第7話:作るという力
久遠 恒一が「作る側」に興味を持ったのは、必然だった。
きっかけは、いつも通りの低階層ダンジョンでの戦闘だった。
相手は、すでに何度も倒している個体。
だが剣を振るった瞬間、久遠は違和感を覚えた。
――切れ味が、落ちている。
致命的ではない。
だが確実に、刃が鈍っていた。
管理室に戻り、武器の交換を申請する。
担当者は慣れた様子で言った。
「ダンジョン産でも、消耗はしますからね。
鍛冶スキルを取る冒険者も増えてますよ」
その言葉が、久遠の中に静かに残った。
――直せたら、どうなる?
鑑定眼で見れば、素材の質も構造も理解できる。
どこが弱り、どこを補強すればいいのかも分かる。
だが、作れない。
自分の手で、完結していない。
その週末、久遠は管理課の資料を読み漁った。
生産系スキル――鍛冶、錬金、裁縫、細工。
条件は厳しい。
一定以上のダンジョンレベル、素材の理解、
そして「適性」。
適性、という言葉に、久遠は引っかかった。
――生き方で決まる。
ダンジョンが技能を与える基準は、そこにある。
次の潜行で、久遠は意識的に素材を回収した。
モンスターの骨、皮、金属質の爪。
すべて鑑定し、丁寧にアイテムボックスへ収納する。
無限の容量。
だが、無秩序には入れない。
カテゴリ分けし、用途別に整理する。
それは、子供の頃からの癖だった。
ある瞬間、視界に文字が浮かぶ。
――スキル取得条件を満たしました
久遠は、足を止めた。
――鍛冶:取得可能
――錬金術:取得可能
静かな衝撃が、胸に広がる。
選択肢は、二つ。
久遠は、迷わなかった。
まずは、鍛冶。
剣を振るう者が、剣を理解せずにどうする。
取得の瞬間、情報が流れ込む。
金属の性質、温度、打撃の意味。
理屈として、理解できた。
管理課の簡易工房を借りる。
初めて、自分の手で刃に触れる。
失敗作だった。
だが、鑑定眼が即座に原因を示す。
――叩きすぎ。
――冷却のタイミングが早い。
二度目、三度目。
少しずつ、形になる。
完成したのは、質素な短剣だった。
だが、モンスターに対しては、確かな切れ味を持つ。
久遠は、静かに息を吐いた。
――これは、戦うためだけの力じゃない。
修理できる。
改良できる。
自分に合った武器を、作れる。
その夜、久遠はノートに新しい項目を書き加えた。
生産:可能。
剣を振るうだけの冒険者では、もうない。
作り、直し、積み上げる。
それは、彼の人生そのものだった。
第7話では、生産系スキル取得の導入として「鍛冶」を選びました。
鑑定眼との相性が非常に良く、今後の展開の核になります。
次話では錬金術にも踏み込み、装備と戦闘の幅が一気に広がります。




