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その7

きっと色々な会話の中にヒントが隠れているはずなのだ。


『ゲーム初めて直ぐに誘われたSNSの知り合いからゲームRMTギルドで検索したらRMTGUILDってサイトがあるからそこで売ったら良いって教えてくれたんだオーナーのニシノって人が色々RMT以外にもゲームのこととかも教えてくれるって』


前に案件でバンしたクサンティッペはそう言っていた。

恐らく若年層だと類は思っていた。


『悲しい男がいてね。お金で家族を失ってお金を憎みながらお金しか愛せなくなった男がいたの。大学の頃にこのゲームで出会って付き合ってこのお小遣い稼ぎを教えてもらって…でも別れたの。彼は何時も過去ばかり振り返っていて私との未来を見てくれなかったから』


クロノストリップでバンさせたカーミラの彼女が言っていた言葉だ。

彼女は『ニシノ』という人物の恋人だったのだろう。


クロノストリップで出会って色々教えてもらったと言っていた。


類はそれを思い出しながら

「きっと二人の言葉にキーワードがあるんだと思うんだよなぁ」

もっと詳しく聞いておけば良かった

とぼやいた。


夕食の親子丼を食べながら呟く彼を前に兄の和は息を吐き出すと

「類、その前に期末の出来はどうなんだ?」

大切な試験だぞ

「それに」

と言いかけた。


類は頷くと和を見て

「うん、分ってる」

将来のことも考えないとな

「焦らないけどちゃんと考えてる」

と笑顔を見せた。


今のアルバイトの所謂社長である葉月美則から先のことについて聞いた。

ゲームのセキュリティの方面へ進むのなら理系でプログラムの勉強を重点的にする。

ゲームと言う土俵に拘らずに不正などを追及していくのなら文系で法律の勉強をする。


山科美沙と出会い5年前の事件の真実を追いかけながら…その実、類はその二つの間で悩んでいたのである。

当初こそゲームのセキュリティの方一辺倒だったが今は少し違っている気がしていたからである。


和は類を見つめて苦笑すると

「変わったな」

大人になった気がする

と呟いた。


類は和の言葉に

「兄貴に言われると老人になったって言われたような気がする」

と、ムーと悩みながら答えた。


和はそれに驚きながら

「は?何故!?」

と不服そうに、ぱくりと親子丼を一口食べた。


うらどりポリス


その話は期末テスト最終日の授業終了直後にクラスメイトから投げかけられた。

「おーい、神戸に桜守」

お前らゲーマーだろ?

「聞きたいことあるんだけど」


ゲーマーって…いや、確かにゲーマーだけどさぁと思いながら類は顔を向けた。

それに続くように隣にいた伸も序でになるが完も同時に声を掛けてきたクラスメイトの永吉達雄に顔を向けた。


ドドーンと三人に見られて「おおっと」と達雄は少しドン引きしつつ集まっている三人の輪の中に入り込んだ。


類は彼に

「で、何が聞きたいんだ?」

と問いかけた。


達雄はそれに頷いて

「あのさぁ、俺もちょっとゲームしようかなぁって思ってメモリアルワールドってゲームを携帯にダウンロードしたんだけどさ」

操作の手順とか説明するやつ終わってアムールの町ってところに行ったら知らない人に声をかけられたんだけどさ

と告げた。


伸は類に視線を向けて

「類はメモリアルワールドってしたことある?」

と聞いた。

「俺やったことねーけど」


類は伸を見て

「俺もない」

ただMMORPGで概要だけは知ってる

「マギの前にやろうかなぁって一瞬だけ思ったことあったから」

と答えた。

「あれだろ?永吉」

チュートリアルの最後に村がドラゴンに襲われてちょっとだけ戦って逃げるように言われて近くの少し大きなアムールの町へ行くって流れだったんだろ?


