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第47話:剣を置いた現場

 その日は、

 剣を持たなかった。


 腰には、

 鞘だけ。


 中身のない、

 軽さ。


 中層第十四区画。


 編成表を見た瞬間、

 久遠は察していた。


 ――斬る前提だ。


 誰も、

 退路を真剣に

 考えていない。


 誰も、

 役割を

 確認していない。


 「久遠がいるから」


 それだけで、

 成立している。


 戦闘開始。


 最初の一体。


 前列が、

 突っ込む。


 久遠は、

 動かない。


 斬らない。


 距離が、

 詰まる。


「……え?」


 誰かの声。


 久遠は、

 低く言った。


「自分で、

 判断しろ」


 混乱。


 動きが、

 止まる。


 次の瞬間、

 第二波。


 想定外の

 湧き。


「久遠さん!」


 呼ばれる。


 だが、

 久遠は

 動かない。


 剣がない。


 撤退判断が、

 遅れる。


 誰も、

 責任を

 取らない。


 結果。


 一人、

 死亡。


 二人、

 重傷。


 撤退。


 帰還後、

 沈黙。


「……なんで」


 誰かが、

 絞り出す。


「なんで、

 斬らなかった」


 久遠は、

 答えた。


「剣を持って

 いなかったからだ」


 怒号。


「そんなの、

 理由になるか!」


 久遠は、

 視線を上げる。


「なる」


「俺の剣は、

 保険じゃない」


「お前たちが

 無謀になる理由を

 断つためだ」


 誰も、

 納得しない。


 管理課。


「……想定以上だ」


 課長代理は、

 報告書を見つめる。


「死亡一、

 重傷二」


 久遠は、

 頭を下げなかった。


「これが、

 現実です」


「俺の剣が

 ある現場は、

 歪んでいる」


 処分は、

 出なかった。


 だが――

 配置が、

 変わった。


 久遠、

 前線配置停止。


 夜。


 久遠は、

 剣を

 箱から出す。


 久しぶりに、

 重みを感じる。


「……俺の剣は、

 人を救わない」


 そう、

 呟いた。


 救うのは、

 覚悟だ。


 だが、

 それを

 与えることは

 できない。


 久遠は、

 剣を

 再び収めた。


 前線から、

 外された夜。


 境界は、

 静かだった。


 嵐の前の

 静けさのように。

第47話では、

「強者が剣を置いた時に露呈する現場の脆さ」を描きました。


久遠は、

斬らなかった。

その結果、

人は死にました。


ここで物語は、

大きく転びます。


次は――


久遠不在の前線で起きる大規模事故


管理課の判断ミス


久遠が“戻る理由”ではなく

“戻らされる理由”


へ進みます。

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