玲奈と男子と恋と。
今は春。植物が咲き始め、ぽかぽか温かい中、私・望月玲奈はとても憂鬱な気分だった。
あの男子嫌だなぁ。
クラスメイトが恋バナに花を咲かせている中、私からは一向に男子への苦手意識が消えない。
「玲奈、どうしたの?」
ため息を付く私に声をかけてくれたのは紺青すみれ。私の親友である。
「ううん、なんでもない。ただぼーっとしてただけ。」
「また男子のこと?」
「え、、、まぁ、、うん、、、。」
すみれは感が鋭い。みんなを見透かしたような茶色がかった目は今日も私の図星を指す。
男子が嫌いなのは変なの?なにがかっこいいのかほんとわかんない。
でも。
私の男子嫌いは主に兄弟関係のせいだと思う。
私の家族構成は、お母さん、お父さん、今年の春から高校生のお兄ちゃん、碧と、私、私の双子の弟の玲衣、小学5年生の三男の悠と、小学2年生の四男、咲だ。
碧は、高校生になるというのに、勉強ができないでゲーム三昧。玲衣は、私と同じ中学2年生のはずなのに、二卵性だからか、仲は良くないし下ネタばっかりだし嫌いなところばっかりで。小学5年生の悠は、碧に影響されたのか、最近はゲームばっかりやっている。ゲームをやめたかと思えば、下ネタを面白いと感じ始めたらしい小学2年生の咲と変なことばっかり言って遊んでいるのだ。
そんな、男子の像を見せられて日々過ごしている私は、男子が鬱陶しいと感じるし、みんなバカでアホで、ろくなことしてなくて、ほんっとうにしょうもない生き物だと思っている。
今の御時世、男女差別だとか言われるかもしれないけど。
でも。
苦手なものは苦手なのだ。
「おっはよー!」
「うわっ!?麻緒!?」
急に抱きつかれて、振り向くと友達の大崎麻緒がいた。
「れなぴょーん、ぼーっとしてると危ないよ〜?」
「おはよー麻緒。」
「あっ、おはよぉ、すみれぇ…ってあ!?王子くん!」
麻緒が大きな声を出して、ぴょこんと飛び跳ねる。
「王子、、、くん?そういう名前なの?」
私が聞くと
「え、れなぴょん知らないの?ほーんと、恋愛には鈍いよね。あの子は大路星奈くんで、バスケ部所属、めちゃめちゃかっこよくて、"王子"って呼び名の理由は名字が大路なことと、かっこいいから♡…って、めっちゃ有名なのに玲奈っていっつもそう、だよねぇ。」
と麻緒が表情をいちいち変えながら答えてくれる。麻緒は幼い頃から変わらず、ずっと夢見がちな少女なのである。
恋愛もいち早く興味を持ったし、今は付き合って一年経つの彼氏がいる。
「麻緒、興奮しすぎ。玲奈、若干引いてない?」
「あぁ〜、ごめん。じゃ、さっさと教室いこぉ〜。今年の担任割とイケメンだし〜、学校行くのも苦じゃないよね〜。」
ずっと喋り続ける麻緒は止まらない。私たちはそんなおしゃべりな麻緒と一緒に教室へ向かった。
「おはよう、玲奈、すみれ、麻緒。」
教室に着くと友達の咲乃桜が待っていた。
「桜、おはよー。」
「桜っち!おはよぉ〜!」
私とすみれ、麻緒が同時に桜に挨拶する。
「麻緒、朝から騒ぎ過ぎじゃない?」
いつでも冷静な桜が鋭くツッコむ。
「あぅ、、、でも!王子がいたんだもん♡」
「だからって、男子が苦手な玲奈を巻き込むのはちょっと違うんじゃない?」
「ん、、、ごめんね、玲奈。」
麻緒がしゅんとする。
いつものことだからケンカにはならない。桜が麻緒の暴走を止めてくれる、いわゆるリードを握ってるみたいなものだ。
ちょうどいいバランスでできている私たちは誰も離れず、今までこうして上手に過ごしている。
「失礼します。咲乃さんいますか。」
そんな平穏を壊しに来たのは顔にばんそうこうを貼った男子。
教室のドアのところで、桜を呼んでいる。
あからさまに怖そう。
「あ、私、かな。すぐ行ってくるからちょっとまってて。」
でも、桜はいつもの調子でさらっとそう言うと、行ってしまった。
「怖そうだよね。大丈夫かな、桜。」
すみれが不安そうに呟く。
「うちも不安だよ。」
そう切り出したのは以外にも麻緒。
「え?麻緒、どうしたの?」
いつもに増して不安そうな顔の麻緒にそう問いかけると麻緒はより一層不安そうにして、
