見えたので、先にどんなマスがあるか分かっていた。それを考慮してルーレットで出す数字を狙って回した。そのことを姫が知った時、シンが何を言わんとしていたかが何となく分かった気がした。

 つまり、何となくプレイしていたのではなく、戦略的にプレイしていたのだ。それは決められた人生をそのまま歩むのではなく、自分の力で道を選択していく姿に似ていた。人生は何が起こるか分からない。でも生き方は自分の意志である程度選択できる。ある時は神に祈りたくなることもあるだろう。ある時は悪魔の甘いささやきに屈しかけることもあるだろう。その中で迷い、選択してくことこそ人生の生き甲斐なのだと。それを疑似体験できるのがこのボードゲームなのだと。

「結構奥が深いものですね・・・。」姫は感心していた。それでもプレイは続く。就職して給料が入った。結婚して横にピンが一本増えた。子供が出来てピンが二本増えた。支出が大きいこともあった。

 でもなるべく支出を抑え、収入を増やすプレイを心がけた。そしてとうとうゴールした。プレイヤー二人がゴールした時点で、空中にゴール時の財産をもとに順位が発表されてゲームエンド。強制的に元の世界に戻された。



「どうだった?」姫にシンが尋ねた。

「結構面白いものですね。」姫はと同時に(人間というものは。)心の中でそう呟いた。

「それにしても、ボードゲームの中には神も悪魔もいませんのね。」

「お前がそれを言うなよ・・・。」

「でもその方が面白いのかも、ですね。」

「お前達は特定の人間の人生に干渉したりするのか?」

「いえ、ほとんどありません。あまりに酷い惨状になれば別ですが。一番近くでは、第二次世界大戦ですね。」

「あれもお前たちが関与していたのか?」

「終わらせる時だけですけどね。それもただ姿を現しただけです。何かをしたり言ったりしたわけではありません。」

「凄いな、それだけであれだけの戦争を終わらせられるのか・・・。」

「そうです、凄いんですよ。」えへん、と姫は胸を張った。



「そうそう、一つだけ言いたいことがあるんですけど。」

「何だ?このゲームにか?」シンは不思議がった。

「はい。せめて・・・。」姫のこの一言で、さっきのいい感じが台無しになった。

「結婚して子供が増えた時、増えたピンもしゃべって欲しかったです。周ってて何か寂しかったなあ・・・。」

「いやそれは仕様だから。」思わず突っ込んでしまったシンだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