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第49話:拒否権のない招集

 招集は、

 命令だった。


 文書ではない。

 通達でもない。


 非常呼集コード。


 久遠の端末に、

 赤い警告が

 表示される。


 ――ダンジョン管理課

 ――特例対応要請

 ――対象:久遠一等冒険者


 要請、

 という名の

 強制。


 久遠は、

 深く息を吐いた。


「……来たか」


 管理課地下。


 通常、

 立ち入り禁止区域。


 そこに、

 久遠は通された。


 室内には、

 地図が投影されている。


 中層第十五区画。


 いや――

 元・第十五区画。


「区画が、

 “書き換わっている”」


 技術官が、

 震える声で言った。


「内部構造が、

 連続的に変化している」


「湧きじゃない。

 侵食だ」


 久遠の

 鑑定眼が、

 勝手に走る。


 警告:未知階層干渉

 ダンジョンカード:生成不能


「……カードが、

 作れない?」


 管理官が、

 頷いた。


「最初の一匹を

 倒しても、

 記録が残らない」


「倒した事実が、

 固定されない」


 久遠は、

 理解した。


 これは――

 “戦ったことにならない敵”。


「だから、

 君が必要だ」


 課長代理は、

 目を逸らした。


「君の鑑定眼と、

 無限アイテムボックス」


「現場に、

 “基準”を作ってほしい」


 久遠は、

 静かに言った。


「……剣じゃないんですね」


「ああ」


「君という存在そのものだ」


 久遠は、

 笑った。


 乾いた、

 音のない笑い。


「拒否権は」


「ない」


 即答だった。


「拒否すれば、

 現場は壊滅する」


「数字が、

 それを示している」


 久遠は、

 剣を

 腰に差す。


 条件は、

 聞かれなかった。


 同意も、

 取られなかった。


 出発前。


 一人の

 若い管理官が、

 声をかける。


「……久遠さん」


「戻って、

 ください」


 久遠は、

 振り返らない。


「戻るんじゃない」


「使われるだけだ」


 境界。


 侵食区画。


 空気が、

 重い。


 音が、

 歪む。


 久遠の

 鑑定眼が、

 最大で稼働する。


 だが――

 情報が、

 定まらない。


 名前が、

 出ない。


 性能も、

 出ない。


 ただ、

 一行だけ。


 《存在:未確定》


 久遠は、

 初めて

 恐怖を覚えた。


 これは、

 斬れるかどうかの

 問題ではない。


 ここに、

 “世界の側が

 答えを持っていない”


 剣を、

 抜く。


 久遠は、

 小さく呟いた。


「……じゃあ、

 俺が決めるしか

 ないじゃないか」


 拒否権は、

 なかった。


 だが――

 覚悟は、

 あった。


 この侵食は、

 久遠一人では

 終わらない。


 そう、

 確信していた。

第49話では、

「選択肢が消える瞬間」を描きました。


久遠は

戻ることを選んでいません。

選ばされています。


次は――


“存在未確定”の敵との初接触


鑑定眼MAXでも見えない恐怖


剣が“世界に干渉する”瞬間


へ進みます。

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