「あの子、九重渚って言ってね。他校の子とかも巻き込んで喧嘩する、悪い子だって噂なんだよ。」
と告げた。
悪い予感が胸の中に広がっていく中、桜が少し顔を赤らめながらこちらに来た。
「あのね、私、、、九重くんに告白された?かもしれない、、、。」
ちょっと疑問気味に言う桜には今まで見たこともない戸惑いがあった。
「えっ、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
麻緒が急に大きな声を出し、教室中全員びっくりで。
「麻緒、落ち着いて。今日は、多分話せないけど、、、明日には話せると思うから、、、。」
桜はそう言うと、教室を出ていく。
突然のことに、私含め、すみれ、麻緒までもびっくりしていた。
次の日の昼休み。
今日は昨日のことを話しに昼休みは図書館に集合だった。
、、とはいえ、まだ誰も来てないか。
誰もいない、シーンとした図書館をぐるっと見渡し、近くの椅子に座った。
「あ、玲奈!ごめん、待たせた?」
そう言ってまず最初に来たのはすみれ。
「大丈夫、まだ私しか来てないし。」
「よかった、、、。」
ほっとした表情でそういうすみれは、少し緊張もしていそう。
そこへ、
「失礼しまーす!」
「失礼します。」
麻緒と桜が一緒に来た。
「麻緒、桜。こっちこっち。」
図書館だから小声で麻緒と桜に呼びかける。
「ねぇねぇ、それで、九重くんの話!」
麻緒が少し興奮気味に、桜に聞く。
「私、、、九重くんに告白された、、?」
みんな、相槌を打ちつつ、続きを促す。
「でも、私は今はわからないって答えたの。本当に、好きか嫌いか、急に言われてもわからないの。」
少し困惑している桜は不安そう。でも、少しだけ嬉しそうである。
「じゃあさ、付き合ってみちゃえば??」
そう、軽く言ったのは麻緒。
「えっ、でも、、、。」
「嫌いだったら、ごめんなさいって別れちゃえばいいけど、好きになれたなら付き合いを伸ばしてみてもいいんじゃない?もし、そこで迷ったならまたいつでも相談に乗れるし!」
麻緒がそう明るく宣言する。
「うん、ありがとう。なんだか勇気が出たかも。」
桜も不安そうな顔はもうなく、明るい笑顔でそう言った。
私も、それだけで終わればいいなと思いながらその日は家に帰った。
連絡があったのは次の日の正午あたり。
『玲奈、急に連絡ごめんね。市立図書館に来てくれる?』
ちょうど休みの日で、何も予定がなかった私は快く了承した。
「やっほー、桜。」
市立図書館に行くと、飲食、おしゃべりオーケーな少しだけ広いロビーに桜が一人、ちょこんと座っていた。
「来てくれてありがとう、玲奈。相談何だけど…」
そう切り出した桜はなんとなく不安そうで。
話してくれた内容は、主に九重くんが不良で、悪い子みたいだということだった。
「恋愛に興味がない玲奈ならアドバイスなく、心に溜まったものを吐けるかなって思ったんだ。ごめんね、呼び出して。」
少し泣きそうな顔をしている桜は、好きと嫌いの間で揺れている。
少しでも触れたら落ちてしまいそうだ。
「なにかあったら聞かせて。力になるよ。」
私は、笑みを浮かべて桜に言った。
桜は、涙を拭いて立ち上がると、そのまま市立図書館を去っていった。
ちょっとしたあと、席がなく、ふらふらしている女の子がやってきた。
「この席座る?」
声を掛けると女の子は周りを見渡したあと
「いいんですか?」
と言った。
「いいよ、大丈夫。勉強するの?」
「はい、、、。私、涼宮かんなです。中1です。」
「私は望月玲奈、中2。」
「玲奈先輩、、、助けてくださり、ありがとございました。」
かんなちゃんは、小さくペコっとお辞儀をし、すぐに勉強モードに。
することがなく、なんとなくかんなちゃんをじーっと見つめていると、かんなちゃんが、
「どうかしましたか?」
と聞いてきた。
「あ、ううん。なんでもない。、、、かんなちゃんは、、、恋愛とか興味あるの?」
密かに悩みな、恋愛のことを聞いてみる。
私は、本当に恋愛に興味がない。
男子という生物を好きになったことがないから。
