後輩のトラウマ
「小学生の頃ですね、学校に強盗が押し入ってきて」エリナが話し出したが・・・・
「待ってくれ、そもそもなんで学校に強盗が押し入ったんだ?」俺が聞くと
「逃走中の強盗犯が学校に人質目的で入ってきたんです。」
俺は納得して話を促した。
「そこで犯人の一人が痺れを切らして自分達が本気だと言うことを見せるために人質の私を銃で撃ったんです。」
「それで」
俺が聞くと
「私は重症を負いました。そして・・・私の親友が泣き叫んで私を庇うように覆いかぶさりました。そのせいでその子も撃たれてしまってんです。」
エリナは何かに耐えながら話していた。
「私は親友の流れる血を飲んで吸血鬼としての能力を発動させました。」
「能力って?」
エリナは恐る恐る言いはじめた。
「その能力は・・・・どんな傷でも瞬時に回復するものです。」
そう言ってエリナは魔具でナイフを作り自分の手のひらを切った。だが瞬時に傷口が塞がった。
「すごいな・・・」俺は正直な感想を言った。
「私は傷が治った後強盗犯を倒しました・・・でもそのとき何発か銃弾が当たっても傷がすぐに治ります。・・・他の人には血まみれの少女がゾンビみたいに見えたんでしょうね。」
エリナは一息ついて話し始めた。
「その事件で私のことは表ざたにならなかったけど・・・みんなは私の体を知ってしまった。」
俺は不思議に思ったことを聞いた。
「あの、そういうのって記憶消されるんじゃなかったの?」
「それは魔物が事件を起こした場合だけです。だから記憶の書き換えは行えなかったんです。」
「そうなんだ」
「それで私はいじめられるようになったんですが、私の親友は私のことを守ってくれて、・・・助けてくれて、私がしたことで親友は助かったと言ってくれてありがとうって言ってくれて。」
エリナはこのときになるとポロポロと泣き出した。
「私が中学に上がるときこんなことがあったんで引っ越すことになったんです。親友と別れて。」
俺は黙っていることしかできなかった。
「私は新しい学校でうまくやっていけました。・・・だけど親友は・・・由愛ちゃんは中学に上がって私がいなくなったことでいじめの対象は由愛ちゃんに変わったんです。化け物を庇ったってことで私を庇ったてことで、そして・・・由愛ちゃんはいじめがエスカレートして殺されてしまったんです。」
俺はエリナを引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「私はあの地獄から逃げて、助かって由愛ちゃんは殺されてしまったんです。私のせいで私があの地獄から逃げたせいで!!」
俺は何も言うことができずただただエリナのことを抱きしめることしかできなかった。
「それで怖くなったんです。バンパイアってことが分かっていじめられるんじゃないかって、避けられてるんじゃないかって、殺されるんじゃないかって!!」
「落ち着いたか?」
俺が聞くと
「もうちょっとこのままで」
俺はエリナの頭をなでながら、何て言ったらいいか考えていた。
それから少したって、エリナは
「結城先輩、ありがとうございました。」
「いいよ別に。」
俺はそう言って首を振った。
「それと登録カード拾ってくれてありがとうございました。」
「どういたしまして」
「結城先輩」
「何?」
「あの・・一ついいですか」
俺がうなずくと
「結城先輩って、男ですよね」
エリナの言葉に俺は呆然となってしまった。
「な、何で?」
「結城先輩、バンパイアは血で男か女か分かるんですよ。」
俺はエリナの言葉に頭を回転させた。
(魔法少女の力によって表面は変えられるけど中身は変わらないのか?!)
「あの結城先輩、魔法少女の力で容姿が変わったとしてもアレルギーや病気がなくなるわけじゃないのと同じですよ。」
エリナは俺の顔を見ながら言ってくる。
俺は観念して
「悪いなだましてて、黙っててくれ。すまないが」
「いいですよ。結城先輩だけど今の話も秘密って言うことでお願いします。」
「俺が男だと分かったときに怖くはなかったのか。」
「結城先輩が私のことを思ってくれたのは伝わったので。」
俺はなんだか照れくさかった。
エリナは休憩室を出て行くときに振り返って
「結城先輩の本当の名前って何ですか?」
「それが本当の名前だ。」
俺はそう答えたと同時にエリナは出て行った。




