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第57話:命令外戦闘

 侵食体は、

 一つではなかった。


 空白区画の奥で、

 複数の反応が

 絡み合っている。


 ――融合ではない。

 寄生。


 久遠は、

 剣を振りながら

 即座に理解した。


「……逃げ場を

 潰す構造か」


 鑑定眼が、

 警告を連打する。


 解析不能

 侵食進行中

 自己修復を確認


 最悪だ。


 だが、

 引く理由には

 ならない。


「A-3!」


 名を呼ぶ。


 反応は、

 鈍い。


 身体の半分が、

 侵食に

 固定されている。


「……命令は?」


 その言葉に、

 久遠は

 一瞬だけ

 言葉を失う。


「――生きろ」


 短く、

 強く。


 A-3は、

 首を傾げる。


「……理解不能」


 侵食体が、

 動く。


 人の形を

 模した刃が、

 久遠へ伸びる。


 受けきれない。


 久遠は、

 アイテムボックスから

 刻印装備を

 射出する。


 ――速度指定。


 “殺さない速度”


 装備が、

 杭のように

 侵食体を

 縫い止める。


「今だ、

 離脱しろ!」


 A-3は、

 数秒、

 止まる。


 そして――

 一歩、

 下がった。


 侵食が、

 剥がれる。


 肉が、

 裂ける。


 だが、

 人が残った。


「……戻れ」


 久遠は、

 それ以上

 言わない。


 侵食体が、

 咆哮する。


 怒りでも、

 痛みでもない。


 奪われたことへの反応。


 久遠は、

 前に出る。


「命令外だ」


 刃を構える。


「だから――

 好きにやる」


 一閃。


 刻印装備が、

 共鳴する。


 死者の名前が、

 光る。


 侵食体の

 核が、

 露出する。


 だが――

 深い。


 久遠の左腕が、

 軋む。


 侵食が、

 逆流する。


「……っ!」


 視界が、

 白くなる。


 その瞬間。


 背後から、

 影が伸びた。


「――久遠」


 A-3。


 半身を引きずりながら、

 侵食体に

 しがみつく。


「……生きろ、

 って言いました」


 侵食が、

 彼に集中する。


 久遠は、

 叫ぶ。


「やめろ!」


「……命令です」


 違う。


 それは、

 選択だ。


 久遠は、

 歯を食いしばり、

 剣を突き立てる。


 核が、

 砕ける。


 侵食体が、

 崩壊する。


 静寂。


 久遠は、

 倒れ込む。


 息が、

 続かない。


「……A-3」


 呼ぶ。


 返事は、

 ない。


 侵食は、

 止まっている。


 だが――

 人も、

 動かない。


 久遠は、

 拳で地面を

 叩いた。


「……命令外でも、

 守れなかった」


 遠くで、

 帰還信号。


 管制が、

 気づいた。


 久遠は、

 立ち上がる。


 身体が、

 重い。


 それでも――

 剣を、

 離さない。


 この戦いは、

 記録されない。


 命令外戦闘。


 だが、

 死んだ者の

 名前だけは、

 久遠の中に

 残った。

次は

第58話「記録されない勝利」。

勝ったはずの戦いが、

なかったことにされる回です。

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