だけど。
そんなの私だけで、桜は告白されるし、すみれだって意外と恋愛は大事にしている。
「私、ですか?私は、、、叶わぬ恋をしていました。」
「叶わぬ恋?」
「はい、、。」
少し悲しそうな顔をするかんなちゃんが続ける。
「好きな人がいたんです。先輩で、とってもかっこいい。でも、その人には彼女がいて。失恋してからは恋愛が嫌いになりましたけど。一応、恋愛はしたことありますよ。」
「そう、なんだ。」
恋愛って、誰でもするものなのかも。
「私って、恋愛したことなくて、、、いつか好きな人とかできるかな、。」
そう呟くと
「たぶん、いつの間にか好きな人ができてますよ。玲奈先輩、可愛いですから彼氏とかできちゃうかも。恋愛したらわかります。恋をしている人がなぜあんなにキラキラしているのかも、男子がどういうものなのかも。夢中になってその人のことしか見れない、みたいなことが先輩にもきっと訪れると思いますよ。」
とかんなちゃんが穏やかな笑みでそう言った。
確かに、そうかもしれない。
ちょっとだけ遅いだけかも。
そんな出会いは、すぐ近くにあるのかも。
次の日は校内図書館にみんなで集まることに。
恋愛相談も兼ねて、お話会だ。
「玲奈、ちょっとはしゃいでる?」
すみれと一緒に向かう図書館は、安全運転。
すみれが声をかけてくれなくちゃ、絶対転んでしまう。
調子に乗って、私が少し走り出したら、すみれもその少し横を走り出す。
ドンッ。
突然鈍い音が響いて、後ろを振り返るとすみれが誰かにぶつかって転んでいた。
手を差し伸べているのは麻緒が言っていた、、、確か、大路くん。
「だ、大丈夫!?」
遅れて私も声を掛ける。
「大丈夫。ごめんなさい、大路くん。」
「僕の名前、、、。いや、僕も前を見てなくて、、、ごめんね。」
大路くんは戸惑いながら、すみれに声を掛ける。
なんというか、すみれしか見えてない。
すみれが立とうとしたとき、すこしふらつく。
「大丈夫?保健室に行ったほうがいいんじゃ、、、。」
私が言い終わる前に大路くんがひょいとすみれをお姫様抱っこする。
「危ないよ、すみれさん。保健室に行こう?」
そのままスタスタと、私をおいて保健室に行ってしまう大路くん。
「えぇ、、、。」
なんだか、何かが始まりそうな予感。
とにかく、おいていかれた私はなんだかちょっといいムードになっていた大路くんとすみれを邪魔しないように図書館に向かった。
「麻緒、大路くんがぁ、、。」
図書館について、席に座って待っていた麻緒にさっきのことを話すと麻緒はすっごいニコニコ笑顔で
「邪魔しないであげよっ。ね??」
と少し圧をかけつつそういった。
「ほんと、麻緒って恋愛関係大好きだよねぇ、、、。」
ふぅ、とため息を付きつつそう言う。
「桜は、どうなの?九重くんとは。」
急に興味をなくしたように麻緒がそういう。
「えぇ、、っと、まぁ、お付き合いしてみようかな、と思って、、、オーケーしてみたんだけど、、、。」
桜の言葉に麻緒がうんうんと頷く。
「あの、別の意味で怖くて、、、。」
「え、どういうこと??」
思わず聞く私に桜も少し苦笑いをして
「なんかね、私にだけ優しいの。私には"桜ちゃん"って呼んでくれるんだけど、他の子には"お前"とか"てめぇ"とかって言って呼ぶらしいの。」
と言った。
「なにそれぇ。ん、まぁでも溺愛されてるっぽいしいいんじゃない?」
麻緒がむすぅっとした顔でそう言ったところで、図書館のドアが開いた。
「ごめぇん、おまたせ、、、。」
ちょっと顔を赤らめたすみれが、こっちに向かってくる。
「あ、すみれ、、、大丈夫だった??」
「ん、まぁ、なんとか?」
ちょっと言葉がふわふわしてるすみれ。
「まぁ、そっとしとこ。」
麻緒がそういうので、すみれには触れず、他の話題になる。
「あのさ、図書館の主の話、しない??」
麻緒がそう切り出す。
「なにそれ、図書館の主?」
みんな、何も知らないみたい。もちろん私も何も知らない。
麻緒の話は誰も知らない話ばっかりだけど、わりとみんな興味津々で聞く。
