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言葉の彼方へ  作者: 美憂
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15の秋 再来 ~修也~

誰にも思い出っていうものはある。


たった15年しか生きてない俺にだってあるねん。


一番ちっさい頃の思いでは・・・そうやなディズニーランドで見たパレードの赤く目の光る黒い化け物が怖かったってことかな。

かーさんがそれからずっと、俺が悪いことする度に「そんなんしてたら赤い目のおっちゃん来るで」ってゆうて脅かしてはったわ。


3歳ぐらいやったから、あれはほんまに怖かったなあ。


それ言われたらどんなに遊びたくても早く寝たし、お菓子もっと食べたくても諦めたわ。

まあ、それくらい怖かったって事や。


そっからいっぱい思い出っていうもんはあるねんけど。


中学入るまでは前から2番目にちっこかったし、女みたいな顔やからどこ行っても「おねーちゃん」言われたり。

6年ときやったかな、クラスの女子と交換日記してたんをねぇちゃんに見つけられてかーさんに言いつけられたり。


最近はこの間の高校の文化祭まで、そりゃもうたくさんあるねん。


でもな。


とーさんの思い出は9歳までしかないねん。

一緒に暮らしとったん9歳までやからな。


俺ちっこかったからな。9歳までってゆうてもあんま覚えてないねん。


覚えてるのはいっつもお酒飲んでるとーさんやねん。お酒飲んでるか寝てるとーさん。

それしか覚えてへんねん。


しょーじき、他覚えてないねんなあ。


それがなんとなくなんやけどな。


最近ちょっと寂しいなぁ思うようになってん。


俺にかてへこむ時とかあるやん?

そういう時思うねん。

とーさんやったら、大人やったらどうすんのかなぁって。


え?かーさん?

かーさんに聞いてみって?


それは・・・無いわ。

かーさんとかねえちゃんに言うのははずいやん。


しょぼい事でへこんでるねんもん。


女にゆうの、はずいやん。

一応俺かて男やねんで?女に心配かけた無いやん。


だから無理やねんけどさ。

とーさんに聞いてみたかったなとか思うわけやねん。


聞いてみたらええやんって?


それがな・・・あかんねん。



俺のとーさん4年前に亡くならはってん。

だから聞かれへんねんなあ。


ああ。謝らんとってーや。

別に謝ってもらうようなことでもないし。


俺かわいそうがられんの好きちゃうしな。

そんなつもりでお前に話したんちゃうで?


なんかわからんけど最近そう思うって事や。


・・・それだけの事やねん。





20年前の会話をふと思い出したのは、昨日姉ちゃんが持って来た葉書のせいやなと俺は思った、


実家に届いてたって持って来てくれた葉書は高校の同窓会の案内やった。


幹事の名前は俺の高校のときの親友で。

でも親友というにはおこがましいほど会ってへん奴の名前やった。


こいつとは高校3年間ずっとつるんでて・・・やけど卒業してからは全く会っていない。


それはもう親友とは言わへんな。

だったら・・・知り合いか?


俺は複雑な思いでその名前を見つめた。



15の時にした話をこいつは覚えてるんやろか。


少し考えて俺は笑った。

俺でさえさっきまで思い出しもせえへんかったのに覚えてるわけないやん。


俺のことすら覚えてるかどうか。

ま。そんなもんやろ。


あの時は楽しかった。そやけど離れてしもたら忘れるもんやん?


・・・それでも。

いつもやったらそのまま葉書なんて放置のはずやのに。


捨てもせんとPCデスクの上に葉書を置いたのは・・・。


「・・・俺も年取ったてことなんかな。」


俺は一人呟いて、珈琲を飲み干すとジャケットと鞄を持って玄関へ出た。



思い出って奴に対面してみたくなったんかもな。


「あ。やべ。遅刻する。」


すこしおもっくるしい「感傷」とかって奴を振り切るように俺はドアを開けた。



それでも。


20年近くぶりの再会なんてのもええんちゃうかなって心の隅では思いながら。










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