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第17話:再調査班、出発

 集合は、まだ夜が明けきらない時間だった。


 ダンジョン管理課・中層対応棟。

 再調査班専用の待機室は、静まり返っている。


 久遠 恒一は、壁に背を預け、腕を組んで立っていた。

 剣は、腰ではなく背中にある。


 今回の任務は、殲滅ではない。

 目的は調査と帰還。


 それを、全員が理解している……はずだった。


「久遠さんですよね」


 声をかけてきたのは、若い女性だった。

 装備は軽装寄りだが、無駄がない。


「はい」


「技術協力枠って聞きました。

 ……正直、助かります」


 彼女は、そう言って頭を下げた。


 久遠は、視線を逸らす。


 助かる、という言葉が、

 自分の中でまだ重かった。


 班の人数は、六名。


 ・前衛二

 ・中衛二

 ・後衛一

 ・技術協力一(久遠)


 指揮は、管理課のベテラン職員。

 元自衛官だという。


 全員が揃ったところで、ブリーフィングが始まる。


「今回の目的は三つだ」


 モニターに地図が映る。


「一、空白区画の実在確認」

「二、未知個体の有無の確認」

「三、可能であれば、行方不明者の痕跡回収」


 最後の項目で、室内の空気が変わった。


 誰もが、可能であればの意味を理解している。


 久遠は、静かに手を挙げた。


「一点、補足があります」


 全員の視線が集まる。


「空白区画は、敵が強いわけではありません。

 空間が不安定です」


 数名が、眉をひそめる。


 理解できない顔。

 だが、指揮官は黙って聞いている。


「強制移動、位置ズレ、

 場合によっては――

 “その場にいなくなる”可能性があります」


 室内が静まり返る。


「対策は?」


「これです」


 久遠は、試作装備を取り出した。


 座標錨(試作)


「全員分はありません。

 前衛一名と、後衛一名に」


 指揮官が、即座に判断する。


「前衛は俺が持つ。

 後衛は……」


「私が」


 後衛の女性が、手を挙げた。


 迷いはなかった。


 久遠は、彼女に装備を手渡す。


「無理はしないでください。

 これは“絶対”じゃない」


「分かってます」


 彼女は、短く答えた。


 ダンジョンゲート前。


 金属製の扉の向こうで、

 空気が歪んでいる。


 入る前に、指揮官が言った。


「撤退判断は、俺が出す。

 異論は認めない」


 誰も、反論しなかった。


 ゲートをくぐる。


 中層特有の、重い空気。


 久遠は、即座に鑑定眼を最大にする。


 見える。


 地形。

 魔力の流れ。

 ――歪み。


 やはり、ある。


 進むにつれ、

 音が少なくなる。


 モンスターの気配も、薄い。


 「……静かすぎる」


 前衛の一人が、呟いた。


 久遠は、歩みを止める。


「ここから先、

 隊列を詰めてください」


「理由は?」


「離れると、戻れない」


 冗談ではないと、

 声で伝えた。


 誰も、笑わなかった。


 空白区画の境界。


 地図では、ただの通路。


 だが実際には――

 境目が、存在しない。


 一歩踏み出した瞬間、

 足元の感触が変わる。


 久遠の鑑定眼に、

 警告のような表示が走る。


 ――空間固定率:低下


 久遠は、即座に叫んだ。


「止まって!」


 その瞬間。


 視界の端で、

 誰かの輪郭が、揺らいだ。


 まるで、

 存在が、薄くなるように。


 「――っ!」


 指揮官が、即座に腕を掴む。


 揺らいだのは、

 前衛のもう一人だった。


 全員が、足を止める。


 空白区画は、

 すでに、彼らを認識していた。


 撤退は、

 もう簡単ではない。

第17話は「出発=侵入」の回です。

まだ戦闘は始まっていませんが、

“戻れない条件”が揃い始めました。


次話では、

・初の空白区画内戦闘

・座標錨の実戦効果

・久遠の判断が命を分ける瞬間

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