「あのね、今日も多分いると思うんだけど、、。図書館に毎日来てて、頭めっちゃ良くて、毎日分厚い本読んでるんだって。でも、めちゃめちゃイケメンらしい!それで、、、、同学年で相良刹って言うらしいんだけど、、、知らない??」
麻緒が力説する。
「知らないかも〜。」
「そんなことより、玲奈はまだ恋愛に興味ないの??」
桜が麻緒の話を遮って私にそう聞いてくる。
「あ、えっ、私??」
彼氏ができた途端、恋愛に興味を持ち始めたらしい。
「好きな人いないの〜?玲奈。」
麻緒も、すみれまで興味津々。
「あぁ、んん〜?いないかも、、。あの、告白されたいとか、思ったりするんだけど、、、」
「えっ!?なにそれ??」
「男子が苦手なんだけど、恋愛にはちょっと興味あるっていうか、、、でも、ほんとに好きな人いないし男子は無理なんだけどね、、、。」
少し曖昧に答えるけどそれで十分だったみたいで、
「なんだ、玲奈も恋愛には興味あるのか、、、。」
なんてぶつぶつ呟いている。
「でも、私その主って人にあってみたいかも。」
私がそう言うと麻緒はキラキラした顔で
「じゃあ、自分で探しなよ!運命の王子様は自分で見つけるものでしょ?」
と言う。
まぁ、なんだかわかんないけど、そういうものらしい。
と、言うわけで。
次の日から私の王子様探しが始まった。
調べれば、相良くんは3組。
顔はめちゃめちゃ良い。
性格は、、しらんけど。
頭もいいらしい。
本好き??
「失礼します。」
とりあえず、昼休みは図書館に通うようになった。
本を探してくうちに、一週間もすれば相良くんのことがわかるようになった。
窓際の席でいつも本を読んでいる。
茶色の髪色は窓からくる光で明るく見えて。
いつの間にか。
相良くんを目当てに図書館に通うようになっていた。
見つけるだけじゃなく、毎日見に来たくなった。
なんでだろう。
恋とか、そういうやつ??
わかんないよ。
「どうかした??」
色々考えを巡らせて立ち止まっていたとき、ふと誰かに声をかけられた。
振り向けば、相良くんがいた。
「え、あ、相良くん!?あ、あの、おすすめの本とかある?なかなか本決まらなくて、、、」
そう言うと相良くんはニコッと笑って本棚を少し探し、何冊か候補を持ってきてくれた。
「最近毎日来てるよね。読書デビュー?そんな望月さんにはこの本とか、、、ほらこの文字の大きさがちょうどいいかも。恋愛とか興味あればこの本もおすすめだよ。」
ニコニコと優しい笑顔で本を紹介してくれる。
でも、そんなことより。
図書館に毎日来ていたこととか、本を頑張って読んでることとか、名前とか、知ってくれてたことがなによりも嬉しかった。
「あ、ありがとう、相良くん。」
「いーえ。あっ、俺のことは刹でいいから。」
相変わらずのニコニコ笑顔でそう言ってくれる。
「あ、じゃあ、刹、、、。私も、玲奈で良いよ。、、、、今度、またおすすめ教えてもらっても良い??」
「もちろん。」
刹はニコニコ笑顔でそういうと、また本の世界に戻っていった。
それからも毎日図書館に通った。
刹と話しつつ、おすすめしてもらった本を何冊も読んで。
「この本はここが好きで〜」
「あ、俺も!わかってるね、玲奈。」
なんて、本の話で盛り上がったり。
なんか、男子の苦手意識が、刹の前ではなくなっちゃって。
「俺、主って呼ばれるの嫌なんだよね〜。本が好きなだけなのに。」
刹がむすっとした顔でそういう。
「刹って本好きすぎて友達いないんじゃないの??」
「はぁ〜?って、まぁ事実かも?人付き合い苦手で、友達とかあんまり作りたくないんだ。」
なんて、少し冗談を言ったりも平気になった。
「でも、私のことは??」
「あっ、そ、それは、、、。れ、玲奈のこと、、、、、。」
刹が少し顔を赤くする。
「、、、玲奈、今日はもう帰って、、、。」
刹が、少し小さな声でそういった。
珍しい刹の姿にびっくりしつつ、私は素直に教室に帰った。
「なぁんか、玲奈って最近幸せそうだよね〜。玲奈だけじゃなくて、桜も、すみれも。」
久しぶりに四人で話してたときのこと。麻緒がふてくされた顔でそういった。
