終局章 Actual End
終局章 Actual End
AfterStoryから一年後――
「ねえ、ロバート。本当に仕事をやめるの?」
クレアは心配そうにロバートのことを見つめる。そんな彼女はもはや子供ではない。外見だけを見れば、すでに18歳の少女と同じものだった。
「ああ。お前のためにも、もう危険なことはしたくないんだ。来年度から事務を担当することになった。もう、命を失うようなことはないさ」
ロバートは過去の仕事を振り返りながら考える。収入こそ減るものの、普通に生活するには不便にならない金額をもらうことができる。これからの生活を思えば十分すぎるくらいだった。
クレアは国連の専門機関の一つ、WESPO(世界超能力者機関)の試験を見事合格し、来年からロバートと同じ国際連合で働くこととなった。
彼女が超能力を持っていたのは、恐らく成長促進剤の副作用だろうとWESPOは分析していた。
成長促進剤は成長ホルモンを大量に含むと同時に、精神年齢を成長させるための物質が多分に含まれている。それは脳の活性化、成長を促す代わりに、脳へ大きな影響を与える。そのため、精神障害者などを生み出しやすい半面があった。
そして、超能力とは基本的に脳の発達異常によって発現するもので、成長促進剤の副作用によって発現する可能性が少なからずある。決して高い確立というわけではないが、クレアは超能力を現に発現していた。
実はクレアだけではなく、レンも超能力を発現している。それはクレアのように自由自在に扱えるものではなく、彼の別人格(成長促進剤の副作用によって生まれた潜在的な二重人格)が持っているものであった。
彼の能力はプレコグニション、予知能力である。別人格が表面的に出ているときにのみ出現する能力で、クレアのようにWESPOで生かせるようなものではなかったが、彼は後述するオキシデリボの難民救助で働くこととなる。
クローンの存在が発覚したオキシデリボは当然のことながら株価が暴落し、株主総会で重役は全員解雇され、ミシェルも投獄されたためにオキシデリボは部門を縮小させるも、経営は大変な困難極まる状態となった。
その危機を救ったのがユイであった。彼女は部門が縮小された後も研究者として残り続け、再びオキシデリボを再興させた。
今では彼女がミシェルの地位に就き、オキシデリボの研究部門を導いている。以前と同じというところまではいかないものの、かなりの再興を遂げたといえる。
一度解体の危機にまで陥ったオキシデリボであったが、今では国連の指示に従って難民救助を行うことによって国連を顧客とし、再興を手助けしていた。
オキシデリボが開発した製品を用いて、難民を救済するというものだ。もちろんタダで製品を提供するわけではなく、きちんとお金のやりとりがある商売なので、解体寸前だったオキシデリボにとって大きな助けとなった。国連もオキシデリボほどの技術を持つ企業を解体するのが惜しかったのだった。
オキシデリボの元でクローンとして研究されていた子供達の多くは成長促進剤の効果で今ではほとんどが18歳となり、立派に働きに出ていた。その中の何人かはオキシデリボに籍を置き、難民救済を行っていた。レン達もそのうちの一人だった。
そして、任務を終えたロバートは今の諜報員の仕事をやめ、事務へと移った。クレアと安心して生活を送るために、諜報の仕事を捨てたのだった。
クレアも成長し、今では二人は恋仲とも言える関係となっている。署内では二人は近いうちに結ばれるだろうともっぱらの噂だった。
クレアはロバートの肩によりかかると、今の幸せな生活を思い返す。
「ロバートが助けに来てくれて、私の生活は一変したわ。まさか、こんなにも幸せな生活が遅れるようになるとは思ってもいなかったもの」
クレアは幸せそうな笑顔を浮かべながらロバートを見つめる。
「約束もきちんと果たせたしな」
彼女の髪は可愛らしいヘアバンドで二つにまとめられ、ツインテールを下していた。彼女は愛でるようにヘアバンドを両手で包む。
「ロバートは戻ってきて一番にこれを買ってくれたもんね」
「約束だからな」
二人は笑い合うとそっと口付けする。
幸せそうに微笑むと、彼女は大きく伸びをした。
「さーって、そろそろ買い物に行かないとね。タイムセールが始まっちゃうわ」
クレアは今では完全に彼の妻気取りである。ロバートもまんざらではないので、彼女に従っている。
「よし、俺が荷物を持ってやるよ」
ロバートは懐から車のキーを取り出した。
「うん、お願いね」
クレアは嬉しそうに笑うと、ロバートの手を取って部屋から出ていった。
True End
これでオキシデリボにまつわる『『I as parts』 series 1st story.』はおしまいです。
次回からは『部品としての俺『I as parts』 series 2nd story.』を展開していきたいと思います。
詳しいことは活動報告の方に書かせていただきます。
これからも皆様、よろしくお願いします。