達雄は指をさして

「そうそう!それそれ!」

と答えた。


伸はそれに

「つまり、そのアムールの町が冒険者の出発点の町ってことだな」

と告げた。


類は頷いて

「うん、メモリアルワールドはアムールの町なんだ」

そこで冒険者の証を手に入れるクエストがあるんだ

「それをしないとその界隈から脱出できないって感じだったと思う」

と告げた。


達雄は「おお!」というと

「神戸知ってるじゃん」

と言い

「それがさ、そのアムールの町にカンストしている人がいてさ」

俺が壁に向かって走ってたら声掛けてくれて

「初心者?って聞かれてゲームも何も初めてって話したら」

カンストしてて武器も最強で通貨も1億金貨つけて格安で売ろうか?って言われたんだけど

「そいうの1万円で買うって格安なのか?」

と聞いてきた。


伸はそれに

「あー、それはバンされるやつだから辞めた方がいいな」

とビシッと指差した。


達雄は不思議そうに

「バンって何?」

と返した。

「俺、そもそもゲームやったことないんだからわかるように言ってくれ」


類は息を吐き出すと

「バンってIDを凍結するってことだから、キャラクター貰っても遊べない」

つまりキャラクター貰ってもそのIDでログインできなくなるってこと

と告げた。

「もともと、ゲーム会社はゲーム内のモノを現金で売買することを禁止しているんだ」

だから即凍結されて買い損になるし

「詐欺にあう事もあるから絶対にしない方がいい」


達雄はフヘェと息を吐き出すと

「そうなんだ、こわっ」

とぼやいた。

「きっと初心者だから何も知らないと思って声掛けられたんだな」

神戸や桜守に聞かなかったら俺引っ掛かってた

「サンキュ」

やっぱりやめるよ


類はそれに

「取引は止めた方がいいけどゲームは続けられるぜ」

と告げた。

「いま永吉が作ってチュートリアルが終わったところのIDで遊ぶのは問題ないからな」

そのままストーリーこなしていけば良いと思うけど?

そう付け加えた。


達雄はう~んと腕を組んで悩みながら

「そうなんだろうけど…ちょっとやってみようかなぁって思っただけで」

何かヤル気が削がれたかなぁ

「変な人に声掛けられて怖いし」

と呟いた。


伸は笑って

「おいおい」

と突っ込んだ。


類も苦笑しつつ

「あ、その前にさ」

その声を掛けてきた人と会える?

と聞いた。

「運営に通報する」

きっと永吉が駄目だったら他の人に仕掛けると思うから

「引っ掛かった人が可哀想だ」


達雄は頷いて

「ああ、良いぜ」

2人に話を聞いてから決めようと思ってたから今日インしてからどうするか話すって約束してた

と言い

「今から入ろうか?」

と告げた。


類は頷いた。

「ああ、頼む」


達雄は携帯を取り出してメモリアルワールドにインをした。

キャラクターネームは『タツオ』であった。


それに類と伸は心で

「名前まんま使ってる」

違う意味で永吉やべぇ

と突っ込んだ。


類は横でタツオを見ながら

「永吉さ、メモリアルワールドやらなかったとしても」

これからもし他のゲームする時の為に忠告しておく

「本名はよせ絶対にダメ」

ゲームって向こう側が闇だからどんな人がいるか分からないから

「本名をそのまま使うのは止めた方がいい」

と告げた。


達雄は「お、そうか。わかった」と答えた。

その時、『Boolly』というキャラクターが個人チャットを入れてきた。

『Boolly:こんにちは。昨日のこと考えてくれた?OKなら初心者に優しいSNS教えてあげるよ。分からないところとか色々凄く丁寧に教えてくれるしお得情報も教えてくれるから役立つSNSだよ』


類はそれを見て

「初心者に優しいSNS…色々凄く丁寧に教えてくれるって…まさか…」

と呟き

「悪い、貴方がリーダー?って聞いてくれる?」

と告げた。


達雄は驚きながら頷いて

「お、おお…了解」

と答えると

『タツオ:もしかして貴方がリーダーですか?』

と打ち込んだ。


Boollyはそれに

『Boolly:まさか!違うよ。リーダーは俺の知り合いでニシノって人。メモリアルワールドの古株の人だから隠れアイテム情報とかお得情報色々持ってる。凄く優しくて良い人だよ。キャラクター買ってくれるならSNSの探し方教えてるけど』