「えぇ〜、麻緒が一番幸せなんじゃないの?彼氏と安定して付き合っていられているんでしょう?」
桜がなだめるようにそういうと、麻緒が更に不機嫌そうな顔になって
「彼氏と喧嘩した、、、。」
と言った。
「えぇ!?、、、でも、彼氏がいるだけ良いじゃん。」
すみれがそういう。
「うーん、でもねぇ、、、。って、ということは好きな人でもいるの?すみれ。」
急に目を光らせた麻緒がそうきくとすみれが顔を赤らめる。
「えーと。大路くん、のことが、、、。」
「えぇ、王子!?王子のこと好きになったの??」
すみれの言葉をかき消すような大きな声で麻緒が言った。
「あの、この間、保健室に連れて行ってもらって、、、告白されそうになった、っていうか、、、、。」
「まぁ、幸せそうで何より。あの王子に好きな人ができるとは、、意外だけど。」
すみれがむーんと考えながらそういう。
「ところで、玲奈は相良くんとどうなの?」
桜が話題を私に変える。
「あ、私??んーと、まぁ、恋愛感情なのかはわかんないんだけど、、、好きかもしれなくて…。」
「ふーん、、、それって好きなんじゃないの??」
「わかんないんだよね、、、でも、無性に会いたくなるし、話すときドキドキするし、、、」
「それって恋してるでしょ!」
麻緒を除く3人でわいわい恋バナをしていたところに、麻緒がツッコむ。
「思い切って告っちゃえば?」
「告られるかもよ?」
「ふたりとも頑張りなよ〜。」
ちょっとだけ恋愛先輩の麻緒と桜が私とすみれに向かってそういった。
確かに、そうなんだけど。
これがかんなちゃんの言ってた"恋"なのかなぁ。
確かに、毎日図書館に行くことが楽しみで、キラキラした日常を送ってる気がするし。
刹だけは男子だけど心を許してるし、ちょっと、かっこいいし可愛いなって、思っちゃう、、、。
「なぁんか姉ちゃん、最近ニヤニヤしてて気持ち悪ぅ。」
家に帰って、刹くんのことを考えていたときのこと。
弟の咲がそういった。
小2で、ちょっとずつ嫌味を言えるようになってきて、いくら末っ子だとはいえちょっとムカつく。
「あ、玲奈、恋でもしたんじゃね?」
余計なことを言い出すのは双子の弟、玲衣。
「えっ、玲奈彼氏いるの!?」
話を盛るのは兄の碧。
「えぇ、お姉ちゃん彼氏ぃ〜?」
恋愛に興味を持ち出した小5の悠がその話に乗ってくる。
「はぁ〜〜〜。あのねぇ。私は彼氏なんかいません!」
ちょっと怒りを込めて言うと、
「確かにな〜、男子が嫌いな玲奈に彼氏なんてできるわけ無いか〜」
と、ニヤニヤ嫌な笑いで玲衣がそう言った。
「はぁ?誰のせいで男子が苦手になったと思ってるの?」
「え〜。わかんなぁい。」
どこまでもうざい玲衣。
男子ってやっぱり嫌いだ。
だから、刹って特別で。
やっぱり、刹のこと好きなのかも。
でも、、、わかんないよ。
好きって気持ちってこんなに苦しいの?
ドキドキして、嬉しくて、恥ずかしくて、でも、好きなのかわからなくなったりして、胸が苦しくて。
これが好きって気持ちなの?
「おはよー!」
結論が出ないまま次の日を迎えた。
「ねぇ、玲奈。おはよー!」
「すみれ、おはよ。」
深く考えすぎてすみれに気づけてなかった。
「考え事?刹くんのこと?」
「うん、まぁね、、、。」
そこまでいったとき。
「ごめん、玲奈いる??」
刹が教室のドアに顔を出した。
「わ、私??」
戸惑ってキョロキョロする私に刹はニコっと笑いながら
「うん、玲奈だよ。」
と言った。
廊下をどんどん進んでいく刹。
沈黙のまま、気づけば図書館の前だった。
ガラッとドアが開く音が響いて。朝の誰もいない図書館に朝日がキラキラ輝いていた。
「あのさ、玲奈。」
そっと、刹が切り出す。
「うん。」
「昨日、ごめん。その、、、俺、玲奈のことが好きで、、、。」
思わずの告白にドキッとしてしまう。
「"友達"じゃなくて、俺の中では"好きな人"だったから、、、。玲奈って特別で、、、。お、俺と付き合ってください!」
刹が頭を下げる。髪に光が明るく反射する。
「私も、、、私も刹のことが、好き、だよ!」
太陽の光がきれいな朝。
私の恋は、まだ始まったばかりです。