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そして一日の半分を不死鳥にズタボロにされた。ほとんどの時間を生身で。
黒金さんが俺に声を掛けるが
「おい、坊主」
「・・・」
「返事がない、ただの屍のようだ」
茶化すように師匠が有名なゲームの台詞を言う。
「あの、結城先輩大丈夫なんですか?」
リーゼが俺のことを心配そうに見てくる。
今ここではリーゼだけが味方だ。
「・・・リーゼ、俺死ぬかもしれないな」
「そんな」
「坊主、今回は自分で望んだだろ。歯食いしばって立ち上がれ。それともやめるか」
俺はその言葉のとおり歯を食いしばって立ち上がった。
「まさか、ここでやめたら男が廃る。」
「よく言ったね。じゃあ、カイザー晩御飯が出来るまでこいつと遊んでやって」
師匠の言葉に俺は絶望した・・・・・みんな俺は今日死ぬかもしれない。
結局死ぬことはなかったが俺は晩御飯をほとんど食べれず寝てしまった。
「弱いな、俺。」
その一言に尽きた。体中傷だらけで、筋肉痛でかなりつらい。
「寝よう」
俺が寝ようとした時にふすまが開けられた。
「結城先輩、起きてます?」
「起きてる。」
俺はそう言って起き上がった。
「どうした?」
「あの・・・先輩どうして強くなろうと急に?」
リーゼは俺の横に座った。
「それは・・・強くなったらもてそうだから?」
俺がそう言うと
「真面目に後なんで疑問」
リーゼが不機嫌な声を上げた。
俺は諦めて
「俺が弱いままだとリーゼのことが守れないから。」
恥ずかしくてリーゼの顔を見ないようにした。
「大丈夫です、私も強くなります。・・・ですがそれは理由の一端で本当のことは話していないですよね」
リーゼは俺の目を見ようとしたが俺はそらしてしまった。
俺の力は軽々しく喋っていいものでないし、それに神からも命を狙われている。
「結城先輩、私に話してくれませんか」
「それは・・・」
俺が話したことでこいつの命が危険になるのではないか。俺はどうすればいいのだろ。
「喋れないならいいです。だけど・・・約束してください」
「約束?」
俺は聞き返した。
「黙ったまま、私の目の前からいなくならないでください」
「・・・分かった」
「それと」
「まだあんの?」
「約束とは違います。お願いです」
そう言ってリーゼは俺に抱きついた。
「全部自分で抱え込まないでください。大変だったら私も一緒に手伝いますからだから・・・だからお姉ちゃんみたいにいなくならないで・・・私を一人にしないでください」
エリはリーゼに内緒で色々抱え込んでたみたいだ後で聞いた話だが、それをこいつはいろいろ後悔してるんだろ。それで俺にエリを重ねて怖くなってしまったのだろう。
「分かった。大丈夫だから」
リーゼは俺の顔を見て顔を近づけてきた。
「えっ!?ちょっ」
俺は言葉を最後まで言えず口を塞がれた。甘いエルフ独特の花のような香りが俺を包む。軽く触れるようなキスだった。
何秒たったのだろ、リーゼは俺から離れた。
「リーゼ」
「この口付けに誓ってくれますか。ちなみにファーストキスです」
リーゼが俺のことを好きなことは気づいていたがここまでするとは
「誓う。だけど俺はリーゼの気持ちに」
「大丈夫です。色々分かりますから、気づいてますか?雪菜先輩もエリナも湯野先輩も結城先輩もことが好きなんです。そして私も。・・・結城先輩まだ誰かのこと好きだすか?」
俺は首を横に振った。
「もし私のことを好きになったら今度は結城先輩からキスしてください待ってます」
そう言ってリーゼは部屋から出て行った。