と打ってきた。


類は「ニシノ!」と心で突っ込み腕を組んだ。


SNSは恐らくクサンティッペが言っていたSNSに違いない。

知りたい。

SNSに辿りついてニシノという人物と直接話がしたい。


だが。

だが。

RMTにOKしないと情報は得られないのだ。


そんなことにクラスメイトを巻き込むわけにはいかない。

RMTを承諾させるわけにはいかない。


類は息を吐き出すと

「永吉、そのカメラボタンを押してこのチャットの画面を撮って」

と告げた。


達雄は類が何を考えていたのか長い間があったことに顔を向けたが頷いて

「了解」

と画面を撮った。

そして少し心配そうに

「なぁ、本当に断って良いのか?もしかしてOKして欲しいことがあるとか」

と問いかけた。


類は首を振って

「いや、悪い、ありがとう」

ごめん

「大丈夫、断って」

と告げた。


達雄は戸惑いつつ頷き

「いや、俺危うく損するところだったし俺の方が助かったから」

ごめんな

と言い、Boollyにお断りの返事をしてログアウトした。


類は達雄に

「その撮った画像をメニューの中の通報ってところから送ったらいいと思う」

と告げた。


達雄は頷いて

「わかった、後でこっそりしておく」

と告げた。


類は達雄に

「あのさ、Boollyとの会話を詳しく教えてくれない?」

と聞いた。

「この人が言っていたSNSを知りたいからヒントを見つけたい」


伸はそれに

「だったら」

さっき頼めば良かったじゃん

と告げた。

が、類は首を振ると

「永吉にダメだと思う事はさせられない」

RMTはダメだって言いながらSNS知りたいからOKしてとは俺は言えない

ときっぱり告げた。


それには完と達雄も苦く笑みを浮かべるしかなかった。


伸は肩を竦め

「そこが類の良いところでもあるけどな」

と苦笑交じりに告げた。


達雄は頷くと

「そうだよな」

と言い

「あのBoollyって人との話なんだけど」

俺さ本当の初心者だから動かし方も余り分かってなくて

「壁にぶつかったりしてたらその人が『もしかして初心者?』って聞いてきたんだ」

と話し始めた。


類はそれを聞き

「そう言えば、クサンティッペもゲームを初めて直ぐに誘われたって言ってたな」

もしかしてそのゲームの初心者じゃなくてゲーム自体の初心者を誘っているのか?

「他のゲームをしていて違うゲームをした人と本当の初心者とではやっぱり動かし方とかで分かるところがあるからな」

と心で呟いた。


達雄は隣で思い出しながら

「それでゲーム自体が初めてだから操作の仕方が分からなくてって話をして」

そうそう

「もしかして学生?とも聞かれた」

と告げた。

「ほら、試験中で早かったからそれで分かったのかもしれないな」

それで楽しないか?って話で学生なら安くするよって流れになったな

「後は先話したキャラクターの強さとか所持金額の話をして1万円でどう?って話だった」


類は頷いて

「そうか、そうだったんだ」

と答え

「ありがとう」

と告げた。


達雄は首を振り

「いや、これくらいしか手伝えなくてごめんな」

というと携帯を直して鞄を肩にかけた。


類は笑顔で

「いや、いいヒントを貰った」

と答えた。


達雄は「じゃあ、ありがとうな」と手を振ると類たちの輪から離れた。


類も手を振って

「俺こそ」

じゃあな

と見送った。


伸も帰宅の準備をしながら

「類、そのSNSに何かあるのか?」

と聞いた。


類は頷くと

「うん」

と言い、2人に向くと

「伸と完にはいっておく」

と言葉を続けた。


「5年くらい前にロストアースジェネレーションのRMT詐欺の殺人事件あっただろ?」

伸は覚えている?


