お兄ちゃんが赤ちゃん…!? 【2000文字】
「な、なんでソラ兄が赤ちゃんになってるの!?」
日曜日の昼下がり、たっぷり寝て起きたら3兄弟の長男、ソラ兄が赤ちゃんの姿になっていた!
姿というのはコスプレじゃなくて、まじで本物の小さい赤ちゃん…!
ど、どういうこと!?
「さっき、ソラ兄と商店街でくじを引いてきたんだ」
一番下の弟のウミが、泣きそうな声で言った。
「それで、おれはラムネをもらって、ソラ兄は飴をもらったの」
ああ、そういえば朝から行くんだって昨日言ってたっけ…。
「帰ってきてその飴をソラ兄が食べたの。そしたら赤ちゃんになっちゃって…。リク兄どうしよう!」
「なんだよ、その怪しい飴…」
「ソラ兄が戻らなかったらどうしよう!」
「この子、ほんとにソラ兄だよな…?」
「そうだよ!ポンッて煙が出て、この姿になってたんだよ!」
残された飴の袋には、『コドモがコドモにな〜る飴』と書いてあった。
「きゃあい!」
そこで、赤ちゃんのソラ兄が高い声を上げた。
小さな手で、ウミのほっぺたを触る。
「ソラ兄〜〜…!」
ウミはひしっとソラ兄に抱きつく。
「きゃははっ」
「笑ってる…」
「何言ってるかわからないよ〜、ソラ兄ぃ」
ウミが頬ずりすると、ソラ兄も真似するようにスリスリした。
「ソラ兄を戻す方法を探すしかないよなあ…」
「どうやって?」
「商店街のくじ引きのところに行って訊いてくるよ」
「えっ!置いてかないでよ!おれも行く!」
「ソラ兄を抱えては行けないだろ!」
そのとき、ソラ兄がオレの方に腕を伸ばした。
といっても短くて、ただ手を挙げただけかもしれない。
わかんないから、とりあえず伸ばされた手を握ってみた。
すると、ソラ兄はウミをすり抜けてオレの腕の中に入ってきた。
「え、え、なに!?」
「あーい!」
オレの首元をつかんでよじ登ろうとしてくる。
「まって、服伸びるから」
ソラ兄のいたずらを封じ込めるように抱き抱えると、きゃっきゃと楽しそうに笑った。
「抱っこしてほしかった、とか?」
「きゃあい」
「えええ…ほんとに赤ちゃんじゃん…」
「おれも抱っこしてみたい!」
「ウミにはまだ無理だよ」
「えええ、ソラ兄だっておれにも抱っこされたいよね!?」
ウミが勢いよく近づくと、ソラ兄はふいっとそっぽを向いてオレに顔をうずめた。
うーん、ちょっとかわいいかも。
「ほらイヤだって」
「そんなあ!」
「それにしてもソラ兄が喋らないと怒られなくていいな」
「あっ、それおれも思った!」
いつも小言が多いソラ兄が、きゃーいしか言えないのは、なんか平和な気がしてきた。
かわいいし。
「部屋散らかすなって言われないもんね」
「オレもちゃんと起きろって言われなかったし」
「宿題やれも言われないよ」
ニッコニコのソラ兄を見て、オレとウミは顔を見合わせた。
「このままでもいいんじゃないか…?」
「おれ、弟か妹がほしかったんだ!」
悪くない気がする。
自分が一番上の兄というのも、ちょっとうれしいし。
「あっ、あー」
今度はオレからすり抜けそうになって、慌てて抱き直した。
「だあー!」
「なになに、おれに抱っこされたい!?」
「ちがうだろ、なんか欲しがってないか?」
「お腹空いたの?…それともウ、ウンチとか!?」
「まじ!?」
ソラ兄は空中で手をパタパタさせて、何か言いたそうに見えた。
ほんとにウミに抱っこされたいとか?
「ソラ兄、わかんないよぉ…」
「ふぇ、ええええん!!」
機嫌が変わったのか、ソラ兄はいきなり泣き出してしまった。
「うええええん!」
「イタイ、イタイッ、叩かないでっ」
「ぎゃあああっ」
オレの顔を容赦なく叩いて、バタバタする。
落ちちゃうって!
「ごめんっ、わかんない…!」
「やっぱり赤ちゃんのソラ兄じゃ、やだよぉ」
わああっと、ウミまで一緒に泣き出した。
もしソラ兄だったらうまいことあやせたのかな。
「ソラ兄戻ってぇ、おしゃべりしてよぉ」
「喋らないなんてソラ兄じゃないよ…」
「んぎゃあああ」
ウミの方をめがけて体をそらすソラ兄に、オレも泣きたかった。
いつもみたいに頭撫でてよ…、もう嫌がったりしないからさ。
「…どうにかしないと」
ソラ兄がウミの胸ポケットをバシバシ叩き始めた。
「ここにはラムネしか入ってないよ?」
「だあああ!」
「ソラ兄、赤ちゃんは食べられないよ」
揉めているうちに、ラムネがポケットから飛び出た。
ソラ兄は誰よりも先に掴むと、そのまま口に入っちゃった!
「ああっ」
「ペッして!」
次の瞬間、ポンッと煙が沸いて、ソラ兄は元の姿に戻っていた。
「ケホッ、はあ、大変な目に遭った…」
「「ソラ兄っ!」」
オレとウミは両サイドからソラ兄にしがみついた。
「うわっ!なに、2人とも!」
「こっちのソラ兄がいい!」
「おれも!」
「小言がうるさいんだっけ?」
「うそ!オレたちの兄ちゃんでいてっ!」
「なんだよ、調子いいなあ」
そう言いながら、ソラ兄は笑って、オレとウミの頭を撫でてくれた。
ちなみにラムネの袋に『コドモがコドモに戻〜るラムネ』とあって、なんだよこれ…とオレは脱力したのだった。
了
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