始まりの夕日
「だってもう晩御飯の時間じゃない。晩餐って言えるでしょ?」
「そうだけれども、、、」
本当に突拍子もないこと言うな。。。
元気付けようとしてくれているのだろうか。。
。。。。
沈黙が流れる。話すことがない。
そもそも、誰かと話す気分でもない。
それでも、なんだか心地よかった。
雑居ビルの背後で、雲の隙間、遠くの空で夕陽が沈んでいた。
それが、それがとても美しく感じて。
末期の眼、と言うやつか。
それとも、或いは――
「ねえ、君はなぜここにいたんだい?」
「あなた、ここがなんのビルか知らずに上がってきたのね。」
「ここは予備校のビルで、私はそこの生徒。夕食を食べに来たのよ」
「雨、なのに」
「だからよ。誰もいないもの。」
「一人が好きなんだね」
「まあ、ね。。。」
。。。。
日はすっかり沈んでいた。これ以上いたらこの人にとって迷惑だろう。
「そろそろ帰るよ。今日はありがとう。勉強頑張って。」
「ありがとう。あなたこそ、もうこんなことしちゃダメだよ。」
軽く頷く。
立ち上がって歩き出そうとする。しかし、なにかこのまま立ち去るのは、どこか申し訳なく感じていて。あの、最初の晩餐の、何か恩返しをしないといけないような気がして。
「良かったらなんだけど、また、ここに来てもいいかな、、、」
「いいよ。また雨が降ったら会おう」