伸はそれに頷いた。

「ああ、類と初めて一緒にやって行き成り配信停止になったやつだからな」

確か山科って人がRMT詐欺して殺されたやつだよな

「覚えてる」


類は頷いて

「うん、俺もずっとそう思ってたし」

ニュースでもそう言ってたし

「週刊誌もそう書いてた」

と言い、不思議そうに見る二人に

「けど、違うかったんだ」

山科徹って人は俺の兄貴と一緒でゲームをしない人だったんだ

と告げた。


伸は驚いて

「は?」

え?待って…何で?

「類がそれを知っているんだ?」

と聞いた。


類は息を吐き出し

「兄貴のアルバイト手伝ってる関係でその人の妹さんと会う機会があって…そう聞いたんだ」

その真実を握っている人が永吉の誘われたSNSのオーナーの『ニシノ』って人かも知れなくて

「俺も真実を知りたいと思って彼女とその人へのアクセス方法を探しているんだ」

と告げた。


伸は大きく息を吐き出すとパタンと椅子に座った。

「いつの間に」

そんなことになってたんだ


完は顔を顰め

「だったら、嘘でもSNSのアクセス方法聞いた方がよかったんじゃないのか?」

と告げた。


類は首を振ると

「それはダメだ」

クラスメイトをそう言う詐欺とかRMTとかに近付けさせるわけにはいかない

と告げた。

「もし何かあったら一生後悔するくらい自分を責める」


伸は「確かにな」と言い

「けど、俺だって完だって類のことを心配しているから」

無理はするなよ

と告げ

「それにゲームのことなら俺も類に負けないくらい知っているから」

力になれることがあったら手伝える

「言ってくれ」

と笑みを見せた。


完は「あー、俺はゲームダメだけど」と言い

「けど、力になれそうなら桜守と一緒に手伝うぜ」

とグッと手を前に出した。


類は頷くと

「二人ともありがとう」

と答えた。


「でも永吉のお陰で幾つか推論は出来た」

と言い

「恐らくそのSNSに誘っているのはそのゲームの初心者じゃなくて『本当の初心者』なんだと思う」

それとこっちは自信が無いけど

「学生…ていうのも気になる」

と付け加えた。


伸は首を傾げ

「学生?」

何で?

