94 無力な自分
本日二話目
「目が覚めたか」
俺が寝ているベットの横に師匠と朝比奈さんがいた。
「……」
「どうした?」
黒金さんが心配そうに聞いてくるが俺はそれどころではなかった。
俺は体の震えを抑える必死だった。
「す、すいません。朝比奈さん俺の手握ってくれませんか」
俺はそう言って朝比奈さんの手を握ったが、俺の震えは収まらなかった。
(足りない)
俺は朝比奈さんの手をぎゅっと握る。
「と、とりあえず俺は小娘を呼んでくるぞ」
そう言って黒金さんは部屋を出ていった。
「「結城」」
「結城さん」
「「結城先輩」」
「結城君」
次々と部屋にみんなが入ってくるが、俺が朝比奈さんの手を握ってるのを見ると何とも言えない表情をする。雪菜がみんなを代表するように
「ど、どうして結城は朝比奈さんの手を握ってるの?」
「なんか心細くなって」
俺の気弱な言葉に雪菜、湯野、エリナ、りーぜが抱き着いてきた。
「?」
「心細くなくなった?」
「ああ」
俺は静かにそう答え涙を流した。自分がこんなに人の温もりに飢えてるなんて気づかなかった。そこに
「盛り上がってるところ、悪いけどいいボウヤ?」
祥子さんがドアをノックしてあきれ顔で見てきた。
「ボウヤの魔力がかなり減少してるわ」
「具体的にはどれくらい?」
俺が聞くと
「そうね1000よ」
「へっ?」
俺が呆けた声を出すと
「1000マギナよ」
あれだけあった俺の魔力は1000マギナになった。
「そしてボウヤが感じている喪失感はボウヤの妹さんが抜き取られことで魔力が減ったことにあるわ」
祥子さんは説明を始めた。
「ボウヤがあれだけ大量の魔力を持っていたのは、妹さんの魂と二人分の魔力を持っていたことになるわ。そして魔力は精神と関係している。魔力が急激に無くなったことで、そうね例えるなら体温が急激に低くなったところね。ボウヤが感じている心細さの原因よ。」
「そうか…」
俺はそう呟きベットに仰向けに倒れた。
「…ボウヤ?」
「すいません、祥子さん少し一人にしてくれますか」
俺は祥子さんたちにそう言って一人にしてもらった。
一人になって俺は静かに泣いていた。
「俺はまた何もできなかった」
俺は布団を握りしめ歯を食いしばって泣く。
「何だよ、何も変わっちゃいないじゃ俺は!!」
あんだけ必死に修行して、なんも変わらなかった。守るはずの存在にまた守られてしまった。エリに守られ、妹に守られ何やってるんだ俺は。
「俺は、無力だ」
「うっうううう~」




