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第42話:決断の代行

 呼び出しは、

 非公式だった。


 会議室ではない。

 管理課の応接室。


 記録も、

 立会人もいない。


「……頼みがある」


 課長代理は、

 深く頭を下げた。


 久遠は、

 無言で待つ。


「現場が、

 判断できなくなっている」


「死亡を恐れ、

 前に出られない」


「結果、

 撤退判断が遅れ、

 被害が拡大している」


 久遠は、

 頷いた。


「知っています」


「だから、

 君に――」


 課長代理は、

 言葉を詰まらせる。


「戦わずに、

 判断だけをしてほしい」


 久遠の、

 視線が上がる。


「責任は、

 管理課が持つ」


「君は、

 声を出すだけでいい」


 久遠は、

 しばらく沈黙した。


「それは……」


「俺を、

 “判断装置”にする

 ということですか」


 課長代理は、

 否定しなかった。


「……そうだ」


 久遠は、

 目を閉じる。


 再び、

 選ばされる。


 だが今回は、

 剣ではない。


「条件があります」


「何でも言ってくれ」


「俺の判断は、

 現場で最優先」


「反論は、

 撤退後にのみ」


「そして――」


 久遠は、

 はっきり言った。


「俺は、

 誰の命も

 保証しない」


 課長代理は、

 頷いた。


「それでいい」


 初任務。


 中層第九区画。


 久遠は、

 後方に立つ。


 剣は、

 抜かない。


 視線だけで、

 全体を捉える。


「……前列、

 三歩下がれ」


 声は、

 静かだった。


 だが、

 全員が動く。


 迷いが、

 消えた。


「右翼、

 切り捨て」


 一瞬、

 躊躇。


「従え」


 命令は、

 冷たかった。


 右翼が、

 下がる。


 包囲が、

 解ける。


 被弾。


 だが、

 致命はない。


「ここで、

 撤退」


 誰も、

 異を唱えない。


 帰還。


 死者、

 ゼロ。


 重傷、

 一。


 医療室。


「……正しかったですか」


 若い冒険者が、

 久遠に尋ねる。


 久遠は、

 首を横に振った。


「分からない」


「だが、

 迷わなかった」


 それだけだ。


 報告書。


 判断介入:1

 死亡:0

 重傷:1


 管理課は、

 この数字を

 評価した。


 だが、

 久遠は知っている。


 これは、

 救いではない。


 選別だ。


 剣を振らずに、

 命の流れを

 切り分ける。


 それでも――

 現場は、

 それを求めた。


 夜。


 久遠は、

 自室で

 剣を磨く。


 まだ、

 使わない。


 だが、

 いつか。


 判断だけでは

 足りない日が来る。


 それを、

 久遠は

 もう理解していた。

第42話では、

「戦わないが、最も重い役割」を描きました。


久遠は

英雄にも、

逃亡者にもならず、

**“決断の代行者”**になります。


ここからは


判断が常態化することで起きる歪み


久遠に依存し始める現場


「剣を取らないこと」が限界を迎える瞬間


へ進みます。

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