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第54話:成功例という地獄

 「――成功です」


 その一言が、

 会議室に落ちた。


 拍手は、

 ない。


 だが、

 安堵はあった。


 数字が、結果を示している。


「侵食固定率、

 従来比三・八倍」


「久遠単独出撃時より、

 損耗は――低下しています」


 久遠は、

 モニターを見ていた。


 七名。


 生き残った

 “代替戦力”。


 数値上は、

 成功。


 だが、

 画面越しでも分かる。


 彼らは、

 戻ってきていない。


「次段階に

 進めます」


 統括官の声が、

 少しだけ

 軽い。


「ロットBを

 投入」


「待ってください」


 久遠が、

 口を開く。


「彼らの

 状態評価は?」


「戦闘能力、

 問題なし」


「……人格は?」


 一瞬、

 間。


「“任務遂行に

 支障なし”」


 久遠は、

 ゆっくり

 息を吐いた。


「それは

 評価じゃない」


「久遠さん」


「人を

 壊しておいて、

 “使える”で

 終わらせるな」


 会議室が、

 沈黙する。


 やがて、

 別の幹部が

 淡々と言った。


「壊れたのでは

 ありません」


「適応した

 のです」


 その言葉が、

 久遠の胸に

 刺さる。


「……どこが

 違う」


「侵食に

 飲まれなかった」


「残った」


「それだけです」


 久遠は、

 立ち上がった。


「――会議を

 抜けます」


「まだ

 終わっていません」


「現場が

 先です」


 廊下。


 隔離区画。


 厚いガラスの向こうに、

 七名がいる。


 座っている。

 立っている。

 動いていない者もいる。


 A-3は、

 壁を見つめていた。


「……調子は」


 久遠の声に、

 反応が遅れる。


「問題ありません」


 即答。


 だが、

 感情が

 伴っていない。


「名前を

 思い出せるか」


「必要ですか」


 その返答で、

 分かった。


 必要なものだけが

 残っている。


「次の任務は?」


 A-3が、

 聞く。


「……まだ」


「なら、

 待ちます」


 従順。


 それが、

 最も

 危険だった。


 久遠は、

 拳を握る。


「君たちは……

 人だ」


「はい」


 即答。


 だが、

 意味を

 理解していない。


「――下がって

 いい」


 久遠は、

 踵を返す。


 背中に、

 視線を感じる。


 だが、

 呼び止める声は

 なかった。


 管制室。


 新しい報告が、

 上がる。


『侵食反応、

 地方都市で

 連鎖』


『対応班、

 不足』


 統括官が、

 久遠を見る。


「……次も

 同行を?」


 久遠は、

 即答できなかった。


 代替戦力は、

 “使える”。


 それは、

 事実だ。


 だからこそ――

 止めなければ、

 ならない。


「……条件を

 出します」


「何でしょう」


「私が前に出る」


「それでは――」


「彼らを

 盾にしない」


 沈黙。


 やがて、

 小さく

 頷きが返る。


「……承認」


 久遠は、

 目を閉じた。


 成功例。


 それは、

 地獄への

 許可証だった。

次は

第55話「増産される適応者」。

“成功”が制度になったとき、

何が失われるのかを描きます。

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