と聞いた。


類は首を振り分からないけど

「俺がそのSNSに関連した人の話や立場を考えたらその二つが共通項だったから」

と言い

「まあ、そこから探し出してみようと思う」

と鞄を手に

「帰ろうか」

と告げた。


それに二人は頷いて

「「ああ」」

と答えた。


教室を後に校舎を出ると冷たい風が吹いていて三人とも同時に襟を立てて首を竦めた。

昼の太陽も輝きを地上に届けているがそれほど気温を上げる働きはしないようである。


類も伸も完も顔を見合わせると

「まじさみー」

「本当に寒いな」

「本当に」

と呟いた。


山科美沙も同日に学期末テストを終えて学校を出ると類にLINEで

『期末終わったので時間出来ます。土日以外でも神くんの家へ行くこと大丈夫なのでご連絡ください(*‘∀‘)』

と入れた。


類はマンションの前でその通知を見てLINEアプリを開くと小さく笑みを浮かべた。

「よし、この事も伝えて集中的に探そう」

そう呟いて返事を送った。


『俺も今日テスト終わったところです。それからニシノって人のSNS情報を掴んだので明日にでも都合がよかったら会えるかな?』


返事は早かった。

『ありがとう!もちろん、明日大丈夫です\(^o^)/』


類はふっと笑むと

『じゃあ、明日。文京まで迎えに行く』

と返した。


自宅に帰ると昼食にカップ麺を食べて、買い物に出かけた。

兄の和は大学があるのでテスト期間中などは帰るのが早い類が夕食を準備するのだ。


もちろん、両親と別居するまで料理のりの字もしなかったので凝った料理などは作れない。

野菜炒めや餃子焼いたり等などである。


類はうどんの麺を買って

「今日はあったかうどんだ」

と呟いた。


天かすに既に味の付いた油揚げ。

それらをトッピングしてのきつねうどんである。


和が帰宅し類はそのうどんを作り、今日あった事を報告して、翌日、山科美沙と家でSNS探しをすることを告げた。

今のところ友厚からの依頼は無くタイミング的には良い機会だったのである。


和はうどんを食べながらそれを聞くと

「わかった、俺は明日も大学で講義があるから夕方まで帰れないけど」

相手は女の子なんだから

「その…ちゃんとしろよ」

と告げた。


…。

…。


ちゃんとしろって…何を??と類は思わず心で突っ込み目を細めて和を見ると

「兄貴、俺を信用してない?」

と呟いた。


和は咳ばらいをしながら

「信用はしているけど」

一応な

「父さんも母さんも離れているから…親代わりだし」

と告げた。


確かにその通りではある。


類は「わかった」と答え

「大丈夫、彼女とは共闘関係だから」

安心してくれ

とビシッと告げた。


和は類の言葉に

「共闘関係って…ゲーム脳だな」

と心で突っ込みつつ

「信用しているからな」

と頷いた。


翌日、和が大学に行くと類も家を掃除して文京駅まで山科美沙を迎えに出掛けた。


美沙は改札口で待っており

「神くん」

と笑顔で手を振った。


長い髪を今日はツインテールにして明るい色の愛らしいコートを羽織っていた。

目はぱっちりとしてはっきり言って可愛い。


類は手を振って応えながら

「クラスの女子の誰とも似てないよな」

と心で呟いた。


彼女が協力すると話をした後、アルバイトもあったし土日も会っている。

案件で『ニシノ』と一度接触したが、その時は逃がしてしまった。


気付くのが遅かったのだ。


それを考えると…やはり彼女の為にも早く『ニシノ』という人物を探し出して掴まえたかった。


類はマンションの部屋に案内するとダイニングのテーブルに座るように勧め

「紅茶で良い?」

と聞いた。


美沙は座りながら

「ありがとう」

というとケーキ屋の箱を出して

「これ、お母さんに話をしたら持って行きなさいって」

この前はクッキー頂いたし

と告げた。


類は「わ、気を遣わなくても良かったのに」と受け取りながら

「ありがとう、じゃあ、もらいものだけど」

一緒に食べよう

と皿に盛りつけた。


マドレーヌやクッキーの詰め合わせである。

もちろん、和の分はよけておいた。


類はノートを出すと美沙に

「それで、昨日クラスメイトがその『ニシノ』って人がオーナーをしているSNSに誘われたんだ」

と告げた。


美沙は目を見開き

「え!それで?」

と腰を浮かした。


類は手で落ち着いてとしながら

「その…誘った人はRMTを勧めてたしクラスメイト巻き込むわけにいかなかったから」

と言い

「断らせてバンさせた」

ごめん

と告げた。


美沙は少し残念そうにしたものの笑みを浮かべると

「うん、そうだよね」

と頷いた。

「確かにそれで何かあったら嫌だよね」

分かる

そう答えた。


類は「ごめんな、ありがとう」と答えた。


美沙は首を振り

「ううん、神くんの謝ることじゃないよ」

と言い

「それで良かったと思うもの」

と告げた。


考えると彼女との出会いは余り良くなかった。

しかし、それは話とタイミングが悪かっただけなのだと今なら類も理解できた。


彼女は話せばわかるし、決して無茶を通す人間ではなかったからである。


類はノートを開いて

「ただそのクラスメイトに会話を聞いたら」

初心者ってこと

学生ってこと

「この2つが何か関係があるんじゃないかと思って」

と告げた。


美沙は首を傾げ

「初心者??学生??」

でもそう言う人沢山いるし

と告げた。


類は初心者と書いた上に

「この初心者はそのゲームが初めてなんじゃなくて…ゲーム自体が初めての人間に声をかけているんじゃないかと思って」

学生は…前にSNS関わった子やニシノって人を知っている人の話から何となくだけど

と告げた。

「クラスメイトも学生?って聞かれたって言ってたし」

前にRMTしてた子も恐らく若年層…未成年で学生だったと思う

「それにニシノって人を知っていた人は大学の時にあったっていってたから」


美沙は考えながら

「そうなんだ」

と言い、顔を上げると

「でも、取り敢えず感じることは試して損はないと思うわ」

と笑顔を見せた。


類は笑顔で頷くと

「だよな」

と答えた。

「それで、検索をかけようと思う」


美沙は頷い

「お願いします」

と告げた。


類はふと

「そう言えば、山科さんはグリーンフロントファンタジーでRMTしてたんだよな」

その時はサイト?それとも個チャ?

