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第52話:代替戦力計画

 会議室は、

 静かすぎた。


 人はいる。

 だが、

 誰も喋らない。


 中央のスクリーンには、

 侵食発生図。


 赤。

 黄。

 黒。


 黒は、未対応。


「――率直に言います」


 ダンジョン管理課・

 戦略統括官が口を開く。


「久遠一名に

 依存する体制は、

 すでに破綻しています」


 久遠は、

 何も言わない。


 否定しない。


 その必要が、

 ない。


「代替戦力計画を

 発動します」


 スクリーンが切り替わる。


 コードネーム一覧。


 ――失踪者。

 ――重度被曝者。

 ――生還後、精神崩壊。


 久遠の視線が、

 一つの項目で

 止まる。


「……これ」


「はい」


 統括官は、

 一拍置いた。


「人工適応者計画です」


 空気が、

 さらに重くなる。


「侵食に

 長時間さらされ、

 生存した者」


「完全に

 元の人間では

 ありません」


 久遠は、

 理解した。


「……選別された

 生存者か」


「正確には、

 失敗しなかった例です」


 映像。


 拘束台。


 人。


 ――いや、

 元・人。


 体表に、

 薄く走る

 侵食痕。


 目が、

 焦点を結ばない。


「戦えるんですか」


「ええ」


「人として?」


 統括官は、

 即答しなかった。


「……“戦力”として」


 久遠は、

 椅子にもたれた。


 胃の奥が、

 冷える。


「それは

 冒険者じゃない」


「分かっています」


「兵士でもない」


「ええ」


「――消耗品だ」


 沈黙。


 否定は、

 されなかった。


「久遠さん」


 別の幹部が、

 口を挟む。


「あなたが

 いなくなる前提で、

 考えなければならない」


「私は

 まだ生きてます」


「“今は”」


 その言葉に、

 誰も笑わない。


 久遠は、

 天井を見上げた。


 助けた顔。

 助けられなかった影。


「……何人」


「初期ロット、

 十二名」


「生存率」


「三割未満」


 久遠は、

 ゆっくり立ち上がる。


「私が

 同行する」


「危険です」


「分かってます」


 久遠は、

 静かに言った。


「でも――

 責任は、

 現場にある」


「机の上で

 人を削るなら、

 せめて

 私の目の前でやれ」


 統括官は、

 目を伏せた。


「……承認します」


 会議が終わる。


 廊下。


 久遠は、

 一人になる。


 左腕が、

 また痛んだ。


 侵食の

 名残。


「代替……か」


 自分が、

 消える前提で

 世界が動いている。


 それは、

 正しい。


 だからこそ――

 胸が、

 苦しかった。

第53話「失敗作たちの行進」

“代替戦力”と呼ばれた者たちが、

初めてダンジョンに立つ話です。

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