疑い
国内に目を向ける。新体制の構築、そして…。外の情勢も動き出した。大きな動乱か。
ラントは部下達から幹部をアデミールと共に選ぶこととした。先代レイジが退位するとともに隠居するつもりであった臣下も多く、ラントはこの機に一新することとした。又、ラント自身の歳の近い者を側に置く為でもあった。新しく決定した臣下は三人。エケトロイ=コンソート、ペルヴェネツ=リサーチ、ヘイルダム=クリュフルスト。エケトロイ=コンソートはラントと3歳差であった。彼も初陣は先のヴィット城の戦であったが、彼は騎兵として武勲を立て、ラントと歳も近い事から抜擢された。ペルヴェネツ=リサーチは隠居した家臣であるアルフェント=リサーチの息子で、歳は34歳であった。銃の扱いに慣れ、また、歩兵運用に長ける人物であった。何より、アデミール含めた旧家臣達の勧めであった。ヘイルダム=クリュフルストは騎馬の運用や城の防衛等に長け、歳も30歳と若かった。体制を一新したラントは国内の産業の発展に目をつけ、より鎧や剣の生産を高め、また、農業の納める穀物の見直し等を始めた。
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「ヴィーランドの騎馬隊がこちらに突撃を!鉄砲隊が突破されました!」
大将であろう男に家臣が伝える。
「ここまでは予想通りよ、歩兵を前へ!」
歩兵が前に並列し、槍を構えて騎馬隊を向かえる。ドドドと、地響きにも聞こえるその騎馬隊の足音が遂に歩兵に届く、かに思えた。が、ヴィーランドの騎馬隊は歩兵を避けた。後ろから現れたのは歩兵だった。歩兵隊はヴィーランドの歩兵に手間取り、肝心の騎兵に対応できない。
「敵の歩兵はいい、騎兵は!?」
ヴィーランドの騎馬隊は歩兵を隔離する様に塞いでいく。
「こちらの動きは読まれていたのか!?騎馬を前に出せ、加勢させよ!」
しかし、ヴィーランドの騎馬隊の陣を崩せず、ノディント軍は兵を次々と消耗していった。
「最早、手は無し…ここまでか…」
1695年の10月5日。ヴィーランド帝国はノディント王国に侵攻した。ノディント王国はヴィーランド軍を抑え込めず、一月で陥落した。ヴィーランド帝国は征州でも屈指の強さを誇り、ヴィーランド帝国軍の騎馬隊は征州一とも言われ、各国から畏怖の念を向けられていた。黒一色の甲冑と騎槍は見た者の足を竦ませるとまで言われていた。これはアイヴ王国にもその報が入った。
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「そんな事が…」
「ヴィーランド軍、噂は耳にしていたがここまでとは思わなんだ…」
エケトロイがそう言った。若い彼はヴィーランド軍の強さ等噂を聞いた程でしか知らなかった。
「私もヴィーランド軍を、特にヴィーランドの騎馬隊の奮闘の振りは良く聞きますが、実際、目にした事はありません」
「ペルヴェネツ伯も目にした事が無いので?自分は未だ14の故、目にした事等…そう言えば父上は目にした事があると聞いております。アデミール、何か知っている事はありますか?」
ラントはアデミールに聞く。
「そうか…ペルヴェネツ殿はあの時王都の守りに居たから知らぬのは当然…。私は先代レイジ王とともにヴィーランド騎馬隊と刃を交えた事は二回程。しかしながら、あの騎馬が強いのはアンドレア=ウンベルト帝の采配にこそあると考えます」
「ほう、それは?」
「私は一度だけ、アンドレア=ウンベルト帝の指揮する騎馬隊と戦わせて頂きましたが、その強さと云うのは100の騎馬で10000の兵に勝る士気と、指揮にあると考えます」
ヘイルダムはもう一つ聞く。
「アンドレア帝が指揮をしない騎馬隊は?」
「アンドレア=ウンベルト帝が自ら指揮を振らぬ騎馬隊は先程の騎馬には明らかに劣ります」
ハッキリと言った。流石老臣と誰もが関心した。二回も刃を交えたのだ。アデミールが優秀な軍師たる所以なのはここに有りと言ったところか。
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その日、ラントの元にとある男が尋ねた。デボロ=テバル。階級は男爵。セユンズ村を納める、ラントの祖父から仕えた旧臣であった。
「デボロ殿、入ってどうぞ」
「は…」
デボロはラントの前に跪いた。フルフルと震える。何故震えるのか。彼は今、とある嫌疑をかけられていた。それは彼がズデーデン王国と繋がって、セユンズを明け渡そうとしているのではという嫌疑であった。
「何故呼ばれたか、お分かりか?」
「…いえ」
「嫌疑がかけられているそうだ。ズデーデンと繋がり、セユンズを明け渡すとな?無論信じたくは無い。本当の所、どうなんだ?」
「ま、まさか。私はラント様のお祖父様の頃からお仕えさせていただいております故、その様なお話、全くの、法螺話に御座います」
デボロは当然とでも言う様に否定した。
「疑わしいな、では、先日、ロジットに迷い込んだとほざく人間を処罰しなかったではないか、内通者では?」
エケトロイはそう詰めた。そもそも、本当に繋がっているならば敵方と繋がっている、なんて自白する者は居ない。エケトロイの疑いは至極真っ当であった。
「まぁ、待ってください。ふむ、もう一度機会をやろう。が、次、呼ばれた時は、覚悟せよ」
「……はっ」
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デボロが実際にズデーデンと繋がっていたかはわからなかった。しかし、デボロは三日後ズデーデンに資源の一部を差し出す言葉を約束してしまった。これは秘密約束であり、ラント達は知らぬ事だった。ラントはデボロを呼び出し、爵位を没収、牢に入れた。ズデーデンには約束された資源は届かず、ズデーデンはアイヴに説明を求めた。しかし、ラント達からすればズデーデンとの密約等知らぬ話であった。
どうも。もしかして三話目、連続して読んでくれましたか?ありがたいですね。今回の元ネタは畠山義継ですが、そんな要素、分かりにくすぎますね。要素はほぼないです。もしかして、次は…?なんて事ですかね。次話も読んでくださると幸いです。では。