と聞いた。


美沙はそれに目を見開くと

「私、グリーンフロントファンタジーでRMTしようと思って確かにRMT用のキャラクターを育ててたけど、RMTはまだしてなかったの」

と罰が悪そうに返した。

「育てるの大変だったし」

RMTのサイト探しだけで実際にRMTするつもりはなかったから


類は目を見開くと

「………そうなんだ」

と返した。

「そういうRMTの会話とかはバンバンしてた?」


美沙は「んー」というと

「そうね、バンバンはしなかったけどRMTしたいけどいいサイト知らない?売りたいんだけどって会話をした人はいるわ」

もちろん、それを続けるつもりだったから

「そう言う意味では何時かはバンされたと思うわ」

と答えた。

「だから神くんに私の情報が行ったんだと思う」

きっとあの人が通報したのかなぁって思ってる


類は目を細めて

「なるほど…そうなんだ」

と答え

「その話したの一人だけ?」

その人の名前覚えてる?

と呟いた。


それに美沙は笑って

「うん一人だけよ」

名前も覚えてる

「だって、最初そのボンタってキャラクターの人に」

アカウント売るよ?いらない?って声をかけられたの

「そう言うサイト知ってるの?沢山あるかしら?私も売りたいんだけどって聞いたら」

沢山あるね、みんなやってるからね

「幾つか教えてくれたけど…でも自分はサイトを使わないって言われて」

私自身RMTをやりたいわけじゃなくてサイトを沢山知りたかったから

「彼の話は断ったんだけど」

と告げた。

「RMTの話をしたのはその人だけだったわ」

その後に神くんが来たから


類は「ボンタ…あの人か」と呟き

「まあ、俺も案件が通報かどうかは聞けるけど誰が…とかは知らないから」

その人がしたのかは分からないけど

と答えつつ、心の中で

「あの人がするわけないじゃん」

と突っ込んだ。


ボンタのアカウントの持ち主はRMTをすることに罪悪感を持っていなかった。

商売だと割り切っていた。

話していて感じたがかなりドライな性格の人物だ。


その彼が同じRMTをしようとしている人物を態々通報するわけがない。


類は心の中で

「なら…何故。どこから…彼女の案件が上がってきたんだ?」

いや、始めから彼女の案件はおかしかったんだ

「葉月さんのお兄さんが来て態々彼女の案件を頼みにきたり」

改心させて欲しいみたいに言ってたり

「どうして気付かなかったんだろう」

と呟いた。


類の心の琴線に色々なものが引っ掛かったのである。


「そうよね、そこまでは分からないわよね」

神くん?

