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証明問題

作者: DuG

短編です。

私たちのクラスは、ごく一般的な学級。

みんな、仲いい人同士が組みを作り、休み時間になったら集まってそれぞれの好みの話をする。

運動が好きな人、苦手な人。

勉強が得意な人、苦手な人。

化粧に興味がある人、ない人。

そして、いじめる人、いじめられる人。

だが、それを助ける人はいない。そんなクラス。


そんなある日、毎朝顔を合わせている笑顔な担任から

授業の変更の連絡があった。


『道徳』の授業が、『数学』に代わるらしい。


小学校の授業は全て担任が行っているから不思議な変更だとは思ったが、

誰もそこに突っ込む人は居なかった。


「今日の授業は算数の証明問題だ。」


担任は、そう話しだした。


図形問題だと思ったら、数式の証明問題らしい。


先生は、そういうと黒板におもむろに7の段を描き始めた。


『7×1=7  7×2=14

 7×3=21 7×4=28

 7×5=35 7×6=43

 7×7=497×8=56

 7×9=63       』


クラス中がクスクスと小さな笑い声であふれ出す。


「田中?どうかしたか?」

「先生!!計算が間違っています!!」


その指摘でクラス中の笑い声がどっと大きなものに変わる。


「おっとすまないな。」


「・・・で、何がそんなに可笑しいんだ?」


その一言でクラスは一瞬のうちに冷え切った空気に変わる。


「いや・・・そんな初歩的な計算ミスですよ?」


クラスでも勉強のできる女子が声を上げる。


「そうだな、でも、なぜこのミスで笑ったんだ?」


「・・・・・・」


女子は声を上げることはできなかった。


「ふむ、だれも声を出せないから先生が言おう。

 ・・・・・君たちはね、先生のミスを馬鹿にしたんだよ。」


「・・・・・・」


クラスの全員が黙り込む。


「先生が間違っていた、正しくなかったのは事実だよ。」

「でも、君たちはその『正しい事』で先生を嗤ったんだよ。」


「・・・・・・」


「正しいなら何をしてもいい。正しいならどんな方法を取ってもいい。」


「それは正しさを知る者の『傲慢』でしかないんだよ。」


「正しい事をかざしてやることが、必ずしも正しいとは限らない。」


「・・・・・・」


キーンコーンカーンコーン


「おっと、授業はここで終わりだね。では、『道徳』の授業の証明問題を終了する。」


そう言うと先生は教室を後にした。


この日を境に、クラスの雰囲気は変わった。


まだ、全部変わるわけではないけど、知恵遅れの『僕』への影響は少なくなった。


僕の最も数学的ではない、最も好きな数学問題の証明を胸に秘め。

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