渡り鳥の道― Echo Story
まだ夜の名残が空に漂うころ、私は息子のユウタと池へ向かって歩いていた。
頬を刺すような冷たい空気の中、心の奥には、これから目にする光景への静かな期待があった。
「今日は、鳥さんたちがごはんを食べに行くところが見られるんだよ」
そう声をかけると、ユウタの目がきらりと光り、わくわくした顔を見せた。
池に着くと、表面はうすい氷に覆われていた。
朝の光が差し込み、氷はガラスのようにきらめいている。
鳥たちはじっと身を寄せ合って、静かに飛び立つ時を待っていた。
鳥たちが身を寄せ合っていた場所は、そのぬくもりで凍らずにいる。
やがて、一羽の大きな白鳥が動き出す。
白い体を優雅にすべらせ、氷へ向かって行く。
パリッ、パキッ、ミシミシ・・・
氷が割れる音が響き、白鳥は泳ぎながら道を切り開いていく。
その後ろに、数えきれぬほどの鳥たちが列をなし、白鳥のあとを追った。
冷たい空気が翼に触れると、ふわりと白い湯気が立ちのぼり、朝の光に溶けていった。
鳥たちは羽ばたき、空へ舞い上がっていく。
列をなし、餌場へと飛んでいく。
ユウタは息をのんで見守っていた。
「すごいね…白鳥が道をつくって、みんなで進んでいくんだね」
私はうなずき、言葉を返した。
「鳥たちは道を覚えて、季節ごとにいる場所を変えるんだ。冬にはここに来て、春にはまた別の場所へ向かうんだよ」
その瞬間、私の胸に古い記憶がよみがえった。
まだ私がユウタほどの年だったころ、同じように父に手を引かれてこの池に来た。
寒さに震えながら見上げた空。
氷を割って進む白鳥の姿。
そのとき父が言った言葉が、今も心に残っている。
――自然には道がある。人もまた、その一部なんだ――
世代を越えて、同じ池で同じ光景を見ている。
父から私へ、そして私からユウタへ。
鳥たちの列は、まるで時間そのものをつないでいるように見えた。
その姿は一本の道となり、朝の光に照らされてきらきらと輝いていた。
「来年もまた見に来たい!」
私はその言葉に微笑み、肩に手を置いた。
「そうだな。また見に来よう」
氷を割る音も、白い湯気も、あの朝の光も――すべてが、親から子へと受け継がれる冬の記憶だった
このお話は、子供用と大人用の二つのお話があります。
子どもの頃の、きらきらした記憶。
皆さんにもありますか?




