第59話:非公式協力者
警報は、
公式には鳴っていない。
だが、
久遠の端末は
震え続けていた。
非公開。
未承認。
匿名。
『湾岸、
侵食の兆候』
『管理課、
動きません』
『……お願いします』
久遠は、
ソファから
立ち上がる。
「場所」
返信は、
即座に来た。
倉庫街。
人の少ない、
だからこそ
後回しにされる
区域。
装備は、
最低限。
剣は、
ない。
代わりに――
工具。
刻印のない
試作装備。
誰の名前も
背負っていない。
現場。
すでに、
数人が
集まっていた。
冒険者。
元自衛官。
医療班の
脱落者。
公式では
ない人間たち。
「久遠さん……」
誰かが、
息を呑む。
「英雄扱いは
やめてくれ」
久遠は、
低く言う。
「今日は
人手だ」
侵食は、
まだ浅い。
だが――
広がり方が異常。
「固定が
間に合わない」
「なら、
削る」
久遠は、
即断する。
「核が
育つ前に
切る」
冒険者の一人が、
笑った。
「命令外ですね」
「ああ」
「……好きだ」
戦闘は、
泥臭い。
連携は、
即席。
被弾も、
多い。
だが――
止めた。
侵食が、
収束する。
誰も、
倒れていない。
「……生きてる」
誰かが、
呟く。
その瞬間、
遠くで
公式部隊の
灯り。
「解散だ」
久遠は、
短く言う。
「ここで
会ったことは
忘れろ」
誰も、
反論しない。
別れ際、
一人が
言った。
「……また
呼んでください」
久遠は、
頷いた。
帰路。
端末が、
震える。
別の
非公式回線。
『次は、
俺も
入れてくれ』
名前は、
ない。
だが――
増えている。
管理されない
助け。
記録されない
勝利。
それでも――
人は、
集まる。
久遠は、
夜空を見る。
「……世界は
まだ、
終わってない」
公式が
追いつく前に。
彼らは、
動く。
次は
第60話「影のネットワーク」。
非公式協力者たちが
“組織”になり始める回です。




