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5話 スキル発動

 ここは、ラットダンジョン。

 ダンジョンの中でも最も難易度の低いダンジョンではあるが、全てのダンジョンに共通する事がある。

 それは、ボスがどのダンジョンでも強いという事。

 ボスにダンジョンのランクは関係なく、スキルや戦法が最大の違いである。

 運が悪いと上級者でも、ここラットダンジョンのボスに苦戦するらしい。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 僕は、鳥の魔物であるコアトルに追いかけ回されていた。

 ダンジョン内をひたすらに逃げ回る。

 元の道なんて、全く気にしていなかった。


 コアトルは、とても攻撃的でありスピードもそこそこ速いFランク級の魔物。

 見つかって標的にされてしまうと、とても厄介な魔物である。


 このままでは、僕の体力の方が先に尽きてしまう。

 いつまでも逃げていられるわけじゃないから、何か上手く撒く方法を見つけないと。


 僕は、戦略的な考えに移行した。

 そんなことを言いながらも足は止めていなかった。

 いざ行動しようとするも、進んだ道が悪く目の前は行き止まりになってしまっていた。


「や、やばい!」


 咄嗟に戦略的な方法を思いつく事が出来ず、壁ギリギリまで思いっきり走り続けた。

 だが、壁が徐々に近づくにつれ、死が近づいてくるような感じがした。

 でも、諦めるわけにはいかない。レドルンドたちを見返すために。

 この状況からでも打開する事ができる策略。

 一つ可能性があるとすれば、効果もわからない僕のスキル。

 その可能性に賭けた僕は「もうどうなってもいい!」とスキルを思いっきり叫んだ。


「透視!!」


 壁に激突するその瞬間、一瞬にして辺り一面景色が変わった。


「何処だ? ここ」


 周りを見渡すが全く見覚えのない景色だった。

 コアトルに追いかけられて記憶にないだけの可能性もあるが、何よりあんだけ追いかけてきてたコアトルが一体もいない。

 絶対に何かおかしいと思った時、壁に激突する瞬間に叫んだスキルの事を思い出した。


 あのスキルが僕を助けてくれたってことか?

 いやでも散々俺を痛い目に合わせてきたあのスキルが俺を助ける優秀な能力を持っているわけがない。


 僕は疑いながらも、もう一度スキルの名前を呼んだ。


「透視」


 すると、視界に辺り一面無数の数字が表示された。


「な、なんだこれ……。信じられない。僕のスキルに能力があったなんて……」


 今自分が見ている景色に頭が追いつかず、数秒その場に立ち尽くした。

 落ち着きを取り戻すため、深く深呼吸をした。


 まずは、状況を理解しよう。

 コアトルに追いかけられて、ひたすら逃げ回ったけど、先が行き止まりで一か八かでスキルを叫んだらここに来たってことか。


 そしてこの無数の数字は、スキルを発動するとみえるようになったって事はこれが僕のスキルの能力。

 ここに転移した原因にスキルが関係している事は間違いないだろう。


 だとしたら、この無数の数字を解明すれば何か掴めるかもしれない!

 けど、どうすれば……。


 数字だけがある今の状況に何も出来ず僕は困惑していた。


 考えていても何も変わらないなら、まずは色々試してみるしかない!


 そう思い、無数の数字の中でも一際目立っている数字の隣に鬼のようなマークがある場所に向かう事にした。


 不思議な事に、一体も魔物と出くわさなかった。


 数字のある場所に向かうとそこはボスがいる部屋だった。

 だけど、僕にはまだ早いと引き返そうとした時ある事に気づいた。


「この数字……壁の向こう側まで表示されてる?」


 スキルによって表示された数字が、壁を透視して表示されていることに気がついた。


 やっぱり、この数字は僕のスキルと関係があったんだ。

 だけど、数字が出るだけで何も起きないのならやっぱり僕のスキルって最弱なのか。

 場所を教えてくれるものだったとしても、大体の冒険者は魔物を倒す事ができる。

 追いかけられて、逃げ回って、道に迷うなんてことはほとんど無いだろう。

 僕が弱すぎるが故に与えられたスキルなのか。


 だけど、そうなるとあの転移はなんだったんだ?


 そう思い僕は、この数字に何かあるのではないかと数字を読み上げた。


「5、3、7、2、8」


 その瞬間、自分の体がダンジョン内を猛スピードで移動した。

 まるで自分がダンジョンを操っているようだった。

 魔物も壁も全てを無視してたどり着いた先は、ボスを倒すともらえる宝箱の前だった。


「な、なんだこれ……」


 またもや状況を理解できずに立ち尽くしてしまった。


 と、とりあえず宝箱を開けてみるか。


 中を開けると、そこにはクリア報酬の「銅の短剣」が入っていた。


「こ、これって……。僕はダンジョンをクリアしたって事か?」


 宝箱に入っていた銅の短剣を手に取ると、自動の転移魔法でダンジョンの外に移動した。


 とりあえず、家に帰ってから情報を整理しよう。

 もしここでレドルンドたちに見つかったら、絶対に怪しまれて何かしらしてくるに違いない。


 僕は、銅の短剣を片手に家へ向かった。

 


 ――――――――――――


 ヴィリー・ルート 15才 男

 レベル:1

 MP:10

 攻撃力:30

 防御力:30

 素早さ:30

 スキル:透視

 装備:銅の短剣


 ――――――――――――

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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