と美沙に声をかけられて、類は我に返ると話を切り換えるように

「あ、じゃあ…ゲーム自体と初心者とRMTとSNSで検索掛ける」

と検索を掛けた。


幾つかヒットした。


類と美沙は顔を見合わせて一つずつアクセスした。

が、ログイン制のモノやオーナーがニシノでないものであった。


類は息を吐き出すと

「ログイン制だと何かないと分からないか」

と呟いた。


美沙は考えて

「やっぱりSNSに誘っている人を見つけ出して誘われる振りして聞かないと難しいってことね」

と腕を組んだ。


類は頷いて

「多分、SNSへ誘われて最初にインする用のゲストIDがあると思うんだけど」

それが分からないとな

「手も足も出ないな」

と呟いた。

「もしかしたら、それがBoollyって人が言ってた教えようかっていう内容に入っていたのかも」


美沙は「そうね」と言い

「あ、それから神くんが言ってた学生もいれて調べてみる?」

序でだし

と告げた。


類は頷いて

「いい?本当に思い付きだけど」

と告げた。


美沙は笑顔で

「いいよ」

検索掛けるだけだもの

と答えた。


類はキーボード上で指先を動かしゲーム自体と初心者と学生とRMTとSNSを入れてエンターキーを押した。


その一番上に『アルメティア』というSNSが出てきたが、後は学生など検査項目が消された結果で先と同じような内容のものが並んだ。


つまり、全ての項目が一致したSNSはアルメティアだけであった。

しかもその前の項目では現れなかったのである。


恐らく全て一致した時だけ出るようにサイトの記述に書き加えられているのかもしれない。


類はアルメティアをクリックして固唾を飲み込んだ。

SNSサイトの入口はやはりログイン制であった。

が、サイトのインデックスに書かれていた内容を見て類は直感したのである。

「多分、これだ」


美沙は類を見て

「え?何故??」

と聞いた。


類は一番下の外部リンクを指差し

「いまリンク切れてるけど…ここ使ってたんだ」

ニシノって人がオーナーをしていたSNSを使ってたクサンティッペってキャラクターネームの子が利用していたRMTサイト

「RMTGILUD」

恐らくここだ

と告げた。

「他にもアイデンティティってサイトもあるんだ」

きっと今はここでRMTしているんだ


そう言ってアイデンティティの文字をクリックした。

するとサイトに飛んだが、やはりログイン制であった。

しかも、インデックスページだけ見てもRMTサイトかどうかわからないようになっている。


かなり巧妙である。


類はう~んと唸ると

「やっぱり直接やり取りするにはアルメティアにログインしないと駄目だってことだな」

と呟いた。


美沙は両手を握りしめると

「もう少しなのになぁ」

と小さく呟いた。


類は少し考えて

「あのさ、一つ聞いて良い?」

というと

「山科さんは葉月さんを知っている?」

お兄さんの関係とかお友達の関係とか?

と聞いた。


美沙は首を振ると

「私は全く」

上條さんからもそう言う名前を聞いたことはないし

「上條さんと兄と仲が良かったのは亜積さんって名前の人よ」

何時も3人で遊んでいたわ

と言い

「私もよく一緒に遊んでいたわ」

だけど葉月って苗字の人はいなかったわ

と告げた。

「それに葉月さんを知っていたら多分私たちでRMTしないで類くんみたいに止める側でやってたかも」


類は「あー、確かに」と答え、一つの確信的な思考が働いていたのである。


類は美沙に

「取り敢えず、SNSのログイン方法についてはちょっと調べてみる」

山科さんは無茶しないで今は待っててほしい

と告げた。


美沙は微笑むと

「わかったわ、ありがとう」

と答えた。


そして、他愛無い話をして4時に美沙を文京駅に送り届けると類は一つの決意を固めた。

空は既に赤く街も夕刻の色に染め上げていた。


その日の夜。

類は和が帰って来ると餃子を焼いて買っていたエビチリと共に夕食をとり、唇を開いた。

「あのさ、兄貴」

怒らないで聞いて欲しいんだ


和はお茶を飲みながら

「ん?」

何だ藪から棒に

と告げた。


類は息を吸い込み吐き出すと

「友厚さんと友厚さんのお兄さんが今の仕事をした理由は単にビジネスだけじゃないって思ってる」

他にもっと深い理由があると思っているんだ

と告げた。

「5年前のRMT詐欺殺人の…キーパーソンの人と知り合いなんじゃないかって」

どう思ってかは分からないけど

「きっとそれに関連した事情でこの仕事を始めたと俺は今考えてる」


和は目を見開くと

「…それ、どういう意味で…」

ちゃんと話してくれるか?

と聞いた。


類は意を決すると

「その前に友厚さんを呼んでほしい」

そこで全て話す

と告げた。

「俺の想像通りなら…ここを越えない限り山科さんのお兄さんの事件も」

そしてこのアルバイト

「裏取りポリスの未来もない」


和は真剣な類の表情に

「わかった」

葉月を呼ぶ

と告げると携帯を手に連絡を入れた。


…少し話があるんだけど、直ぐに来て欲しい…


類は覚悟を決めて運命を回す手を動かしたのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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